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40年も保管庫に眠っていた化石、「南極で最初に見つかった恐竜の骨」と判明

40年も保管庫に眠っていた化石、「南極で最初に見つかった恐竜の骨」と判明

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

南極大陸と聞くと、多くの人は分厚い氷床と、ほとんど生命を寄せつけない極寒の世界を思い浮かべるはずです。

しかし、今から約8260万年前の白亜紀後期、南極は現在とはまったく違う姿をしていました。

そこには森林が広がり、小型の草食恐竜や装甲恐竜、肉食恐竜、鳥に近い恐竜たちが暮らしていたと考えられています。

今回、その南極の恐竜史に、思わぬ“最古の発見”が加わりました。

英国南極観測隊の収蔵庫におよそ40年保管されていた骨化石が、再分析の結果、南極で最初に採集された恐竜の骨だったと判明したのです。

さて、それはどんな恐竜だったのでしょうか?

研究の詳細は、英ロンドン自然史博物館(NHM)により、2026年の学術誌『Acta Palaeontologica Polonica』に掲載されています。

目次

  • 保管庫に眠っていた「南極初の恐竜化石」
  • 緑の南極にいたティタノサウルス類

保管庫に眠っていた「南極初の恐竜化石」

問題の化石は、1985年12月、英国南極観測隊の遠征中に南極半島近くのジェイムズ・ロス島で採集されました。

採集したのは、英国の地質学者マイケル・トムソン氏と、ドイツの地質学者・古生物学者ラインハルト・フェルスター氏です。

当時、2人は島の岩石層を調査しており、無脊椎動物や植物、魚のうろこなど、多くの化石を見つけていました。

その中に、大きな椎骨の化石も含まれていました。

ただし、この骨は当初、海棲爬虫類のものと考えられていたようです。

発見時の記録も簡単なメモとスケッチだけで、長い化石リストの中の1点として扱われました。

【実際の化石と当時のメモ書きの画像がこちら】

その後、この標本は英国南極観測隊のアーカイブに保管され、長いあいだ詳しく調べられることはありませんでした。

ところが近年、研究者がこの骨を見直したところ、単なる海棲爬虫類ではない可能性が浮かび上がりました。

詳しい再分析の結果、この骨は首長の草食恐竜グループである「竜脚(りゅうきゃく)類」の尾椎、つまり尾の付け根に近い部分の骨だと判断されたのです。

チームによると、これは「南極大陸で最も早く採集された恐竜化石になる」といいます。

さらに形態の特徴から、ティタノサウルス類に属する可能性が高いとされました。

ティタノサウルス類は、長い首と尾をもつ竜脚類の一群で、地球史上最大級の陸上動物を含むグループです。

ただし、今回の標本は断片的で、種名までは特定できません。

つまり、この骨は「新種の恐竜が見つかった」というより、「40年前に採集されていた骨が、実は南極で最初に採集された恐竜化石だった」とわかった点に大きな意味があります。

緑の南極にいたティタノサウルス類

今回の化石が見つかった地層は、サンタ・マルタ層の一部で、年代は約8260万年前の白亜紀後期とされています。

近くから見つかったアンモナイトなどの海洋化石によって、年代をかなり正確に絞り込める点も重要です。

骨そのものは陸上動物のものですが、海で形成された地層から見つかっています。

そのため、この恐竜は死後、川などによって海へ流され、そこで堆積物に埋もれた可能性があります。

現在の南極からは想像しにくいことですが、当時の南極半島周辺は、植物が育つ温暖な環境でした。

シダや針葉樹などが広がる森林があり、そこには複数の恐竜が暮らしていたと考えられています。

ただし、南極の恐竜化石は非常に少なく、全大陸の中でも発見数が限られています。

これは南極に恐竜が少なかったというより、現在の南極の大部分が氷に覆われ、化石を探せる場所が限られているためです。

【チームが復元した緑豊かな南極にいたティタノサウルス類の画像】

その意味で、今回の小さな尾椎はとても貴重です。

南極で見つかった竜脚類の体化石としては、これがわずか2例目だからです。

また、この発見は、ティタノサウルス類が南半球の大陸をどのように移動していたのかを考える手がかりにもなります。

白亜紀の南極は、南米やジーランディア、現在のニュージーランド方面と近い位置関係にありました。

一方で、オーストラリアでは竜脚類化石は知られているものの、ティタノサウルス類の確実な化石はまだ見つかっていません。

そのためチームは、ティタノサウルス類が南米から南極半島を経由し、ジーランディア方面へ広がった可能性を指摘しています。

もちろん、1つの断片的な骨だけで移動ルートを証明することはできません。

しかし、これまで空白が大きかった南極の恐竜記録に、新しい点が加わったことは確かです。

およそ40年間、収蔵庫で静かに眠っていた小さな骨片は、実は南極の恐竜研究の始まりを示す標本でした。

そしてそれは、現在では氷に閉ざされた大陸が、かつて森林と恐竜の世界だったことを物語っています。

科学の発見は、必ずしも新しい発掘現場から生まれるとは限りません。

ときには、すでに引き出しの中にあったものを、もう一度見直すことから始まるのです。

参考文献

First ever dinosaur fossil discovered on Antarctica identified as a titanosaur
https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2026/june/first-ever-dinosaur-fossil-discovered-on-antarctica-a-titanosaur.html

Two Scientists Found a Bone in Antarctica in 1985. It Took 41 Years to Realize What They’d Actually Discovered
https://www.sciencealert.com/fossil-kept-in-a-drawer-for-40-years-turns-out-to-be-antarcticas-first-evidence-of-dinosaurs

元論文

A titanosaurian sauropod dinosaur from the Upper Cretaceous of Antarctica
https://doi.org/10.4202/app.01315.2025

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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