
桜井日奈子と日穏(STARGLOW)が主演の映画「死神バーバー」が、6月26日から新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開中。新米死神・サクマを演じた日穏に、役どころや撮影現場の様子はもちろん、映画のテーマにちなんだ問いや俳優とアーティストの表現について、今後挑戦してみたい役どころについてなどを聞いた。
■人間と死神が過ごした奇妙な日々を描くヒューマン・ファンタジー
本作は、人間と死神が過ごした奇妙な日々を優しく包みこむように描いたヒューマン・ファンタジー。コロナ禍当時、大学で映画を学んでいた梅木陽一氏が改めて“死”と向き合う時間を過ごし、授業の課題で提出した企画書が原案となっている。本作の映画化にあたり、映画「れいこいるか」(2020年)などを手がけ、監督生活30周年を迎えたいまおかしんじ監督がメガホンを取った。
桜井演じるヒロイン・佐伯美帆は、日穏演じる新米死神・サクマのミスから、本当の死の前に死神美容室“冥供愛富(メイクアップ)”に連れてこられてしまう。本当の死まで5日残されていた美帆だったが、なぜかサクマのそばにいて死神の仕事を手伝いながら自身の死に向き合っていく。桜井と日穏のほか、岡部大が先輩死神・クロダ役を演じ、平井亜門、猪塚健太、工藤遥、宇野祥平、美保純らが出演している。
■オーディション「THE LAST PIECE」と映画撮影が重なり、当時は混乱した
――今回、ちょっとクセ強な死神・サクマを演じられましたが、最初に脚本を読まれたときの率直な感想を教えてください。
本当にまずめちゃくちゃ面白いなと思いました。いろいろな人生に後悔を覚えた人たちが出てくる中で、死神が“最後に1度だけ会いたい人に会わせる”という設定自体が面白いなと思いました。自分が今まで想像していた“死神”とまた違う世界線のものだなぁと思って、こんな素晴らしい作品に出させていただけるのは光栄だと思いました。
――先ほど写真撮影のときに、映画の撮影が1年前とおっしゃっていましたが、オーディション「THE LAST PIECE」と重なっていたのでしょうか。
はい、オーディション真っ最中のタイミングで、映画の撮影がありました。7月にこの映画の撮影があったんですけど、ちょうど6月に合宿があって、帰ってすぐ映画の撮影が始まった感じでした。台本を覚えるのも大変だったので、当時は結構混乱していたな…と思います。
――死神・サクマという役について「真っすぐで硬い雰囲気のイメージをもっていたけど、現場で初めから監督にイメージを壊された」とオフィシャルコメントにありましたが、その後どのように役作りをしていきましたか。
台本だけ見たら、結構真面目だけどちょっと不器用で、だんだん人間に染まっていくみたいな感じなのかなと思いきや、だいぶ初っ端からクセ強で…。言ってることとか表情は真面目なのに、「動きをちょっとコミカルな感じにしてやってみて」と監督に言われてから、これはもうサクマはコメディリリーフ的な役割なんだなと。そこからちょっとリラックスでき、撮影に臨めました。
■桜井日奈子の差し入れに感動、岡部大とは中学生のとき以来の再会
――桜井さんと岡部さんとは一番近い距離でお芝居をされたと思いますが、お二人にお芝居の面で引っ張ってもらったことや学んだことはありましたか。
いやもう、本当に常に刺激を受けていました。カメラが回っていない時とかでは、めちゃくちゃ気さくに話しかけてくださっていたのに、カチンコが鳴った瞬間にはスッと役に入っていくお二方を見て「すごいな」と率直に思っていました。尊敬できる先輩方とご一緒にできて、本当にうれしいです。
――撮影現場でのお二人との裏話などはありますか。
桜井さんとは本当にほぼずっと一緒にいたので、いろいろな話をたくさんしました。あと時間が空くたびに、差し入れをスタッフさんの分も買ってきてくださって…。結構タイトなスケジュールで深夜とか朝まで撮影が及ぶことがあって、ご自身が一番シーンが多くて疲れているだろうに、大量の栄養ドリンクを抱えて戻ってきた姿を見て「最高な方だな」と思いました。
岡部さんとは、中学生の時にお店で遭遇したことがあって、そこで僕が声をかけて写真を撮ってもらったことがあったんです。この共演が決まった時に「これは絶対言おう」と思って、岡部さんに会ったときにお伝えしたら「まじか!」的なリアクションをしていただき、そこからなんか打ち解けたというか。連絡先も交換させていただいて、撮影以外でも絶えない話をたくさんさせていただきました。
■美帆と浜辺を歩くシーンで、サクマが笑うシーンがお気に入り
――いまおか監督の撮影現場はいかがでしたか?演出でハッとさせられたことや印象に残っている言葉を教えてください。
いまおか監督は本当に気さくでフレンドリーな方で、最初のワンカット目から、すごく明るく接してくださりました。最初は、もうちょっと固くいったりするのかな…と、自分の中で勝手に想像してたものとは打って変わって、ずっとすごく楽しく撮影に臨めていました。
演出では、僕だけじゃなくて、出てくる登場人物全員に、その場で「じゃあこれをここ入れて」とか、せりふも動きもアドリブがたくさんあって…。現場では、真面目というか深い話をしているのに、そういうのいれちゃうんだ…とか思ってたんですけど、映像で見たらちゃんと形になっていたというか、すごく面白くなっていました。
多分、いまおか監督は死神界と人間界の常識が全く違うということを意識していたと思うんですけど、その発想が自分にはなさすぎて…。そういう一つ一つのアドリブが「さすがいまおか監督だな」と思いました。
――本編でお気に入りのシーンを教えてください。
浜辺で桜井さん演じる美帆と2人で歩くシーンがあるんですけど、そこで初めてサクマが笑うシーンがあるんです。そのシーンは、見る側的にも今まで無表情でちょっと掴めないサクマのことに親近感が湧くようになるところなんじゃないかなと思うんで、そこがお気に入りです。
――苦労したシーンや印象的なシーンはありますか?
すごく他人事のように聞こえるかもしれないんですけど、「大変そうだな」というか「すごいな」と思ったのは、お笑い芸人・ピーナッツボーイズの最期の漫才シーンです。
それこそ、このシーンは朝まで撮影していたんですけど、漫才1本を何カットも何カットも撮っていて…。撮影のたびに、大きい声を出したり早口で言ったりしていて、本当に台本全てを記憶してないとできないというシーンを、あの時間帯で、あのスピード感で、あの声量でやっている2人に、プロを感じました。
■「天国でまた会おうぜ」最期の1日は家族で笑って過ごしたい
――本作は“死”がテーマとなっていますが、日穏さんにとって「命」や「当たり前の日常」に対する考え方は変わりましたか?
そうですね。自分の身近な人とか、ずっと関わってくれている人が急にいなくなったりしたら、僕はどうするかな…と考える機会が増えたと思います。もし母親だったら、本当に何もできなくなるかもしれないなとか思ったり、最期に1回だけ会えるとしたら何を言うのかなとか…ちょっと想像したりしました。
――本作は亡くなった方の「人生最期の1日」が描かれていますが、日穏さんだったら誰とどんな風に過ごしたいですか。
やっぱり家族と一緒に過ごしたいです。僕は天国があると思ってるんで「天国でまた会おうぜ」みたいに、笑いながら過ごせればいいなと思います。
■アーティストも俳優も、その奥で見ている方を想像して臨む
――元々俳優を目指されていた日穏さんですが、アーティスト・STARGLOWのKANONとしてデビューされました。日穏さんにとって、アーティストと俳優の表現に違いを感じたり、逆に共通して活きていることはありますか。
何かを表現するという意味では、自分の中の気持ちは結構似たところがあると思っています。僕の中に、特にスイッチを切り替える的な意識はないです。カメラの前に立って、その奥で見ている方を事前に想像してから臨むことは共通していると思います。
――映画「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」(2025年)に出演し、本作が映画出演2作目となりますが、今後俳優としてどのようなことに挑戦していきたいですか。
本当にいろいろな役をやっていきたいです。自分が俳優になりたいと思ったのが、ドラマ「コドモ警察」(2013年、TBS系)を見て、その仲間入りがしたいと思ったのがきっかけだったので、コメディー系はやりたいですね。あと結構シリアスな中でも、今回のサクマのようなコメディーリリーフ的な役所で、見ると気が緩むような役をやれるとうれしいなと思っています。
――最後に本作を楽しみにしているファンの方に、ぜひこういうところを見てほしいなど、メッセージをお願いします。
「死神バーバー」は、一見シリアスで難しい話なのかなと思うかもしれないんですが、一度見たら頭から離れない死神ポーズや面白いせりふなど、たくさん笑える要素が詰まっています。とっても考えさせられるけど、笑いあり涙ありな作品になっておりますので、ぜひ楽しみにしていただけると幸いです。
◆取材・文=綱島深雪

