
4年後も生き残るのは誰だ? “2030年W杯”日本代表を占う。確実視される3人と運命を分ける条件
北中米ワールドカップの決勝トーナメント初戦でブラジルに1-2で敗れた日本は、ベスト32で夢の舞台を去った。
今大会の招集メンバー26人のうち、カタール大会から引き続き選出されたのは13人だった。また、ブラジル戦に先発した11人で見ると、前大会の最終戦となったクロアチア戦にも先発したのは6人。スタメンとサブ組を含めて、約半数が4年間(正確には3年半)を生き残っていた。
次の大会、2030年のスペイン、ポルトガル、モロッコを中心に開催されるW杯には、果たして何人が残るのか。次も半数が残るとは限らない。ベテラン揃いの18年ロシア大会から、森保一監督が建て直した22年のメンバーに名を連ねたのは6人で、わずか2~3割しか残らなかった。
今大会も森保ジャパンの集大成と見られるチームだけに、ロシア大会の後ほどドラスティックな新陳代謝ではないとしても、4年後のメンバーはより広範囲に、半数を超える入れ替えが発生する可能性はある。佐藤龍之介、高井幸大、佐野航大、藤田譲瑠チマ、市原吏音など期待される選手たちの成長次第だが。
その場合、今回の26人から生き残るのは誰だろうか。
ほぼ確定と言っていいのは、GKの鈴木彩艶だ。実力的には申し分なし。むしろ、よくぞ今大会に間に合ったと言える、目覚ましい成長を見せた。次のW杯は27歳とピークを迎えるタイミングであり、クラブでのキャリアアップも薔薇色。誰も異論はないだろう。
佐野海舟もそれに近い存在だ。ブラジル戦で見せたインターセプトとドリブルシュートは鮮烈だった。クラブでも似たプレーは何度も見せているので、W杯で興味を引かれた欧州クラブは彼の映像をチェックし、唸ることになるだろう。所属のマインツからステップアップする可能性も高く、ひょっとすれば彩艶同様にビッグクラブ行きもあり得る。次のW杯では29歳。脂ノリノリだ。
そして、次こそ、久保建英のW杯になってほしい。パリ世代ながら21年の東京五輪に出場して悔し涙を流した彼だが、W杯については22年も26年も、発熱と怪我であまり試合に出られなかった。ワンダーボーイも30年はいよいよ29歳。一般的には全盛期で勝負できるラストチャンスだ。
彩艶、佐野海、久保。この3人は、4年後も堅い。
次に、カタールと北中米の大会で、チームを牽引した現在の主軸選手たち。冨安健洋、板倉滉、堂安律、田中碧、上田綺世、前田大然らの東京五輪組にとっては、30年は3回目のW杯となり、年齢は32歳前後でベテランの域に突入する。4年後のメンバーに全員が残ることは難しいかもしれないが、今大会でも30歳を超えた伊東純也が活躍し、遠藤航も直前までチームを引っ張ってきた。まだ充分、中核で戦える年代だ。
特に昨季オランダリーグで得点王を取った上田は、もう一段キャリアアップの気配があり、1トップの人材不足も含めて、この中核グループでは4年後に生き残る可能性が頭一つ抜けている。
誰が4年後に生き残るか否か。結局のところ、それを占うのはクラブでのキャリアだ。ブラジル戦が終わった後、堂安はセレソンに入れるレベルの選手が日本代表に何人いたのか、と厳しく言った。それは5大リーグのビッグクラブで主軸を務める選手が何人いるのか、という問いに似ている。
3年前の23年、遠藤にリバプールというチャンスが訪れたように、今大会の主軸選手たちは、最後になるであろうキャリアアップの機会を掴めるか。それが叶わなくても、5大リーグでのプレーを維持できるか。4年後に生き残るか否かは、ここがポイントだ。それは前田や中村敬斗など、代表では鮮烈なプレーを見せつつも、クラブでのキャリアアップに苦戦する選手にも言える。
また、今後4年のキャリアについて言えば、北中米大会で26人のメンバーに滑り込んだ後藤啓介、塩貝健人には大きな未来がありそうだ。後藤はフライブルク、塩貝はヴォルフスブルクと、まずはブンデスリーガで成功を収められるか。4年後は24~25歳だ。
この8年間で、森保監督の若手タレントを見定める眼、さらに種を蒔いて発芽させる手腕は、19年のコパ・アメリカに招集した上田や、24年のアジアカップに招集した彩艶を筆頭に、多くの選手の成長によって証明された。疑いはない。後藤と塩貝もそうなるだろう。
一方で、そうした鮮やかな期待を抱かせる若手に対し、伊東や谷口彰悟、長友佑都など、30年にはアラフォー、あるいはそれを遥かに越える年齢の選手にとっては、4年後など想像もできないタイムマシンの世界だ。
その目に映るのは、明日だけ。明日の積み重ねの先にW杯がある……かもしれないし、ないかもしれない。この年代まで来ると、考え方はシンプルだ。ゴチャゴチャと余計な思考はしない。目線は常に明日のみ。明日を生きる。そして、意外とこの手のメンタリティーは安定感があり、大舞台に強い。さて、どうなるか。
最後に、個人的に気になるのは鎌田大地だ。東京五輪世代よりも若干上の狭間、96年生まれで、4年後は33歳になる。彼の気持ちはどうか。
今の代表選手たちは、セカンドキャリアではトップチームの監督を目ざしたい、と言う人が多い。それは22年にインタビューをした時、鎌田も同じ野心を語っていた。ところが、彼がほかの選手と少し違ったのは、「カリスマ監督になりたい」と言ったこと。レアル・マドリーを率いてCLを三度制覇したジネディーヌ・ジダンのように、現役選手を圧倒的な実績によるカリスマで統率する監督になりたい、と語った。そんなことを言う選手はほかにいなかったが、何を聞いても、人とは違う答えが返ってくるのが鎌田大地である。
その野心が今も変わらないとしたら、彼には次のW杯も、その次のW杯も目ざしてもらわなければならない。鎌田をカリスマと呼ぶには、まだまだ全然、早すぎるからだ。若い頃からベテランのように飄々とプレーしてきた彼が、本当のベテランになったらどんなプレーをするのか。それも楽しみだ。
それにしても、4年後とか、2030年とか、あまりに遠い話に思える。
特に今の主軸は圧倒的なメンバーなので、4年後に大きく入れ替わる様子を想像しづらい。しかし冒頭で述べたように、過去を振り返れば、それは高確率で起こるものだ。3年半前は、まさか鈴木淳之介がW杯に出るなんて想像もしていなかったし、未来は誰にもわからない。想像できなくても、第二、第三の淳之介は表れ、やはり半数は入れ替わる。
それでもチームに生き残るとすれば、それは野心、エネルギーを枯らさない選手に限られるだろう。そこには各人、心に火をつけるストーリーがある。
文●清水英斗(サッカーライター)
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