
「なぜ怖がった戦い方をするのか?」英国の識者たちが日本代表に疑問。実力はあるのに...「正直かなり驚いた」「勇敢であってほしかった」【現地発】
日本代表は北中米W杯の決勝トーナメント1回戦、ラウンド32でブラジルに1-2で敗れ、敗退が決まった。今回の日本は優勝を目標に掲げていたが、16強入りを果たせなかった。
だが、英メディアの論調に触れていると、今回ほど日本が高い評価を受けた大会はない。98年のW杯初出場以降、歴代で最も高い期待を寄せられていたと言ってもいい。
実際、英紙『ガーディアン』は「日本がW杯で見せたパフォーマンスとしては、今大会が間違いなく過去最高だった」と記した。大会期間中には、多くの英国メディアや識者が、日本を優勝候補のダークホース(大穴)に挙げていた。
英紙『デーリー・テレグラフ』も次のように伝えた。
「日本はブラジルを相手に、アジア勢では初となる歴史的勝利を成し遂げる絶好の位置につけていた。日本はブラジル戦まで10試合にわたり負けがなかった。そのなかには、昨年10月に行なわれたブラジルとの強化試合での勝利も含まれていた。そして前半、日本はブラジルを大いに苦しめた。
前半はエネルギッシュで、活気に満ちた内容だった。日本の選手たちは見事な調和のなかでピッチを駆け回った。日本の動きにより、ブラジルは痛々しいほど鈍重に見えた。ブラジルのカルロ・アンチェロッティ監督も試合後、『我々は中盤で優位に立とうとしたが、うまくいかなかった。日本のマークは本当に厳しかった』と苦戦を認めていた」
英紙『タイムズ』は、「個のブラジル」対「組織の日本」と位置付け、「組織が、個の力を上回る瞬間を目撃できるのではないか──少なくとも前半はそう感じさせた」と対ブラジル戦を評した。
だが後半に入ると、「試合の流れはブラジルに大きく傾いた」と伝えた。同紙はこう記す。
「ブラジルの戦術変更には、十分な理由があった。日本の守備陣は、空中戦への対応が苦手だ。そして、戦術を実行できる選手たちが、ブラジルには揃っていた。カゼミーロは、かつてのように広大なエリアを走り回ることはできない。だが、ペナルティエリア内では依然として危険な存在であり、近年もヘディングで多くのゴールを決めてきた。この武器は、10年以上前から変わっていないのだ。日本は、このブラジルの戦術変更に対抗できなかった」
日本の敗戦を受け、『ガーディアン』が行なった座談会では、まず司会者が日本に対する率直な思いを口にした。
「日本代表には本当に同情する。彼らはW杯の決勝トーナメントでこれまで一度も勝ったことがない。
ただ今回は、もっと楽な組合せになる可能性もあった。ブラジルとの対戦ではカードが厳しすぎた。しかも怪我により、非常に重要な選手を何名か欠いた。三笘薫、南野拓実、遠藤航が該当する。彼らがいれば、また違う結果になったかもしれない」
すると、同紙のスポーツジャーナリスト、ニッキー・バンディーニ記者がこう応じた。
「日本はW杯の決勝トーナメントで勝利を挙げられなかった。これで五度目だ。5試合を戦い、一度も勝てていない。
それでも、今回の日本には決勝トーナメントを勝ち抜くだけの力が十分にあった。相手がブラジルでなければ、もっと勝ち進んでいた可能性は高い。今大会の決勝トーナメントは32チーム制に拡大され、日本より実力で劣る国もいくつか出場している。そうした相手と対戦していたら、突破していたはずだ。
本当に惜しかったと思う。それに、日本は本当に応援したくなるチームなんだ。見ていて楽しいし、好感が持てる。サポーターも素晴らしい」
司会者は、日本への同情を隠せない様子だった。日本はこれまでも、試合後にロッカールームを清掃してから会場を後にする姿勢を海外メディアに称賛されてきた。司会者はそのイメージを踏まえ、ジョークを交えてこう続けた。
「一度ぐらいは、試合後にロッカールームをぐちゃぐちゃにして帰ってもいいのに、とさえ思ってしまう(笑)。『もう、うんざりだ!』ってね。もちろん、ダーティーな抗議をしろという意味ではないよ。ボトルや靴下を散らかしたまま帰るぐらい、許されてもいいと思う。それほど悔しかったはずだからね」
一方、この試合について少し異なる視点を示したのが、元イングランド代表FWのガリー・リネカーだった。ブラジル戦での日本について、次のように語っている。
「ブラジル戦で、日本が低い位置にブロックを敷いて戦ったことに、正直かなり驚いた。日本は本来、ボールを保持するのが非常にうまいチーム。ただ、相手のゴールから100メートル近く離れた場所で、その良さを活かすのは難しいよ」
すると、アメリカ女子代表監督のエマ・ヘイズも、リネカーの意見に同調した。英国人指揮官のヘイズは、戦術分析にも定評がある。さらにリネカーは現役時代、日本の名古屋グランパスでプレーした経験もある。そうした背景を踏まえ、ヘイズは次のように問いかけた。
「ガリーに聞きたい。日本はJリーグの100年構想を掲げているわよね? 本当に壮大なプロジェクト。それなのに、なぜ、あそこまで怖がった戦い方をするのか? ブラジル相手に1-0でリードした途端に...相手と真っ向勝負をやめた。非常に低いブロックで戦っていた。あの戦い方が、彼らのメンタリティなのかしら?」
リネカーは「良い質問だね」と応じ、こう答えた。
「そもそも日本の理念や考え方の根底には、武士道というものがある。サムライのように大胆で勇敢であれ、という精神だ」
少し考え込むような表情を見せたリネカーに代わるように、元イングランド代表MFジョー・コールが自身の考えを述べた。
「私は『謙虚さ』が理由だと思う。日本人は本当に謙虚な国民だから。でも、サッカーでは話は別。最高のチームは、少しばかり自信や堂々とした雰囲気を持っているものだ。ブラジル戦の日本には、もう少し勇敢であってほしかった」
ヘイズも「本当に残念だった。だって日本には、それだけの力が十分にあるから」と語る。するとリネカーも、オランダ戦を引き合いに出しながらこう続けた。
「初戦のオランダ戦でも、日本は追いかける立場になった途端に、本当に良くなった。ボールを回せるし、動かせる。そして本気でゴールを奪いに行き、試合をひっくり返すこともできる」
英国の識者たちが疑問を抱いていたのは、日本の実力ではない。ブラジル戦の後半で敷いた低い守備ブロック、そしてオランダ戦の前半に見せた慎重すぎるアプローチだった。
日本には世界の強豪と互角以上に渡り合うだけの力があると認めている。だからこそ、自らその力を制限するようにも映った戦い方に、最後まで首をかしげていたのである。
文●田嶋コウスケ
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