
モロッコに0-3。ベスト8進出は叶わなかったが、ジョンストンは誇らしげ「カナダ人らしい誠実さと不屈の精神を持ってプレーした」【W杯】
[W杯ラウンド16]モロッコ 3-0 カナダ/7月4日/ヒューストン・スタジアム
初のベスト16進出という歴史を刻んだ開催国カナダの挑戦は、前回大会4位のモロッコを前に終わりを迎えた。スコアは0-3。しかし、その数字だけでは語れない90分だった。
グループBを2位で突破したカナダ、ラウンド32で南アフリカを1-0で撃破。勢いそのままに挑んだモロッコ戦では、組織立った4-4-2で構え、守備では相手の攻撃の起点となるブラヒム・ディアスら前線の選手に自由を与えず、攻撃では鋭いカウンターやセットプレーからチャンスを作り出した。
スコアレスで終えた前半だけを見れば、試合はカナダの狙い通りに進んでいたと言っていい。
しかし、世界の強豪はわずかな隙を見逃さなかった。50分、アシュラフ・ハキミのFKからアゼディン・ウナヒが先制点を奪うと、試合の流れは一変する。追い掛ける立場となったカナダはラインを押し上げて反撃を試みるが、その背後のスペースをモロッコに突かれ、82分にウナヒ、さらに90+8分にはソフィアン・ラヒミにもゴールを許した。
それでも、右サイドバックで攻守に走り続けたアリスター・ジョンストンの言葉からは、この試合の価値を見出そうとする強い思いが伝わってきた。
「カナダの人たちには、誰をも恐れないチームの姿を誇りに思ってほしい」
ジョンストンが最も伝えたかったのは、結果ではなく姿勢だった。どんな相手にも臆することなく挑み、持てる力のすべてを出し切る。その姿こそがカナダらしさであり、「このユニホームを着る意味」を体現した大会だったと胸を張る。
「私たちは、あらゆる試練に真正面から立ち向かった。カナダ人らしい誠実さと不屈の精神を持ってプレーした。それが何より誇らしい」
開催国として世界中の視線を浴びるなかで、勝敗だけでなく「カナダという国がどんな国なのか」をピッチで表現することも選手たちの使命だった。その意味で、ジョンストンは「世界にカナダ人らしさを示せた」と言う。一方で、試合内容については冷静な分析も忘れなかった。
前半は自分たちの狙い通りだったという認識は明確だ。ミドルブロックで相手を引き込み、ボールを奪って素早く攻める。モロッコにボールを持たせながらも危険な場面は多く作らせず、何度か得点の匂いも漂わせた。
そこで1点でも取れていれば...ジョンストンは「前半のチャンスを決め切れていたら、後半は違う展開になっていたかもしれない」と語る。
ハーフタイムには「相手は必ず修正してくる」とチーム内でも確認していたという。それでも、後半開始早々にセットプレーから失点。ジョンストンは「あまりにもシンプルな形でやられてしまった」と悔しさを隠さなかった。
先制されると、カナダは得意とするミドルブロックを維持できない。ラインを押し上げ、高い位置から奪いに行かなければならず、その背後には広大なスペースが生まれる。そして、そのスペースを突く能力こそ、モロッコの真骨頂だった。
ブラヒム、ウナヒ、ラヒミらタレントの躍動と、カウンターから追加点を奪われる展開は、まさに世界トップクラスとの経験値の差でもあった。「0-3という内容ではなかったと思う。でもスコアは0-3。それを受け入れなければならない」とジョンストン。この一言には、世界との差を認めながらも、自分たちの戦いには確かな手応えがあったという実感がにじむ。
そしてジョンストンは、大会全体を振り返るなかで、プレーそのもの以上に心に残った光景として、ホームでの熱狂を挙げた。スタジアムへ向かうサポーターで埋め尽くされた街並み。大歓声に包まれたスタジアム。世界中から集まった人々が目にしたカナダのサッカー文化だ。
「カナダがサッカーの国であることを証明できた」
アイスホッケー大国というイメージが強いカナダだが、この大会を通してサッカーへの情熱は世界にも十分に伝わった。ジョンストン自身も「カナダ国内でさえ、ここまでの熱量は十分に知られていなかったかもしれない」と語るように、この大会は競技文化そのものを大きく前進させる機会になった。
もちろん、彼らの挑戦はここで終わらない。2030年大会へ向けては開催国枠という後押しはなくなり、再び予選を勝ち抜かなければならない。
それでもジョンストンは悲観していない。「次は自分が代表でプレーしたい」と、今大会を見た17歳、18歳の若者たちがそう思うこと。その憧れが新たな競争を生み、選手層をさらに厚くしていく。ベテラン、若手、指導者が一体となって新たな世代を育てることこそ、この大会が残した最大の財産だと考えている。
「精神的にも身体的にも良い状態にある。これからの4年間を積極的に戦い、2030年へ万全の準備をしたい」
モロッコに敗れ、ベスト8進出という夢は叶わなかった。それでも開催国として示した勇敢な戦い、そしてサッカーという競技を国全体へさらに根付かせた意義は決して小さくない。ジョンストンが語った「誰をも恐れないカナダ」は、この大会の象徴だった。そして、その精神は2030年へ向けた新たなカナダ代表の礎となっていくはずだ。
取材・文●河治良幸
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