予約していたミシュラン一つ星の鮨店から、来店1時間前に電話がかかってた。
「カード会社が破産したため、本日は現金のみでお願いします」
札幌すすきのでの出来事だとXに投稿した客は「そんなことある?」と困惑を隠せなかった。幸い、財布には現金があった。
「はい、現金で払いました。ちょうど持ちあわせていてよかったです」
後日、リプライで無事に払えたことも明かしている。
面白いのはここからだ。「カード会社が破産したなら大ニュースになっているはず」と別のユーザーに突っ込まれた投稿者は、一度は「ですよねー」と流した。ところが直後、本当に大型倒産が起きていたことに気付く。
それは飲食店向けにクレジットカード売上の早期決済代行サービスを手がける「全東信」(大阪市)が7月6日、大阪地裁に自己破産を申請し、同日、破産手続き開始決定を受けたというニュースだった。
帝国データバンクによれば、負債総額は2025年3月期末時点で約1259億2900万円にのぼり、今年最大となった。
破産したのは、飲食店の売上を先に立て替えて入金する決済代行会社だ。この鮨店が実際に全東信と契約していたかどうかは確認できていないが、時期が重なることから、今回の一件も全東信破産の影響ではないかと思われる。
全東信のサービスは、加盟店にとって単なる決済端末ではない。仕入れ、人件費、家賃を日々回すための現金化装置だった。この仕組みが止まれば、入るはずの売上が予定日に入ってこないという事態が起きる。
「組織犯罪処罰法違反」逮捕事件で端末使用の即時停止を呼びかけ
他人事では済まされないのは、夜の店に通う男たちだ。キャバクラやガールズバーなど、通常のカード加盟店審査でハードルが高いとされる業態にも影響が及ぶのではないか、との見方が出ている。夜の店で全東信の名前を見かけたというSNS投稿は複数あり、決済手段の空白を心配する声が広がった。
不穏な「前触れ」はあった。2024年1月、本来なら審査が通らない飲食店と他人名義で加盟店契約を結んだとして、社員らが逮捕された事件が起きた。その後、全東信自体も組織犯罪処罰法違反の疑いで書類送検され、信用不安が表面化していた。飲食業界団体の食団連は飲食店経営者に対し、全東信の端末使用の即時停止、未入金の売上代金の集計、代替決済手段の手配を呼びかけている。
飲食店は利益率より資金繰りが命綱の商売であり、数日から数週間の入金遅れが経営に響きかねない。行きつけの店が急に「本日は現金のみ」と言い出しても、それは店の落ち度ではなく、決済網の裏側で起きた1259億円という巨大倒産のトバッチリかもしれない。
財布に現金を入れなくなって久しい人ほど、しばらくは多めの現金を持ち歩いておいた方がいいかもしれない。
(ケン高田)

