
山根視来×黒川圭介対談。メッシらとのマッチアップ、チャーター機での移動、異なる気候、スタジアムの雰囲気...アメリカ・MLSの特長とは?
ワールドカップの熱戦が繰り広げられているアメリカ。その国内リーグであるMLSで挑戦を続けているのが、日本代表としてもプレーした山根視来(ロサンゼルス・ギャラクシー/32歳)と、今冬に初の海外挑戦として渡米した黒川圭介(DCユナイテッド/29歳)だ。ともにSBとして異国の地で戦い続けるふたりの特別対談の後編である(第2回/全2回)。
――◆――◆――
――改めてMLSで得られたことはどうでしょう?
黒川 スピーディなプレーもそうですけど、自分のストロングを出せるリーグなのかなと以前から感じていて、そこは伸ばせています。それこそ、今話したように、うちのチームは守備も前から行くスタイルで、狙いどころを定めて潰しにいくので、恐らくJリーグ時代よりインターセプトの回数も増えているはずです。そういうところで自分の良さをより出せていると感じます。
山根 圭介はクオリティが高く、それに加えてフィジカルにも優れた選手だということは分かっていたから、活躍できるだろうなとは感じていて。こっちのウイングやサイドハーフの選手は良し悪しあるけど、守備意識が高い選手は限られている。だからサイドバックは広いスペースをひとりで守る局面が多く、フィジカルに長けた圭介のような選手には合っているのかなと。
――MLSのスタジアムの雰囲気はどうですか?
黒川 スタジアムによって異なりますが、自分たちのスタジアムは観客席も近くすごく雰囲気が良いです。ただ試合によってはお客さんが少ない試合もあって...。ここ数年、低迷している影響もあるのかなと思います。
山根 やっぱりエンターテインメントの国というか、盛り上げ方は上手いけど、お客さんの数は順位に直結する感じだよね(山根の所属するロサンゼルス・ギャラクシーとロサンゼルスFC(LAFC)の23年7月のダービーには歴代最多の8万2110人がつめかけ、今シーズンの開幕戦、リオネル・メッシ、ルイス・スアレスらを擁するインテル・マイアミとソン・フンミン、ウーゴ・ロリスらを擁するLAFCのゲームはリーグ歴代2位の7万5673人が来場)。俺らも今季苦戦しているので難しい雰囲気です(苦笑)。
あと、ギャラクシーは、CONCAFチャンピオンズカップ(北中米のナンバーワンチームを決める大会。アジアで言うACL)にも出場していてメキシコのチームとも対戦するけど、メキシコの人たちは本当に熱い。LAにもメキシコの人は多く住んでいて、俺らのホームなのにアウェーのような空気になっちゃう時も(苦笑)。
黒川 ギャラクシーってアウェーの試合のサポーターってどんな感じですか?
山根 一角にいる感じだよね。アメリカは広大だからサポーターの方もアウェーにはなかなか来られないのが現実だと思う。
黒川 そうですよね、そこもJリーグと異なるところですよね。でもオースティンのスタジアムなどは雰囲気がありました。
山根 今シーズンはLAFCとの試合はある?(MLSは東西のカンファレンスに分かれて戦うが、交流戦のようにカンファレンスの壁を越えた対戦も行なわれる)
黒川 多分僕らのホームでの試合だったと思います。
山根 俺らギャラクシーとはダービーだからっていうのもあるけど、LAFCのサポーターがMLSで一番熱狂的なんじゃないかな。盛り上がりすぎると、モノが飛んできたりもするから(苦笑)。あとアトランタも人が入っていて良いスタジアムと聞くよね。
黒川 アトランタはめちゃくちゃ良いスタジアムでした。お客さんの熱も高かったです。ただ、ワールドカップ仕様で人工芝の上に天然芝を乗せている形で、当時は滑りやすかったりピッチ状況が少し難しい面がありました。でも、どのスタジアムも僕にとっては新鮮で、やっぱり楽しいです。
山根 どこも設備が整っていて、綺麗だよね。それにピッチの脇にレストランやテーブル席があったり、ゴール裏でバーベキューをやっている人がいたり、試合入場の際にはお客さんがいるラウンジの前を通ったり、楽しめる仕掛けもかなり多くて、ああいうのは良いよね。
――国内でも時差があるなど移動は大変そうですが、そのあたりはどうでしょうか?
黒川 移動は基本、チャーター機で、飛行機の横までバスで行って乗り込むだけなので、ノーストレスです。非常に恵まれています。
山根 ギャラクシーは西海岸でも一番左側で、所属するウエスタン・カンファレンス内でも、東のほうまで移動しなくてはいけない。逆に(黒川所属のD.C.ユナイテッドらがいる)イースタン・カンファレンスは、比較的、クラブが固まっている印象があるかな。アメリカの人口もイーストのほうが多いはず。逆に国を半分に割った際の真ん中あたりは人口が少ないから、ギャラクシーは移動で苦労している面も。
黒川 僕は今のところフライトは1時間から1時間半が基本で、長くても3、4時間です。空港に着いてからはバス移動ですが、Jリーグでは飛行機に乗るまでに待ち時間があったりもしたので、そこはすごく楽ですね。
山根 それはめちゃくちゃ良いよね。
――選手ファーストと言いますか。
黒川 MLSではどのチームもそうなんだと思います。
山根 そうだね、コロナ禍でそういう形に変わったとは言っていたけど、そういう面では選手として楽をさせてもらっているよね。
――気候はどうでしょう?
山根 自分の場合は気候の変化に苦しんだ部分はありました。それこそロサンゼルスって年間通じて過ごしやすい気候で、住むには素晴らしい場所なんです。でもその涼しい場所から暑いテキサスや、標高の高いコロラドなどに行くと、身体が慣れていなくて難しい部分があって。移動してすぐ試合というケースも少なくないので。一方でD.C.は夏、暑くなると聞いているので、逆に普段から身体を慣らすという面では良いのかもしれない。
黒川 気候の話とは少し異なりますが、D.C.ってご存じの通りアメリカの首都で、街もすごく綺麗なんです。ただ、練習場は離れた場所、それこそ繁華街から車で1時間ほどの場所にあり、ホームスタジアムにも自分の車で行きますが、渋滞が起こりやすい。なのでスタジアムには1時間半ぐらいかかる形で、それは少し大変な部分かもしれません。
――先日はメッシらが所属するマイアミとも戦った黒川選手ですが、対戦したなかで印象に残った選手はいましたか?
黒川 いっぱいいましたが、アトランタの(ミゲル・)アルミロン(今回のW杯にもパラグアイ代表の10番として出場)は改めて良い選手だなと思いましたね。思っていた以上にスピードもあって印象に残っています。
山根 メッシはどうだった?
黒川 うーん、なんて言ったら良いか難しく、試合によっても異なるのでしょうが、運動量は多くないという印象ではありました。
山根 めちゃくちゃ上手いし、俺もマッチアップした時に驚かされるプレーもあったけど、真ん中にどんといる感じだよね。
黒川 そうですね、あまり動かず、でも、タイミングを見つけてボールを引き出して、技術力は高くてやっぱり巧かったですね。
山根 なるほどね、そのマイアミは昨年の王者だけど、個人的には今年はLAFCも強いと思う。うちはワールドカップ明けの一発目にそのLAFCとのダービーがあるから頑張らなくちゃいけないけど、前線にはこっちに来て驚かされ、自分が何度もマッチアップしてきたウイングの(デニス・)ブアンガ(ガボン代表)がいるし、ソン・フンミンもいる。
黒川 前線は強力ですよね。
――ただそうした個の強い選手とのマッチアップを求めて山根選手もMLS移籍を決めたわけですよね。
山根 そうですね、自分もそういう一対一の強度、強力な相手をひとりで止め切る力などを伸ばさなきゃいけないとずっと思ってやってきたので、色々試行錯誤しながら良い経験を積めています。
黒川 僕も先ほど話したように自分の持ち味を出して、より力を養いたいと考えていますが、今のチームは筋トレの時間が、練習前、練習後、試合前日など非常に長くて、そういう面でも少しずつ、異なる世界を目にすることができ、成長できていると感じます。
――海外生活で一番困ったことはなんでしょう?
黒川 思った通りにいかないことが多かったです。2度、3度と念を押さないとやってもらえないこともあって。例えばアパートの契約も、この日時に契約をするって言っていたのに不在だったり、日本では考えられないことが当たり前のように起こるので、割り切る大切さも学びました。
山根 それは分かるな。俺は最初の頃、公共料金の手続きに行って、説明を理解し切れずに担当の人に怒られて、あれはショックだったな(笑)。
黒川 最初は本当、難しいですよね。
――では改めて、今季のMLSには歴代最多の8人の日本人がプレーします。ワールドカップを経てMLSの注目度も高まるかもしれませんが、このリーグでプレーする意義はいかがでしょうか?
山根 一番良いのは、自分たちの誰かが日本代表に入ること。そうすることで、代表スタッフの人にもよりMLSを見てもらえると思いますし、若い選手にもJリーグを大事にしてもらいながらMLSへのルートが開かれるはずです。また今後は、ドラフトで入る選手やアカデミーから上がってくる選手も増え、環境も変わるかもしれません。現にアカデミーには日本人選手がいるという話を結構聞くようになっています。
黒川 そうですね、代表を目指すことは大事ですし、自分たちがどれだけ活躍できるかが大切だと思います。正直自分もここに来るまでMLSのことを深く理解できていなかったですが、日本人にとって良い選択肢になるリーグだと、僕らがプレーを通して伝えることができれば、良いのかなと思います。JリーグにはJリーグの素晴らしさがありつつ、実際、MLSはJリーグとは別物で、日本人の良さである技術面、戦術面を活かしつつ、選手としての能力をより引き上げられる場所だと思います。
山根 自分はMLSがヨーロッパのステップアップリーグに比べ、劣っているとは思いません。逆にMLSで試合に出られなかった選手が、ヨーロッパに行けば結果を残す場合もあります。例えば(ジェルダン・)シャキリは、シカゴでそこまで活躍できなかったですが、母国に戻った後、バーゼルではめちゃくちゃ結果を残している。そういうケースも実際あるので、MLSの見られ方も変えていければ良いですね。
黒川 ヨーロッパから来ても活躍できない選手もいますもんね。
山根 そうだね、そんなに簡単なリーグではないと思う。もしかしたら「MLSって、アメリカのサッカーって、あんまり人気ないんでしょ」っていうイメージがどうしてもあるかもしれないけど、そういう印象はせっかくここでプレーしているのだから変えていければなと。ただ、今上位チームにいる日本人は高丘(陽平/バンクーバー・ホワイトキャップス)だけだから俺らも頑張らないとね(笑)。
黒川 そうですね、ワールドカップの中断明けから、また頑張っていきたいです。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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