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「果たして前進しているのか」ブラジル戦で露呈した限界…森保ジャパンが築き切れなかった"勝利の構造"とは?【W杯総括】

「果たして前進しているのか」ブラジル戦で露呈した限界…森保ジャパンが築き切れなかった"勝利の構造"とは?【W杯総括】


「別に変える必要がないじゃないですか」

 今なお、強く記憶に残っているのが、上田綺世のこのひと言だ。

 現地2026年6月10日、オランダとのグループステージ初戦を前に、上田は「守備的なスタンス」に戻る考えをきっぱりと否定した。

「前回のワールドカップが終わってから同じコーチ陣と監督と、戦術をアップデートしながらやってきた。ここで自陣に全員引き込んで守りましょうってやる必要がないじゃないですか。僕らが培ってきたものをぶつけるために準備してきたので」

 この4年間、森保一監督は「良い守備から良い攻撃」をコンセプトに掲げ、カタール大会での“引いて守るスタイル”からの脱却を図ってきた。強豪相手にもボール保持を恐れず、自分たちの時間を作る。その積み重ねは着実に実を結び、2025年10月にはブラジルを3−2で、26年3月にはイングランドを1−0で撃破。チームは「自分たちのサッカー」への確かな自信を手にしていた。だからこそ、上田の言葉には4年間の積み重ねが凝縮されていた。

 今大会、日本代表は三笘薫、南野拓実、遠藤航ら主力を負傷で欠きながらも、初戦で難敵オランダと2−2で引き分けた。2度リードを許しながらも冷静さを失わずに追いついた戦いぶりは、日本の成長を十分に印象づけるものだった。
 
 オランダ戦で久保建英が左膝を負傷するアクシデントに見舞われたものの、日本は続くチュニジア戦を4−0で快勝。最終節はスウェーデンと1−1で引き分け、グループFの2位で決勝トーナメント進出を決めた。

 グループステージを終えた時点で、上田はチームの成熟についてこう語っている。

「戦術的なことを言えば、より明確化できていますよね。試合中のシチュエーション、相手や日本の状態、スコアによってもそうですけど、自分たちが今何をしなきゃいけないのか、チームとしてどういうプランで行くのかが明確になっています」

 さらに、「この3試合やっていても、もちろん流れが悪い時間はありますけど、戦術的に僕らが噛み合ってないような状態にはなっていない。それが今、チームの完成度が上がってきている証拠だと思います」と手応えを口にした。

 実際、日本はグループステージ3試合で追加招集の町野修斗を除くフィールドプレーヤー22人を起用。オランダ戦、チュニジア戦、スウェーデン戦はいずれも異なる先発メンバーだったが、誰が出場しても一定のパフォーマンスを発揮できる完成度を示した。

 その背景には、サポートメンバーとして帯同した吉田麻也や、メンター役を務めた南野拓実の存在もあった。選手のスパイクを磨き、積極的に助言を送るなど、ピッチ外での献身がチームに良い刺激を与え、一体感を生み出していた。

「最高潮!」

 決勝トーナメント1回戦を前に、長友佑都はそう言い切った。相手は優勝候補ブラジル。それでも、「今の日本なら歴史を変えられる」。そう期待させるだけの空気が、確かにチームにはあった。

 迎えた現地6月29日の大一番。前半の日本はブラジルのお株を奪うような試合運びを見せた。組織的な守備で相手を封じながら主導権を握り、29分には佐野海舟のミドルシュートで先制。理想的な展開だった。

 しかし、後半に入ると流れは一変する。中央突破に固執せず、サイド攻撃へ比重を移したブラジルに日本は徐々に押し込まれ、56分にはカゼミーロにヘディングで同点ゴールを許した。

 そして66分、堂安律と中村敬斗に代えて菅原由勢と鈴木淳之介を投入。守備を意識した交代策によって、日本は4年前のように自陣へ押し込まれ、耐え忍ぶ戦い方へと変わってしまった。その後は攻撃の形をほとんど作れず、アディショナルタイムの90+5分、ガブリエウ・マルチネッリに決勝ゴールを決められ、力尽きた。
 試合翌日、冨安健洋は敗戦をこう振り返っている。

「結局いつも同じことにはなっちゃうんですけど。負け方も結果的に後ろに重たくなって」

「人数がいるけど失点するところも毎度のことなので。なので、果たして前進しているのか。結局負け方が一緒なので、ずっと。そこを改めて考えないといけない」

 守備を固める交代策を選択した以上、最後まで失点しないことが求められた。結果として、森保監督の交代策は機能しなかった。一方、前半の苦戦を受けて後半に攻撃の形を修正したカルロ・アンチェロッティ監督は、試合中の修正力で日本を上回った。

 結果は決勝トーナメント1回戦敗退(ベスト32)。16強の壁すら越えられず、日本が目指した”最高の景色”を実現できなかった。

 もっとも、敗因は交代策だけではない。

 日本は大会を通じて、エースFW上田綺世にゴールを決めさせる形をチュニジア戦以外の試合で築けなかった。アルゼンチンにはリオネル・メッシ、フランスにはキリアン・エムバペ、ノルウェーにはアーリング・ハーランドがいるように、世界の強豪には「決めるべき選手が決める」構造がある。日本には、その構造が決定的に欠けていた。
 
 冨安は世界との差について、こう語っている。

「ひとりで守備に対応できたり、ひとりで突破できたり、個で圧倒できれば、数で対抗する必要はなくなります」

 日本のサッカーそのものを否定しているわけではない。むしろ、組織力や献身性は世界でも十分に戦えるレベルまで到達した。しかし、その先へ進むためには、「個」で試合を決める力が必要だという現実を、改めて突きつけられた。

 「別に変える必要がないじゃないですか」

 上田が大会前に口にした言葉どおり、日本は確かに4年間で進化した。だが、世界の頂点を目指すには、そのスタイルを最後まで貫き切る力と、勝敗を決定づける「個」の力が、なお必要だった。ブラジル戦の敗戦は、その現在地を浮き彫りにした一戦だった。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長/現地特派)
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配信元: SOCCER DIGEST Web

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