
映画「また逢う日まで」(1950年公開)などに出演し、清楚な美しさと気品のある演技で人気を博した名女優・久我美子さん。そんな彼女がヒロインを務める映画「群狼の街」(1952年公開)が、CS放送「衛星劇場」にて7月6日(月)朝8時30分より放送される(※7月25日[土]朝8時より再放送)。そこで本記事では、久我さんの魅力とともに、テレビ初放送となる本作のあらすじや見どころを紹介していく。
■学生たちに忍び寄る魔の手…社会問題に切り込んだ「群狼の街」
アルバイト学生を搾取する闇の組織と、それに立ち向かう学生たちの闘いを描いた社会派映画「群狼の街」。堀雄二さんと久我さん共演の「奴隷の街」(1951年公開)の姉妹編として製作され、監督を「飛騨の小天狗」(1951年公開)の小石栄一氏が、脚本を「母子船」(1951年公開)の八住利雄氏が「奴隷の街」に引き続き担当している。
本作でヒロイン・宇和島見奈子を演じるのは、戦後日本映画を代表する女優の一人・久我さんだ。オムニバス映画「四つの恋の物語」(1947年公開)でデビューを果たした久我さんは、「また逢う日まで」で注目を集めると、「女の園」(1954年公開)で毎日映画コンクールの女優助演賞を受賞。1970年代以降はテレビを中心に活動し、ドラマ「華麗なる一族」などで存在感を示してきた。2024年に惜しまれつつ逝去したが、本作ではシリアスな役どころを体当たりで演じ切っており、抜群の存在感を放っている。
「群狼の街」では、団体等規正令で解散したはずの杉田組が“学生アルバイト協会”を立ち上げ、学費や生活費を稼ぐためにアルバイトをする学生たちを食い物にする様子が描かれる。
宇和島見奈子(久我さん)もまた病気の父親を支えながら勉学に励む大学生の一人で、生活苦から厳しい現実に直面し、次第に闇社会の罠に巻き込まれていく。
一方、学生新聞編集部に所属する江口(菅原謙二さん)は、杉田組の息のかかったアルバイト学生の噂を耳にし、その正体を突き止めるべく調査を開始。そんな中、地下の工事現場へ送り込まれた学生たちは、いつ終わるとも知れない排水工事に従事させられる。事態を知った江口は単身で現場へ潜入するが、杉田一味と乱闘騒ぎになってしまい――。
■久我美子が体現したヒロイン・見奈子の存在感
本作は、学びながらも働かざるを得ない多くの学生たちの苦悩や不安を映し出しながらも、彼らが団結して不正に立ち向かう姿を印象的に描いている。単なる犯罪ドラマや青春群像劇にとどまらず、学生労働の実態や若者の貧困といった当時の社会問題に鋭く切り込んでいる点が大きな特徴だ。
病気の父の面倒を見ながら学業に励む見奈子は、生活苦に直面する学生たちの現実を象徴する人物として描かれる。友人たちが危険なアルバイトへと引き寄せられていく中で、苦悩や葛藤を抱えながらも懸命に生きようとする見奈子。物語のキーパーソンとも言える人物を、久我さんは持ち前の演技力で繊細に演じ、学生搾取という社会問題を扱った本作に人間ドラマとしての厚みを与えている。
なお物語が進むにつれ、杉田組のバックに“榛名商事会社”という存在が浮かび上がってくるのだが、見奈子はその組織に関する衝撃の事実を知ることに。その時の見奈子の複雑な感情を見事に体現した久我さんの名演技はまさに圧巻だ。
戦後日本映画界のアイドル的存在だった久我さんが、本格的な社会派ドラマに挑戦し、女優としてその実力をいかんなく発揮している本作。二転三転するストーリー展開に加え、江口の奮闘ぶりや衝撃的なクライマックスも見どころの一つとなっている。


