この夏のサマーリーグで、NBAは新たなふたつのルールを試験的に導入することになった。
ひとつはフリースロー1本ルール。これは、試合時間の短縮や、ゲームの流れをよくすることを目的としたもので、Gリーグではすでに2019-20シーズンから導入されている。
このルールでは、個人・チームのファウルによらず与えられるフリースローは1本のみで、この1本を決めることができれば、2ポイントシュートに対するファウルなら2点、3ポイントシュートに対するファウルなら3点が認められる。つまり“0”か“フル”か、ということだ。
ただし例外があって、第4クォーター残り2分以降と延長戦は、従来通りの2本または3本打つ方式に戻される。
試合終盤には、ファウルして相手にフリースローを打たせることでポゼッション奪回を目論む、いわゆる“ファウルゲーム”が戦術的に行なわれることが多い。この新ルールだと、1本外せば0点になるため逆転のチャンスが増えたり、駆け引きの仕方に違いが生じるため、通常の方式に戻されるということだ。また、バスケットカウント時のボーナススローも従来通りである。
Gリーグに導入する際は「フリースロー中に選手が休めなくなる」といった課題が挙がったようだが、それはローテーションなどで補えるという結論に至り、その点では特に問題視されていない模様。
ただ、NBAのデータでは、選手は1本目より2本目、2本目より3本目の方が成功率が高いことが検証されていて、Gリーグへの導入を議論していた時点での過去20年間のデータによると、1本目の成功率は73.3%であるのに対し、2本目は78.0%、3本目は85.7%と徐々に上がっている。
1本のみの勝負となれば、リーグ全体としてフリースロー成功率は変わってくるだろうし、ファウル狙いのやや強引なペネトレーションでフリースローからスコアを荒稼ぎする、といった戦略にも変化が生じるだろう。
実際にGリーグでは「フリースローの駆け引きや緊張感が失われる」という反対意見が出ているようだが、テンポが良くなる点について賛成する声もあり、導入意向は現在まで続いている。2時間以下を目標に、ゲーム時間短縮を目指しているNBAにとっては、今回のサマーリーグでの試験的導入での感触で、実施するかを検討することになる。 もうひとつは、内部にトラッキングチップを搭載した新しいボールの使用だ。
センサーがボールへの接触を記録し、そのデータをリアルタイムで審判に提供するもので、その精度はかなり精密。これにより、ライン際で最後に誰がボールに触ったか、アウト・オブ・バウンズ時、奪い合いになった場合の判定などに役立てることが期待されている。
すでにサッカーやクリケットでもチップ内蔵ボールは導入されていて、ラインを超えていたかどうかといった際どい場面では明確な証拠で示されるため、納得がいく判断となるケースは多い。
ただ一方で、議論の対象となることもある。現在開催されているサッカーのワールドカップでも、現地時間2日に行なわれたポルトガル対クロアチア戦で“髪の毛がボールに触っていた”とセンサーが察知したことで、終盤のアディショナルタイムに決めた会心の同点弾が無効になるという出来事があった。
後方から長いパスが出された時点では、ボールを受けた選手はオフサイドポジションではなかったのだが、その途中で別の味方がボールめがけて飛び上がり、目視では頭でボールを操作したようには見えないが、彼の”髪の毛”がボールに接触したことをセンサーが感知。それにより彼が最後にボールに触った人物となったためにオフサイド判定が有効となって、ゴールが取り消されてしまったのだった。
ワールドカップの決勝トーナメントのような重要な1戦、しかも試合終了間際の同点ゴールという、その後の結果を変え得るプレーだっただけに、クロアチアの選手たちの戸惑いや落胆はもちろん、世界中で大論争を巻き起こすこととなった。
これが肉眼のみのジャッジであれば、頭にボールが触れていたことは判別しがたかったから、このテクノロジーが試合結果を変えたとも言える。
チップを内蔵することによって、ボールの重さはもちろん、空気圧や飛び方、握り心地など、選手の感触には一切の影響はないとのこと。だが、この試合のように、精密すぎるがゆえに重要なゲームで流れや結果を変えるようなことは起こり得るだろう。
これらふたつの新ルールは、7月に開催されるカリフォルニア・クラシック(サンフランシスコ、サクラメント)、ソルトレイクシティ・サマーリーグ、NBAサマーリーグ(ラスベガス)で試される予定となっている。
文●小川由紀子
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