
【三浦泰年の情熱地泰】ブラジルは"ブラジル"ではなくなったのか――敗退で突き付けられた、日本サッカーへの問い
僕のワールドカップが終わった。
日本代表がブラジル代表に破れ、そのブラジルはベスト16でノルウェー代表相手に1-2と敗戦した。
そして僕の願望予想。「ブラジル優勝」は叶わぬことに。世界の“サッカー王国”復活は今回もならなかった。
そしてワールドカップはここからが面白く本番だと思いつつも、日本代表とブラジル代表がいなくなったワールドカップにはより欧州中心となった興行色の強い印象を持ち、そこに染まったヨーロッパのようなサッカーをやったブラジル代表の未来がどうなっていくのか心配でたまらない。
4年後の次回大会を語るにはまだ早いが、ブラジルは4年後に向けて何を考えているのであろうか?
そして、ブラジル代表に個人の力で負けたと批評される日本代表は、ノルウェーのアーリング・ハーランドの個の力に屈したブラジルを見て、4年後に向けてどう舵を取り、どんなチーム作りをしていくのであろうか?
ブラジルとノルウェーの一戦を振り返れば、実力だけではない様々な要素が絡んでいた。運が味方したかどうかもそのひとつ。だが、その運も限りなく実力に近い。
この試合はブラジルがしっかり先手を取れればイージーに進められた可能性もあった。しかし、0-0で試合が進んだことでノルウェーにも次第にチャンスが増えていく。もちろん、ノルウェーにも良い選手がいる。
そして、ハーランドとブラジルの19歳エンドリッキとの大きな差が明暗を分ける結果となる。それは単なる実績だけではなく、経験に裏付けられた自信と運をどちらが持っていたかの差として明確に表れた。
19歳のエンドリッキは、17歳の時にパルメイラスの試合で生観戦したことがあるが、今回のワールドカップで実力を十分に出し切るまでには、間に合っていなかったのであろう。
“怪物”ロナウドは17歳で迎えた94年のアメリカ・ワールドカップでベンチを温め、出番がないままブラジルは優勝した。02年の日韓ワールドカップでは、やはり20歳になったばかりのカカが選ばれたものの、出番はグループステージの1試合だけで、それでもブラジルは優勝。それを考えると、今回のセレソンの選手層では、19歳の彼を決勝トーナメントの大事な場面で使わなければならなかった…ということでもある。
そして前半のPK失敗も含めてこの試合はノルウェーの物になってしまった。
僕はノルウェー戦を見て、「ブラジルサッカーの何が好きか?」「なぜブラジルが好きなのか?」を改めて考えさせられる、そんな想いになった。
18歳でブラジルに留学した僕。弟は15歳でブラジルに渡り、亡くなった父は70年メキシコ・ワールドカップを生で見に行き、「サッカーはブラジルだ」と兄弟をサッカー選手にしようと当時、考えた。
そのブラジルファミリーのひとりである僕が正直、今のブラジル代表に疑問を抱くようになっている。なぜか――。
0-1にされたヘディングで競り負けたセンターバックの3番、0-2とされたシュートで股を見事に抜かれたサイドバックの13番。彼らの失点後の落ち込み…あのような仕草は歴史にいるブラジル代表の選手、セレソンの心を持った選手ではない。
弱さを表現してしまう今の選手たち。勝負に敗れてもプライドは残す――そんな“サッカー王国”らしい態度を画面上からは感じ取れなかった。
ただ、その"ブラジルらしさ"を最後まで示したのは、皮肉にもネイマールだった。
2-0にしたノルウェーがブラジル選手をおちょくり、ボールを回し続けている状況に、ネイマールは相手の足を蹴りイエローカード。悔しさを全面に出し、褒められた行為ではないがタダでは負けない。試合を捨てない執着みたいな物は大事になる。これは醜いが、その後に何が起きたか――相手の肘打ちでPKを得た。
ネイマールがGKの挑発にしっかり乗りながらも落ち着いて決めた。
ネイマールの騒動はアンチェロッティ監督にとってはストレスのかかる出来事だったであろう。
僕はネイマールを否定も肯定もしない。スーパースターをどう扱うかのマネジメントは監督の大きな仕事。ネイマールの過去を見れば、「サッカーに本当に集中できるのか?」と思われても仕方がない事をして来た。
しかし彼には、「ブラジル代表選手」という誇りとこだわりと責任がある。もちろんイギリスであれば「紳士であれ」かもしれないが、ワールドカップは世界へ、その国のサッカー文化を見せつける場所でもある。パラグアイがフランスに何がなんでも、どんな手を使ってでも勝とうとしたように…。
ネイマールが熱くならなくても、人気選手としてそのまま代表を退けば良いじゃないかと思う人は普通であり、あそこに立つ人は普通ではないのだ。
いや、そういう意味では、今のブラジル代表はヨーロッパをホームとして戦う“普通の”選手たちなのかもしれない。この試合は勝利も負けも延長やPK戦に突入する可能性も
あり得たが、2点目を取られて一気に望みはしぼんでしまった。そんな展開であった。
そして、ブラジルが敗れたその試合を見た日本サッカー界は何を考えるのであろうか?
欧州で揉まれた上手い選手たちに凡事徹底させ、サッカーでいう当たり前のことをさせればベスト16、運が良ければベスト8、ベスト4まで届くかもしれない。
しかし、世界(W杯)ではその上手い選手たちは充分に通用するのかもしれないが、まだ個の力に差があるといわれる。
やはり、アルゼンチンのメッシ。ポルトガルのクリロナ。フランスのエムバペ。ノルウェーのハーランドのような選手が存在しなかったということ。
日本のスポーツ界で言えば、別競技でタブーなのかもしれないが、野球の大谷翔平のような選手が育っていない、と言われてしまうのであろうか?
この後、サッカー界にはどんなスーパースターが生まれるのか?
スーパースターとは言ってもクリロナは41歳、メッシは39歳。エムバペ、ハーランドはまだ若いが、他にもスターが生まれなければいけない。
タラレバになるが、三笘薫は出場していればスターになれたのか? 久保建英は怪我がなければスターになれたのか?
41歳、39歳の2人は怪我をせずに、ここまでほぼ90分近くプレーしている。
確かに日本は可能性を得る、良いパフォーマンスとゲームを見せた。
しかし違う。それだけでは世界一に届かない。
これで良いと思うことは退化となる。これではダメだと、何を決めるか? 何をやるかになる。
そして、僕自身ももっとサッカーを愛せるようにならないといけない。もっとしっかりした目標と夢を持たなければいけない。
まだまだ続くW杯。
先ずは日本代表ベスト32敗退。ブラジル代表ベスト16敗退。
お疲れさまでした。
ブラジル代表が優勝して「日本は強かった」と言いたかったが、早々にブラジルが負けて「日本は弱かった」と言われて、未来へ前進、突き進むしかないのだ。
悔しいが勝負の世界。負ければ勝つまでやるしかない。
今回、我々は負けたのである。どこか勝ったような雰囲気が流れていないか。
サッカーは勝つか負けるかだけではないことも充分に分かっている。勝利することよりも素晴らしい感動を与えてくれたのが日本代表だ。
しかし一方で、我々は目標を決めて、そこに全く近づけることもなく敗戦したのだ。それを忘れてはいけない。
だから勝つまでやるしかない。
それで良いのだ。
2026年7月6日
三浦泰年
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