
深海には、霊界から舞い戻ってきたような奇妙な魚がいます。
その代表格のひとつが、英名で「ゴーストシャーク(ghost shark)」と呼ばれるギンザメ類です。
そんな中、中央アメリカ・コスタリカ大学(UCR)は今回、太平洋側のカボ・ブランコとカーニョ島の近くで、新種のゴーストシャークを発見した可能性があると報告しています。
幽霊のような鮫「ゴーストシャーク」とは、どんな生物なのでしょうか。
目次
- コスタリカ沖で見つかった“新種候補”のゴーストシャーク
- 幽霊鮫「ゴーストシャーク」とは?
コスタリカ沖で見つかった“新種候補”のゴーストシャーク
今回注目されているゴーストシャークは、コスタリカ沖の太平洋深海で確認されました。
コスタリカ大学の生物学者アルトゥーロ・アングロ・シバハ氏によると、この個体には、既知の近縁種と比べていくつかの目立つ違いがあります。
具体的には、吻(ふん)、つまり鼻先の部分が「より短い」こと、体色の模様が「より暗い」こと、さらに背びれの棘が「かなり長い」ことです。
【新種候補となるゴーストシャークの実際の標本画像がこちら】
見た目だけでなく、遺伝子解析でも重要な手がかりが得られています。
シバハ氏によると、この新種候補は他のゴーストシャークと「繁殖上の接触がない」ことが示されました。
つまり、他の近縁種との遺伝的な交流がない、独立した種である可能性があります。
ただし、ここで大切なのは、まだ結論が完全に確定したわけではないという点です。
過去にペルーやチリの近海で採集された標本が、今回のコスタリカ産の個体と非常によく似ているため、研究者たちは標本同士を比較しながら慎重に判断を進めています。
もし新種として確定すれば、中央アメリカ沿岸の深海にも、まだ見つかっていない生物多様性が広がっていることを示す発見になります。
幽霊鮫「ゴーストシャーク」とは?
ゴーストシャークは生物学上、「ギンザメ類(Chimaera)」と呼ばれるグループに入ります。
属名のChimaeraはギリシア神話に登場する怪物・キメラに由来し、その独特の姿形から名付けられました。
サメ・エイと同じ軟骨魚類に属しますが、ゴーストシャーク(ギンザメ)はまた別の系統であり、両者は約4億年以上前に系統が分かれたと考えられています。
ゴーストシャークの具体的な種として知られるのが、「ヒドロラグス・トロリ(Hydrolagus trolli)」です。
この種は、青みがかった灰色の体、尖った吻、目の周囲の不気味な暗い線など、まさにゴーストシャークにふさわしい姿をしています。
実際に撮影された貴重な映像がこちら。※ 視聴の際は、音量にご注意ください。
ヒドロラグス・トロリは主に、ニューカレドニアやニュージーランド周辺の西太平洋に分布し、水深612〜1707メートルの深海にすむとされています。
最大で約120センチに達し、卵を産んで繁殖する魚です。
ゴーストシャークは、単に「変わった深海魚」というだけではありません。
サメに近縁でありながら、長い進化の道のりを別々に歩んできた、古くて謎の多い軟骨魚類なのです。
コスタリカ沖の新種候補は、そんなゴーストシャークの世界に、まだ私たちが知らない“深海の空白”が残されていることを教えてくれます。
新種として正式に認められるかどうかは、今後の標本比較にかかっています。
しかし少なくとも今回の発見は、中央アメリカの深海が、未知の生物をまだ隠している可能性を強く示しています。
参考文献
New species of ghost shark may have been found in Costa Rica
https://phys.org/news/2026-07-species-ghost-shark-costa-rica.html
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

