北中米ワールドカップで日本代表は、グループステージを突破して決勝トーナメントへ進出すると、ラウンド・オブ32では優勝候補ブラジル代表を相手に先制しながらも、後半アディショナルタイムに逆転を許して惜しくも敗退した。
悲願のベスト8進出は惜しくも逃したものの、世界屈指の強豪を最後まで苦しめた戦いぶりは大きなインパクトを残した。もちろん、目標達成がならなかった以上、その敗因を冷静に分析し、さらなる成長へ繋げていくことは不可欠だが、それでも国外のメディアからは、日本の実力や姿勢、さらにはサッカー全体の取り組みに対しても、今なお賛辞が寄せられている。
2002年日韓W杯で日本を率いたフィリップ・トルシエ氏は、英国の通信社『Reuters』の取材で、今大会においてアジア勢が苦戦を強いられた背景を分析する中で、「サムライブルー」に対しては「試合は先発の11人だけでなく、途中出場選手の質によっても決まるケースが多い。日本のスタメンは十分に競争力があったが、負傷者の影響で、最も必要な場面で攻撃の選択肢が制限されてしまった」と、比較的ポジティブに評した。
英国の日刊紙『The Guardian』は、「ブラジル相手に番狂わせを起こしかけた。しかし、あまりにも長い時間、自陣深くまで引き過ぎたために相手に流れを渡してしまった」とラウンド・オブ32での戦いぶりには苦言を呈した。「それでも、世界最高峰のチームのひとつと真っ向から渡り合った姿には感銘を受けた」と綴り、優勝候補相手にも物怖じせず、自分たちのサッカーで互角以上の勝負を演じた日本の実力を称賛している。
対してイタリアの文化系出版社『Città Nuova』は、「サッカーを超えた日本の大きな教訓」と題した記事において、代表チームのW杯における戦いだけでなく、国内サッカー、さらには日本の教育制度にまで言及し、その「綿密な計画とシステム」の成果を高く評価した。
記事ではまず、オランダ代表のロナルド・クーマン監督が、日本の森保一監督へ敬意を伝えた。「私のキャリアで、最もファウルが少ない試合だったと思う。選手たちはファウルを犯すたびに笑顔で謝罪し、試合後にはスタンドへ一礼して観客へ感謝を示した。さらにロッカールームは、試合が行なわれたとは思えないほど、整理整頓されていた。多くの人が、日本から学ぶべきだ」と、対戦相手の振る舞いを絶賛した様子が紹介されている。
続いて同メディアは、日本がブラジルに惜敗した一戦でのプレーに注目し、「前半は組織力と規律を兼ね備えた見事な内容でリードを奪い、最後まで世界有数の強豪を苦しめた」と振り返り、森保監督の「選手たちは全てを出し切った」とのコメントを伝えながら、「日本は献身性だけでなく、技術面でも目覚ましい成長を遂げている」と指摘した。
その背景には、JFA(日本サッカー協会)が2016年から推進している長期育成計画「Project DNA(=Developing Natural Abilities)」があると同メディアは分析。「育成年代の強化や指導者育成、トレーニング環境の整備を全国規模で進める他、有望な若手を積極的に欧州へ送り出すことで競争力を高めてきた」と説明し、遠藤航、鎌田大地、上田綺世、前田大然らを例に挙げ、日本代表の現在の躍進は偶然ではなく、長年にわたる計画の成果だと論じた。
さらに論考は、サッカーから教育へと話題を広げ、「幼少期から公共の場を大切にする姿勢や集団への責任感を育む日本の教育は、競技力だけでなく、選手たちの立ち居振る舞いにも表われている」と分析。その上で、「停滞するイタリア・サッカーこそ、日本のような長期的視野に立った育成や組織作りから学ぶべき点は多い」と提言している。
サッカー後進国として長く強豪の背中を負い続けてきた日本が、有望なダークホースとして多くの期待を受けながら望んだ今大会。その歩みは4試合で終わってしまったが、3度の世界制覇を誇る国のメディアから“見本”として挙げられたこともまた、ひとつの成果であり、誇るべきものであると言っても良いだろう。
構成●THE DIGEST編集部
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