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39歳のメッシを突き動かす原動力――父の入院、1000ゴール、そして「最後のW杯ではない」可能性【現地発】

39歳のメッシを突き動かす原動力――父の入院、1000ゴール、そして「最後のW杯ではない」可能性【現地発】


 リオネル・メッシが止まらない。アルゼンチン代表のエースとして、自身6度目のワールドカップでも驚異的な活躍を続けている。初戦のアルジェリア戦でいきなりハットトリックを決めた後、オーストリア戦で2ゴール、ヨルダン戦では途中出場ながらもゴールを決め、さらにラウンド・オブ32のカーボベルデ戦でもネットを揺らしてここまで7ゴールを記録している。
 
 6月24日に、39歳の誕生日を迎えた。この年齢になれば、ほとんどのスター選手はすでにソファに座って試合を観戦しているか、最後の稼ぎを求めてアラブのリーグでプレーしているものだ。しかし、メッシは違う。走り、創造し、ゴールを決め、アルゼンチンを牽引している。いったい、この男の中には何があるのだろうか?
 
 メッシはほぼすべてを勝ち取っている。W杯、コパ・アメリカ、チャンピオンズリーグ、バロンドール。すべてを手にしながらも、いまだ彼を動かし続けるその原動力とは、いったい何なのだろうか?
 
 今大会の目を見張る活躍の背後には、様々なエピソード、感情、そして未来に向けた夢がある。サッカーの話だけではない。
 
 現在のメッシにとって最大の、そして最も人間的なモチベーションとなっているのが、父ホルヘ・メッシの存在だ。大会開幕後しばらく、メッシの心はピッチだけには向いていなかった。父親が体調を崩し、アルゼンチンの病院に入院していたからである。
 
 病状は厳重に伏せられていたが、単なる検査入院ではなかったことは想像に難くない。もし軽症であれば、幼い頃から息子を支え続け、キャリアのすべてをマネジメントしてきたホルヘが、この大会でメッシの傍を離れることはなかっただろう。
 
 アルジェリア戦でハットトリックを達成した後、メッシがピッチ上で涙を流したのも、その心境と無関係ではないはずだ。彼の心は重かった。
 
 しかし6月23日、状況は一変する。ホルヘが退院し、ロサリオの自宅に戻ったという知らせが届いたのだ。治療は続いているものの、容体は大きく改善したようだ。その日以降、メッシはまるで背負っていた荷物を下ろしたかのように、晴れやかな表情でプレーしている。今は父のためにプレーしたい――そんな思いが、大きな原動力になっているように映る。
 
 もう1つのモチベーションが、歴史を塗り替えるという壮大な目標だ。彼の視線の先には、キャリア通算1000ゴールという金字塔がある。現在の公式戦通算得点は914。まだ道のりは残されているものの、本気で大台到達を狙っている。アルゼンチン代表のリオネル・スカローニ監督も、メッシがその大台を目ざしていることを公言している。
 
 ちなみに今大会も、メッシはワールドカップの記録を次々と塗り替えている。通算最多ゴール数(20)、連続ゴール試合数(8)、通算勝利数(19)、通算出場時間(2644分)。ライバルのクリスティアーノ・ロナウドを、数々の主要記録で上回っている。
 
 両者の違いは、数字だけではない。ポルトガル代表では、チームがロナウドを活かすことが1つの前提となる。得点できるよう彼にパスを供給しなければならない。一方、アルゼンチンではその逆だ。若い選手を活かし、チームを動かし、難しいボールを引き受けるのはメッシの役割である。
 
 今大会のメッシには、自己中心的な振る舞いは見られない。選手としても、そして一人の人間としても、かつてない成熟ぶりを示している。
 
 たとえばヨルダン戦の前には、自らスカローニ監督のもとを訪れ、「今日はベンチからスタートしたい。休息が必要だ」と申し出たという。そんな申し出は、この20年間で一度もなかった。そして途中出場すると、美しいFKを直接決めた。エゴから解放され、ただ純粋にチームのためにプレーする姿勢が、現在の充実ぶりに繋がっているのではないだろうか。
 
 メッシがこの境地に辿り着いた背景には、「明日」を見据えていることもある。
 
 メッシはインテル・マイアミと2028年末まで契約を結んでいる。つまり、アメリカでの生活は一時的なものではない。少なくとも28年までは、アメリカサッカーの発展に貢献したいという思いがある。
 
 さらに契約には、現役引退後にインテル・マイアミの共同オーナーとなることができるオプションも盛り込まれている。現役引退後もクラブ経営に携わるという点では、デイビッド・ベッカムの歩みと重なる。
 
 つまり、このワールドカップで活躍することは、自身が今後も関わっていくMLS全体の価値を高めることにも繋がるのだ。
 
 情報筋によれば、メッシは引退後のプランについても、おおよその方向性を固めているという。その詳細は明らかになっていないが、マイアミで家族と穏やかな生活を送りながらクラブ運営に携わる道、あるいは2021年に別れを告げたバルセロナへ何らかの役職で復帰する可能性も考えられる。
 
 また少年時代を過ごしたニューウェルス・オールドボーイズで、現役生活を締め括るというロマンチックな道もある。しかし治安面を考えれば、その実現は容易ではないだろう。
 
 それでも、39歳になった今なお、メッシのポケットには目標と夢が詰まっている。だからこそ、これほどまでに強くあり続けられるのだ。
 
 父親の回復という朗報が心を軽くし、1000ゴールという壮大な目標がメッシを突き動かす。大会前には「代表を引退すべきだ」という声もあったが、メッシはピッチ上で、その見方が誤りだったことを圧倒的なパフォーマンスで証明している。
 
 そしてメッシは、当然ながらワールドカップ連覇という偉業も見据えている。
 
 誰もが今回を最後のワールドカップだと思っているかもしれない。しかし、彼をよく知る人物から聞いた話を最後に紹介しよう。
 
――今大会がメッシにとって最後のワールドカップではないかもしれない。
 
※編集部注=ラウンド16のエジプト戦でメッシは1得点。アルゼンチンは3-2で勝利し、ベスト8に進出した。

取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
 
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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