
山根視来×黒川圭介対談。MLSに挑戦する意味、ワールドカップ開催国・アメリカのサッカー事情とは?
ワールドカップの熱戦が繰り広げられているアメリカ。その国内リーグであるMLSで己を磨いているのが、4年前のカタール・ワールドカップを経て初の海外挑戦として24年冬にアメリカへ渡った山根視来(ロサンゼルス・ギャラクシー/32歳)と、今冬にこちらも初の海外挑戦を決断した黒川圭介(D.C.ユナイテッド/29歳)だ。ともにSBとして異国の地で戦い続けるふたりに特別対談として語り合ってもらった(第1回/全2回)。
――◆――◆――
――ふたりはJリーグ時代はそこまで接点がなかったと聞きますが、MLSに黒川選手が挑戦するということで、山根選手が色々サポートをしようと、連絡を取るようになったそうですね。
黒川 最初に現地でギャラクシーと練習試合をさせてもらったんでしたよね?(MLSは春秋制。これまでのJリーグ同様、2月頃に開幕し、秋頃に終幕する。ワールドカップ期間は中断)
山根 そうそう。
黒川 僕がアメリカへの移籍を決めた際にミキ(視来)くんに連絡をさせていただき、現地に着いた時には『ようこそ』というようなメッセージをミキくんからいただきました。
山根 ちょうどその時、両チームがサンタモニカで練習試合を組んでいて。
黒川 そうです、僕がアメリカに行って、一発目の練習試合の相手がミキくんがいるギャラクシーだったんです。そこですぐに会えて、話もさせてもらいました。
――黒川選手は山根選手に色々助けてもらったと。
山根 俺は先輩として、アメリカに“慣れている感”をちょっと出しておきました(笑)。
黒川 いえいえ、僕は聞きたいことばかりだったので、本当、心強かったです。日本人の先輩がいてくれるのは本当にありがたくて。
――山根選手はやはり初めてMLSに挑戦する黒川選手のことを気にかけていたんですね。
山根 それこそ自分もこっちに来た時に高丘(陽平/バンクーバー・ホワイトキャップス)とお茶をさせてもらったり、チームメイトの(吉田)麻也くんに色々助けてもらいましたが、やっぱり異国の地で日本人と会話ができるってすごく大切なんです。初めはもう分からないことだらけで、そんな時に日本語で語り合えることでどれほど安心できたか。その時の記憶が強いんですよね。
黒川 僕も安心感がハンパなかったです。
山根 その話している場所から一生離れたくないと思うよね(笑)。やっぱり初の海外生活となると大変なことばかり。だから圭介とも一緒にお茶をして、その後、麻也くんらも含め食事にも行ったよね。気持ちはすごく分かるので。
――日本語で会話をできる嬉しさみたいなものが。
山根 めちゃくちゃありますよ。
黒川 僕はチームにキャンプから合流しましたが、家族は後から来る予定で、通訳もいないので、ひとりで本当何も分からない状態だった。そういう時に日本語で話せることもそうですし、色々教えてもらえるのは、本当ありがたかったです。
山根 D.C.には木島(萌生/12歳で渡米し、大学を経てMLSドラフトで指名された異色の経歴を持つ23歳)がいてくれたのが大きいはずだけど、彼はアメリカの感覚が強いところもあるからね(笑)。
黒川 そうですね(笑)。木島は長くこっちで生活しているのでアメリカのことをたくさん教えてもらっています。
山根 頼りになるよね。でも、改めて圭介の気持ちはよく理解できたので、支えになれればとは思っていました。
――そういう時、山根選手はどんなアドバイスを?
山根 アドバイスはそんなにしていないかもしれない(苦笑)。でもとにかく日本語でいっぱい喋っていろんな会話をしたよね。
黒川 はい、リフレッシュさせてもらいました。
山根 それが大事なんですよ。MLSはどんなリーグかなどは、多分プレーしていけば分かるはず。でも最初にチームに入った際の食事会場などでの孤独感はなかなかなものがある。意識したのはそこのストレスを緩和させてあげることですかね。あとは圭介が住むワシントンD.C.のことは詳しく知らなかったですが、子どもの生活に必要なものなど、そういうことが話題だったよね。
――通訳はいないと言っていましたが、黒川選手は英語は日本で勉強を?
黒川 いや、話せるようなレベルではなく...。徐々には慣れてきましたけど、日常会話をするには程遠いですね。
山根 でも俺はbe動詞も分からない状態でアメリカに行ったから(笑)。それを考えれば大丈夫だよ。
黒川 そうなんですね(笑)。それよりはもう少し理解はしているかもしれません(笑)。
山根 だからこっちですごく勉強した。でも、今でも波はあるよね。言葉がなかなか出てこない時があったり。
黒川 それすごく分かります。
――味方とのコミュニケーションも苦労しましたか?
黒川 そうですね。しかも、移籍が決まった後、色々な手続きの関係で1か月半~2か月ほど日本で過ごす時間があったんです。だから基本はひとりで身体を動かし、こっちに来た最初の1、2週間はコンディションがなかなか上がらず。その中でピッチ外でもコミュニケーションを取らないといけないので、そこは一番苦労しました。でもピッチの上で少しずつ認められていくと、会話も増える形でした。
――それは山根選手も通った道ですね。
山根 そうですね。自分の意見を主張する選手も多いので、英語が出てこない時は日本語でも言い返すようにしていました。イメージ通りのパスをもらえない時、ジェスチャーを含めてとりあえず主張をすれば伝わってくれるので。
黒川 そうですよね、意思表示はめちゃくちゃするようにしています。海外はやはり主張しないとダメだと思うので、そこは普段以上と言いますか、わざと大げさに見せるようにもしています。プレーで示すことは大前提として、そうやってアピールしていると、周りの見る目が少しずつ変わるというか、ピッチ内外で今は馴染んでいけていると思います。
――改めて黒川選手がMLSへの移籍を決めた背景はどんなものだったのでしょうか?
黒川 ガンバで6、7年プレーさせてもらい非常にありがたかったです。ただ、表現が難しいのですが...自分として良くも悪くも先が見えていた部分があると言いますか...、だからこそ一度、環境を変えたいという想いが強まった部分はありました。その中でオファーをいただき、それこそミキくんや麻也さんらがMLSでプレーしているのは分かっていましたし、SBとして、ウィングの凄い選手がいるこのリーグに挑戦してみたかった。その想いがありました。
――実際にプレーしてみてはどうですか?
黒川 マッチアップする選手は改めて能力が高く、これぞドリブラーみたいな選手や、フィジカルに長けた選手など、対戦していてやりがいがありますね。Jリーグでも良い勉強をさせてもらいましたが、また別物というか、よりスピーディで、よりフィジカルも求められるリーグだと移籍する前から感じていましたが、実際もそうでした。
――そこは山根選手も感じてきたMLSの特長ですね。
山根 やっぱり、日本のチームの一員として外国人選手とマッチアップするのと、外国のチームの一員としてプレーするのでは、大きく異なります。味方との連係に関するフラストレーションもそうですし、単純比較はできないですが、Jリーグに来る外国人選手は、どちらかというと日本に順応しようとしてくれる場合が多いです。けど、こっちでは誰もが自分を主張しようとする。だから全く別物と言いますか、対戦相手の前に、まず味方を知ることが大事になる。どういう性格なのか、どういうプレーが好みなのか、そこを知ることがスタートラインのひとつ前にあるようなイメージです。
黒川 僕もミキくんもサイドバックなので、どうしても攻守で周囲と連係する必要がある。味方の動き次第で自分の守備もだいぶ変わってくるので、そこは考えるところですよね。でも、個を伸ばすには良い環境だと思います。
山根 さっき主張する大切さみたいな話もしましたけど、やっぱりサイドバックとして味方に大げさに指示をするようにもしています。他の選手の綻びから自分の守備にも問題が生じた際に、責任の所在をハッキリさせておく必要がありますから。じゃないと、『なんであそこ守れなかったんだ』と、自分が指摘されてしまうことがある。味方ですし、支え合うことは大切ですが、『これは自分のせいじゃない』と、周りにしっかり理解させておくことも、自らのパフォーマンスに深く関わってくると考えるようになりました。
黒川 いわゆる証拠作りと言うか...。
山根 しっかりプレーするのは当たり前として、こっちで評価されるには、そういう主張も必要なのかなと。
――明確な意思表示ということですね。
山根 正直に話せば、指示を出しているのに動いてくれないというシチュエーションはストレスになるんですよ。だからそこはより言うようにしています。
――黒川選手もその辺の意識を。
黒川 そうですね、ただ、今のチームはガンガン前からプレッシャーに行くスタイルで、監督によく言われるのは『後ろを見るな』ということ。例えば自分が前にプレッシャーに行って、CBのスライドが間に合っていなかったら、それはもうCBの責任だと。だから『後ろを振り返るぐらいなら前に行け』というような指示をもらっていて、ハッキリしている面もあります。
――D.C.ユナイテッドを率いているのはかつて鹿島を率いたレネ・ヴァイラー監督でしたね。
黒川 僕は対戦したことがあるくらいの間柄でしたが、明確に求めてくれます。そのなかで、僕も味方に意図を頑張って伝えようとしています。
(第2回に続く)
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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