
広範囲の移動、チケットの高騰。推しチームを追いかけるのが難しいはず。それでも今大会は日本サポーターを見かける機会は多かった【W杯戦記】
日本が惜しくも敗れたブラジル戦は、今回のワールドカップで日本が経験する、初めての“アウェーゲーム”だった。
それはつまり、日本よりも対戦相手のサポーターのほうが多かった試合、という意味である。
日本の“ほぼ完全ホーム”と化したモンテレイでのチュニジア戦を筆頭に、グループステージの3試合は少なくとも五分五分か、それ以上の数の日本サポーターがスタンドを埋めていた。
しかし、ブラジル戦がそうはならないことは、試合前のスタジアム周辺の様子からも想像できたが、実際にスタンドに入ってみると、数の違いは予想以上。ブラジル戦での日本サポーターの割合は、どう贔屓目に見ても3割以下で、スタンドのほとんどが、黄色に染められていた。
試合中、記者席にいて、日本のチャントが薄っすらとしか耳に届かなかったのは、今大会初めてのことである。
スタジアム周辺で出会った男性4人組は、「僕らはメキシカンだけど、僕と彼は日本、こっちのふたりはブラジルを着てきたよ」と笑顔。青と黄色を半々にしてくれたことには感謝するが、彼らの“2票”を加えてもなお、多勢に無勢の感は否めなかった。
そもそもブラジルは世界屈指の人気チームなのだから、スタジアムの雰囲気がブラジル優位に傾くのは仕方がない。
この試合のチケットを対戦カードが決まる前に購入していた地元の観客であれば、その多くがここにブラジルがやってくることを予想(期待)していたに違いないからだ。要するに、対戦相手がどこになろうと、彼らはブラジルが勝つところを見に来ているわけである。
仮に日本が、アルゼンチン、フランス、イングランドなどの人気チームと対戦していたとしても、同じような状況――スタジアム全体が人気チームの勝利を期待する空気に包まれる――になっていただろう。
とはいえ、ブラジル戦こそ、劣勢を強いられた日本サポーターだったが、今大会では日本戦のスタジアムはもちろんのこと、街を歩いていても、その姿を見かける機会は多かった。
そのすべてが日本から来ているわけではなく、アメリカやメキシコ在住の人も相当数いたのだろうが、それにしても、である。
2010年南アフリカ大会以降、ワールドカップで現地を訪れる日本サポーターが、めっきり減ってしまったと感じていたが、さすがに、日本が初出場した1998年フランス大会とまでは言わないまでも、かなり多くの日本サポーターが現地を訪れていた。
今大会は3か国にまたがる広域開催のため、単純に移動が大変な上に、チケット価格は文字通り、桁違いの高騰ぶり。日本に限らず、各国サポーターにとっては、推しチームを追いかけるのが難しい大会であるに違いない。
ましてアメリカでは、日本の物価水準とかけ離れたレベルでインフレが進んでいるばかりか、空前の円安が追い打ちをかける。日本のサポーターが、現地観戦をあきらめても不思議はない。
だが、たとえ“にわか”であろうと、4年に一度やってくるワールドカップの盛り上がりに触れるうち、一度は現地で観戦してみたい。そう思い立って実行に移したサッカーファンは、案外多いのかもしれない。
電車やバス、レストランや街角で、多くの日本人を見かけるたび、そんなことを想像している今大会である。
取材・文●浅田真樹(スポーツライター)
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