現地7月4日に行なわれた北中米ワールドカップのラウンド・オブ16で、フランス代表はパラグアイ代表を1-0で下し、準々決勝進出を決めた。
決勝点は70分、キリアン・エムバペがPKを冷静に沈めて奪取。ドイツを撃破して勢いに乗る難敵を退けた。その内容は猛暑の米国・フィラデルフィアで繰り広げられた激しい肉弾戦となり、試合後は各国メディアが一斉に「荒れた一戦」を取り上げている。
フランスの日刊紙『Le Figaro』は、「灼熱の暑さの中、あまりにもラフな南米勢を相手にフランスは罠に嵌まることなく勝ち抜いた」と報道。「今大会で最も出来の悪い試合だったかもしれない」と自国代表チームのプレー内容には厳しい評価を下しながらも、「世界王者になるには、美しさや華やかさだけではなく、泥臭く戦い抜かなければならない。フランスはそれを証明した」と勝利の価値を強調した。
同メディアは、5バックで守備を固め、時間稼ぎや挑発を繰り返したパラグアイにも言及し、「ボールを保持する意思はほとんどなく、破壊することだけを目的としていた」「サッカーというより、サッカーの否定だった」と痛烈に批判。さらに、ラフプレーを見逃し続けたイルギス・タンタシェフ主審についても、「完全に試合をコントロールできていなかった」と断じている。
判定には英公共放送『BBC』も疑問を呈している。同局は「パラグアイは、中立ファンの支持を集めたドイツ戦とは、別の顔を見せた」と綴り、アドリアン・ラビオへの危険なタックルや、エムバペへの報復行為、ダヨ・ウパメカノへの肘打ちなどを挙げながら、「驚くべきことに、パラグアイには一枚の警告も提示されなかった」と指摘した。
コメンテーターを務めた元イングランド代表GKジョー・ハート氏は、「パラグアイの選手たちの行動は、本当に恥ずべきだった。自分のチームなら、ピッチから引きずり下ろしていた」と厳しく非難。同じく元イングランド代表のマイカ・リチャーズ氏も、「守備は十分素晴らしかったのだから、あんな振る舞いをする必要はなかった」と苦言を呈している。
また記事では、ディディエ・デシャン監督が試合終盤、「相手は必ずエムバペを削りに来る」と判断し、屈強な他の選手たちにキャプテンを囲むよう指示。さらにウィリアム・サリバによる「相手が挑発してくるのは事前に映像で理解していた。言い争いに巻き込まれれば相手の思う壺だった」とのコメントがそれぞれ紹介され、チームとして冷静さを保ち続けた点が称賛された。
米スポーツ専門チャンネル『ESPN』は、この試合がフランスにとって「今大会最大の試練だった」と指摘。「ここまでの『レ・ブルー』は圧倒的な攻撃力で勝ち進んできたが、パラグアイは徹底したローブロックと激しい接触プレー、執拗な時間稼ぎで試合の流れを寸断。『華麗なカルテット』と呼ばれるエムバペ、ウスマンヌ・デンベレ、マイケル・オリーセ、ブラッドレー・バルコラにほとんど自由を与えなかった」と伝えている。
それに対してデシャン監督は慌てず、選手たちが挑発に乗らないと信じ続けた。そして途中出場のデジレ・ドゥエが獲得したPKをエムバペが決め、最後まで規律を失わずに逃げ切った戦いぶりを、同メディアは「異なるタイプの相手、異なる環境、異なるプレッシャーを乗り越えた経験は、この先の戦いに向けた大きな財産になる」と称賛した。
なお同メディアは、パラグアイの戦術についても一定の理解を示しており、「美しい試合ではなかったが、ドイツ撃破と同じ戦い方であと一歩まで迫った。格上相手に真っ向勝負を挑んでいれば、もっと大差で敗れていた可能性もある」と指摘して、「正解も不正解もない。それぞれの国が自らの強みで戦うのがW杯の魅力だ」と論じている。
ブラジルの総合サイト『Globo』が注目したのは、決勝点を決めたエムバペの"変化"だ。「今大会で初めて、彼は執拗なマークと挑発にさらされた。ボールを持つたびに激しいチェックを受け、相手選手から心理戦も仕掛けられたが、試合中の彼は怒りをぶつけることなく耐え続けた」と評価した。
PKで自ら均衡を破ると笑みを浮かべ、相手の挑発を逆に受け流す余裕まで見せた背番号10の振る舞いについて、同メディアは「新たなバージョンのエムバペ」と表現。デシャン監督の、「彼はピッチ内外でグループ全体を代表する存在になった」とのコメントを紹介し、キャプテンとしての成熟ぶりを称賛している。
最後に、他とは一風異なる見解を示したのが、フランスのサッカー専門サイト『SO FOOT』である。「パラグアイの試合を実は楽しんだ」と題した記事では、「たったPKによる1失点しか許さなかったパラグアイの守備組織は見事だった。世界王者候補相手に、あれ以外の戦い方があっただろうか」と対戦相手に理解を示すとともに、「こうした"悪役"がいなければ、本当のW杯とは言えない」と締め括った。
構成●THE DIGEST編集部
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