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“健さん”にはやっぱり着流しと長ドスがよく似合う 高倉健を銀幕のスターに押し上げた任侠映画「昭和残侠伝」の魅力

“健さん”にはやっぱり着流しと長ドスがよく似合う 高倉健を銀幕のスターに押し上げた任侠映画「昭和残侠伝」の魅力

高倉健主演「昭和残侠伝」シリーズの5作がBS12で放送
高倉健主演「昭和残侠伝」シリーズの5作がBS12で放送 / (C)東映

昭和の映画最盛期に一時代を築いた任侠シリーズ。鶴田浩二、藤純子、梅宮辰夫など数々の任侠スターが生まれたが、中でも絶大な人気を博したのが高倉健さんだ。BS12 トゥエルビ(BS222ch※全国無料)では、7月に高倉健主演の人気シリーズ「昭和残侠伝」から選りすぐりの5作品を放送。7月21日(火)には、シリーズ屈指の傑作「昭和残侠伝 唐獅子仁義」(夜7:00-8:50)が放送される。人気作に高倉がハマったのではない。高倉が演じたからこそ「昭和残侠伝」は人気シリーズになった。そんな任侠映画における高倉健の魅力を振り返る。

■芽の出ない日々から、任侠映画で一気にスターへ

昭和を代表する銀幕スターの一人、高倉健。邦画史に残る名優だが、デビューから数年はあまり評価を得てはいなかった。スカウトで東映に入社した高倉は、もともと俳優志望ではなく、芝居の経験もない。実直で寡黙な性格が、そのまま不器用で地味な演技として出てしまっていたからだ。東映も美空ひばりと組ませたり、主演作をいくつも撮影したが、なかなか飛躍にはつながらない。そんな折、転機となったのが「人生劇場 飛車角」(1963)への出演だ。

「人生劇場 飛車角」は東映任侠映画の出発点とも言われ、それまで時代劇やアクション映画が中心だった東映映画の中に「任侠映画は観客を呼べる」という流れを作ったヒット作だ。高倉は同作を足掛かりに、「日本侠客伝」(1964)、「網走番外地」(1965)と任侠映画で主役を張り、「昭和残侠伝」(1965)で一気に人気が爆発。以降は鶴田浩二と東映の二枚看板としてスター街道を駆け上がった。
「昭和残侠伝 死んで貰います」
「昭和残侠伝 死んで貰います」 / (C)東映


■人間・高倉健の魅力が凝縮された「昭和残侠伝」シリーズ

抗争劇メインに描かれる現代の極道映画やアウトロー作品と違い、昭和の任侠映画は、義理人情や筋を通すことを重んじる任侠道の美学を描いた作品だ。中でも「昭和残侠伝」シリーズは、その様式美を完成させた代表作として知られる。

シリーズ共通の物語として、主人公の渡世人が町で恩人や兄弟分との縁を結び、私利私欲で筋を踏みにじる悪役と対峙するというのが基本。主人公はすぐに暴力へ走るのではなく、義理や約束を守るため理不尽を耐え抜き、すべての手段が尽きたとき、初めて敵へ立ち向かう。そして決着をつけても誇ることなく、静かに去っていく。

ストーリーの面白さというより、「耐え、筋を通し、去る」という主人公の生き様そのものがシリーズ最大の魅力となっている。

高倉の不器用で寡黙な演技は、そんな主人公像にぴったりだった。高倉が演じる渡世人は、暴力を誇らず、義理と人情を本気で貫き、言葉よりも背中で生き様を語る男。まるで映画の役柄というより、実直で知られる高倉自身の人柄を映しているようだ。

また、“悲しさ”を背負っている高倉の独特な雰囲気も、男女を問わず観客を惹きつけた。例えば鶴田浩二や勝新太郎が貫禄を備えた“理想の親分”を感じさせるのに対し、高倉には常に哀愁が漂い、どこか孤独な影がある。その悲しみを宿した佇まいが、行き場のない宿命を背負った渡世人という役柄と見事に重なり、唯一無二の魅力を生み出している。
「昭和残侠伝 血染の唐獅子」
「昭和残侠伝 血染の唐獅子」 / (C)東映

■健さんにはやっぱり長ドスがよく似合う、ラストのカタルシス

“健さん”という愛称もすっかり定着し、映画を見に行くというより、「健さんを見に行く」というほどだった「昭和残侠伝」シリーズ。物語のクライマックスに待つのは、耐えて耐えて耐え忍んだあとにやって来る、悪役一家への殴り込みだ。

長ドスを片手にした高倉の大立ち回りは、カタルシスが爆発する最大の見せ場になる。時代劇の華麗な剣戟とは真逆。斬って斬られて、血にまみれながらの泥臭い立ち回りだが、それこそが任侠映画の醍醐味だ。健さんにはやっぱり着流しと長ドスがよく似合う。

「昭和残侠伝 唐獅子仁義」(1969)は、そんな高倉の魅力はもちろん、脇を固める豪華俳優陣も見どころだ。高倉と対峙する名うての渡世人を演じる池部良、気品あふれる芸者を演じる藤純子。黒澤明映画の常連だった志村喬も、懐の深い大親分として存在感を放つ。また、待田京介が演じる飄々とした渡世人・イタチの藤吉も印象的だ。シリアスな物語の中、肩の力を抜いてくれる存在だ。

彼ら個性派俳優が義理や人情、欲望と思惑を抱えながら物語を彩り、高倉演じる主人公・花田秀次郎の生き様をより際立たせる。高倉だけでなく、一人一人の俳優の芝居に目を向けると、一世を風靡した東映任侠映画ならではの重厚な味わいも感じられるだろう。
「昭和残侠伝 唐獅子仁義」
「昭和残侠伝 唐獅子仁義」 / (C)東映


■今なお色褪せない漢・高倉健がそこにいる

一時代を築いた任侠映画だが、時代は移り、今はすっかり絶滅ジャンルとなってしまった。起伏に富んだストーリーや作り込まれた設定で盛り上げる現代の作品とは、感覚がまるで違うことは確かだ。しかし、その代わりに今の映画にはない様式美で楽しませてくれる。何より、沈黙と背中で語る高倉健の魅力は今なお色褪せない。

高倉について、若い世代には任侠スターというより、「鉄道員(ぽっぽや)」(1999)、「ホタル」(2001)、「あなたへ」(2012)で見せた、寡黙で不器用ながら誠実な男という印象が強いかもしれない。しかし、その人物像の原点は東映時代の任侠映画にある。石原裕次郎や渡哲也のようにテレビドラマでお茶の間の人気者になる道を選ばず、あくまで映画俳優としてスクリーンに立ち続けたことも、“健さん”が唯一無二の存在であり続けた理由の一つだろう。

BS12 トゥエルビでは、7月8日(水)「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」、7月15日(水)「昭和残侠伝 血染の唐獅子」、21日(火)「昭和残侠伝 唐獅子仁義」、28日(火)「昭和残侠伝 死んで貰います」、29日(水)「昭和残侠伝 吼えろ唐獅子」を夜7時から放送。

男の理想像と呼ばれ、「健さんを見に行く」と言われるほどの熱狂を生んだ高倉健。この機会に“健さん”というスターが生まれた原点を見てほしい。

◆文=鈴木康道

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