
1996年3月に日本で劇場公開された世界初の長編フルCGアニメーション映画「トイ・ストーリー」(アメリカでは1995年11月)。おもちゃのウッディとバズ・ライトイヤーたちの冒険と友情を描いた物語は世界中で大ヒットを記録し、ディズニー・ピクサー作品の原点として今もなお愛され続けている。日本での劇場公開から30周年を迎え、最新作「トイ・ストーリー5」が7月3日(金)に劇場公開されるということで、シリーズ1作目の魅力をあらためて解説する。(以下、ネタバレを含みます)
■個性的なおもちゃ目線で描く人気アニメーション
“もしもの世界”をユーモアたっぷりに描いたヒット作を数多く生み出してきたピクサー作品。「トイ・ストーリー」(ディズニープラスで配信中)は、タイトル通り、“トイ=おもちゃ”たちが動き出す「もしも」の世界を描いた人気シリーズだ。
第1弾の「トイ・ストーリー」では、少年アンディが大切にしているカウボーイハットがチャームポイントのウッディや、彼の仲間たちに、アンディが誕生日に新しく手に入れたバズ・ライトイヤーが加わる様子が描かれる。シリーズが誇る“名コンビ”2人の出会いの物語である。
アンディにとって自分が一番の“親友”だと思っていたウッディの元に、アンディの新たな“お気に入り”としてバズ・ライトイヤーが現れる。ただ、このときのバズは自分が本物のスペースレンジャーだと信じているがゆえに横柄で、独りよがりな態度を取ってしまう。
一方、ウッディは自分がおもちゃであることを理解しながら“親友”アンディのために“トイ”として最善の役割を果たそうと、個性的なおもちゃ仲間たちと一緒に毎日を楽しく過ごしているものの、最新式のおもちゃであるバズに嫉妬していた。ある日、その嫉妬が抑えられなくなったウッディはバズを机の裏に落とそうと作戦を練るも、ハプニングによって2人ともアンディの元を離れてしまうことになる。
そんな矢先、アンディの隣家に暮らすおもちゃを改造していじめる少年シドに拾われることになったウッディとバズ。それまでぶつかり合ってきた2人だが、互いを認め、励まし合い、協力しながらアンディの元へと帰っていく――という友情ストーリーだ。
時代が変わっても、誰もが子どもの頃に遊んだ記憶があるおもちゃたちが部屋で動き出すというユーモアあふれる発想力をフルCGで描き、おもちゃのキャラクター目線の世界観を表現した本作は画期的で、アニメーションの新しい可能性を世に示したとも言える。そして高い評価を受け、「第68回アカデミー賞」のアカデミー特別業績賞(ジョン・ラセター監督)を受賞し、この成功を受けてシリーズ化されていく。
■ウッディらおもちゃの人生を通して大切なことを学ぶ
メインキャラクターはあくまでもおもちゃなのだが、まるで人間のような繊細な感情を持っている彼らの心の動きがリアルに表現されている。視聴者はウッディたちと「一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に成長していく」そんな気持ちになってしまうストーリー構成のため、子どもだけでなく大人世代からも共感を呼んだ。
そしておもちゃ=物として生まれた彼らにも人間と同じように出会いや別れ、友情や悲しみなどがあり、彼らの人生には多くのメッセージが込められている。
特にシリーズ第1弾は、後に大人になっていくアンディがまだ少年時代だったということもあり、おもちゃと子どもの関係性や大人が子どもだった頃、自分にとっておもちゃはどんな存在だったのかをあらためて気付かせてくれるため、いつの時代に見ても色あせず、幅広い世代の心にグッと刺さる内容なのだろう。
また、日本のファンにとってはウッディとバズの日本語吹き替えをそれぞれ担当した唐沢寿明と所ジョージの声のインパクトも強い。お調子者でコミカルにおしゃべりする唐沢演じるウッディとちょっぴり生真面目で堅物な印象の所演じるバズの掛け合いは、1作目から最新作まで変わらず息ぴったり。それぞれのキャラクターの性格がドンピシャで表現されていることもあり、30年にわたる唐沢&所の続投に多くのファンが喜ぶのも納得がいく。

■おもちゃVS最先端のタブレット
そんな本シリーズの最新作「トイ・ストーリー5」が、6月19日からアメリカで、7月3日(金)からは日本でも公開を迎える。
8歳のボニーは、想像力豊かでおもちゃ遊びが大好きな内気な少女。本当はまだまだおもちゃで遊びたいが、周囲の子どもたちはタブレットに夢中だった。それもあって周りと話が合わず、なかなか友達を作ることができないことに悩んでいる。そんなボニーのもとに現れるのが、両親からプレゼントされた最先端タブレット“リリーパッド”。
周囲の子どもたちと同じように画面の中の世界へ夢中になっていくボニーの姿を見たカウガールのジェシーたちは危機感を抱き、おもちゃ遊びの中で輝いていたボニーの笑顔を取り戻すため立ち上がる。
これまでは新しいおもちゃへの嫉妬や、持ち主に愛されなくなることへの不安、持ち主との別れ、おもちゃとしての存在意義への葛藤など、主におもちゃたちが直面する問題を描いてきたが、本作では子どもの葛藤にもこれまで以上に焦点が当てられる。
おもちゃVSテクノロジーという新たなテーマを通して、子どもの葛藤と子どもにとってのおもちゃの役割について「究極の答え」を探し出すウッディたちの新たな活躍を見届ける前に、原点に込められた思いをあらためて振り返ってみては。
◆文=suzuki

