現地7月1日に行なわれた北中米ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦、ベルギー代表はセネガル代表との壮絶な死闘を制し、ベスト16入りを果たした。
前半24分にアビブ・ディアラ、51分にはイスマイラ・サールにゴールを許し、一時は2点のビハインドを負い、敗退寸前まで追い込まれたものの、86分にロメル・ルカク、89分にユーリ・ティーレマンスが立て続けにゴールを奪って試合を振り出しに戻すと、延長後半アディショナルタイム5分、VAR判定で得たPKをティーレマンスが冷静に決め、3-2で劇的な逆転勝利を収めた。
2点差をひっくり返し、終了間際の決勝点でトーナメントを勝ち上がるという展開は、ベルギーが0-2から日本代表を3-2で逆転した2018年ロシア大会ラウンド・オブ16の激闘を思い起こさせるものだった。土壇場で再び奇跡を演じた「赤い悪魔」に対し、世界各国のメディアは驚きとともに、その真価や課題を論じている。
英国の日刊紙『The Guardian』は、この一戦を「W杯史上最も遅い決勝ゴールが生まれた歴史的試合」として紹介。8年前の日本戦との類似にも言及し、「ティーレマンスはロシア大会でも途中出場でピッチに立っていた。当時プレーしたティボー・クルトワ、トマ・ムニエ、ルカク、ケビン・デ・ブライネも再びピッチに立ち、それぞれが逆転劇の一翼を担った」と伝え、当時の経験が今回の逆転劇にも活かされたとの見方を示した。
一方で、勝敗を分けた最大の要因として、リュディ・ガルシア監督の采配を挙げ、「後半序盤、デ・ブライネやジェレミー・ドクら主力を大胆に交代させた結果、試合の流れが変わった。ルカクやニコラス・ラスキン、ドディ・ルケバキオら途中出場組がチームを活性化させた」と評価。指揮官の「ボール保持だけでは勝てない。戦う姿勢が必要だ。選手同士が言い合うくらいの激しさは歓迎する」とのコメントも紹介している。
米スポーツ専門チャンネル『ESPN』も、この試合を「ベルギー黄金世代はまだ終わっていないと証明した」とポジティブに評価。「2点を追う56分、ガルシア監督はデ・ブライネとドクを同時に下げる大胆な決断を下した。当初は黄金世代の終焉を象徴する交代にも映ったが、これがベルギーを蘇らせた」と振り返り、「ルカクの一撃が希望を与え、ティーレマンスの同点弾がセネガルを打ち砕いた。そして延長終了間際のPKで、歴史的勝利を完成させた」と劇的な展開を伝えた。
さらに同メディアは、この勝利が今後へ与える影響にも注目。「ベルギーはここまで、決して期待に応える戦いを見せられなかったが、この逆転劇が才能豊かなチームの快進撃のきっかけになる可能性はある」とする一方、「今大会でベルギーは、高齢化の影響や弱点も露呈している。今回の結果が復活の兆しか、それとも黄金世代最後の輝きとなるのか、今後の焦点になる」と冷静な指摘も忘れなかった。 その他、各国メディアも一様にこの一戦に注目し、ベルギーの母国紙『HLN』は「これはサッカーではない。狂気だった。この試合を見返しても、いまだ何が起きたのか理解できない」と驚きを隠さず。一方、隣国オランダのサッカー専門誌『Voetbal International』は「ベルギーは守備面の修正を怠ったため、敗退寸前まで追い込まれた。延長戦で勝利したものの、戦術的には幸運に救われた部分が大きい」と、冷静な見解を示している。
イタリアのスポーツ紙『Gazzetta dello Sport』は、「ベルギーはすでに、帰国を思い描いていた。しかし125分のPKで蘇り、セネガルの夢を打ち砕いた」と報じる一方で、「0-2の場面では、ティーレマンスとレアンドロ・トロサールが口論し、チームは老朽化して魂を失っていた」と、ネガティブな面も振り返った。
開催国アメリカのスポーツ専門サイト『The Athletic』は、この結末を「ベルギー黄金世代への追悼記事は、すでに書かれていた。しかし、誰も予想しなかった大逆転が、その結末を書き換えた」と表現。そして、ドイツの日刊紙『BILD』が「純粋なドラマだ。黄金世代は夢を繋ぎ、悲願の世界制覇への希望を残した」と興奮気味に伝えると、フランスのスポーツ紙『L’EQUIPE』は「長時間にわたって無気力だったベルギーだが、信じ難い逆転劇によって救われた」と綴っている。
同じフランスの日刊紙『Le Figaro』は、「ティーレマンスは同点弾に加え、自らPKを獲得して沈着に決めるなど、まさにベルギーを救った英雄だった」「ルカクは86分のゴールで、チームに最後の希望を与えた。ナポリで苦しんだシーズンを経ても、まだ決定的な仕事ができると証明した」「トロサールは今大会を通じて、ベルギーで最も安定したパフォーマンスを見せている選手だ」と、活躍した選手を絶賛すると同時に、デ・ブライネについては「かつての面影はなく、見ていて気の毒になるほどだった」と酷評した。
また浮き彫りになったチームの課題も指摘し、「ベルギーは86分まで、無力であり、無気力だった。この奇跡の逆転劇に惑わされてはならない。グループステージでも、彼らは説得力を欠いており、今後の試合で再び同じような奇跡が起こる保証はない。より強いチームが相手になると、今回のような戦いは致命傷になるだろう」と警告している。
劇的勝利に沸くベルギー国内でも、決して楽観論ばかりではなく、『HLN』紙では、元ベルギー代表のマルク・デグリース氏が「歴史に残る勝利だった。しかし、だからといってガルシア監督が突然、名将や“奇跡の男”になったわけではない。大胆な交代策は、結果的に成功したが、一歩間違えば敗退していた。奇跡の逆転だけを見て、それまでの采配や問題点を忘れてはいけない」と指摘し、「デ・ブライネやドクは、今後もチームの中心であり、監督は彼らを上手くマネジメントしていかなければならない」と訴えた。
構成●THE DIGEST編集部
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