6月26日、エンジェルスはペリー・ミナシアンGMを解任した。就任1年目の2021年から昨季まで5年連続負け越し、今季もここまでアメリカン・リーグ西地区最下位。在任中の成績は392勝500敗と、長く続く低迷に歯止めをかけるどころか、余計に加速させてしまった感すらある。
改めて、ミナシアンGM政権の「迷走と混沌の5年半」を振り返ってみよう。
(前編から続く)
▼ファンも選手も呆れたレンドーンの問題発言(2024年)
「185日間で162試合なんて多すぎる。もっとシーズンを短くするべきだ」
同じように考えるメジャーリーガーは多くいるに違いない。だが、莫大な金額を手にしながら故障を理由にほとんど試合に出ていない選手の口から出ると、一気に説得力がなくなってしまう。
発言の主はアンソニー・レンドーン。ナショナルズ時代は強打の三塁手として鳴らし、7年2億4500万ドルでエンジェルスにFA移籍した20年も好成績を残したレンドーンだが、翌年以降は故障に見舞われ続けた。
21年は左膝や左ハムストリングを痛め、22年は右手首の手術で6月にシーズンを終え、23年は腓骨骨折。出場試合数はそれぞれ58、47、43と、全体の3分の1しか稼働していなかった。しかも、故障の回復状況などについて記者から求められたコメントを拒むなど、責任感の欠如もたびたび指摘されていた。 そんな中でのこの発言にはもちろん批判が殺到。元チームメイトのジョナサン・パペルボンは「あいつはベースボールが嫌いなんだ。シーズンの半分しかプレーしたくないならサラリーも半分返せ」と憤りを隠さなかった。
レンドーンは24年も出場57試合にとどまり、昨季は全休。オフには残り契約分を分割払いにすることで球団と合意し、エンジェルスでのキャリアに事実上のピリオドを打った。
ミナシアンGMの名誉のために記しておくと、レンドーンと契約したのは前任のビリー・エプラーGM。この件に関してミナシアンGMが批判を受ける言われはない。この不良債権を引き継いだことがチーム作りの上で大きな支障になったことは疑いようもなく、その点ではむしろ被害者であるとすら言える。▼菊池の「エアコン発言」が浮き彫りにした球団設備の不備(2025年)
昨年9月24日、シーズン最終登板を終えた菊池雄星が試合後の会見で、本拠地エンジェル・スタジアムのウェイトルームのエアコンが1年間ずっと故障したままだったこと、球団に修理を依頼したにもかかわらず対応がなかったことを明かした。
この件を『ジ・アスレティック』のサム・ブラム記者がミナシアンGMにぶつけたところ、「設備は機能している」と菊池の発言を真っ向から否定。「球団設備の不備について、OBから同じ声が出ている」と言われても、頑なに認めようとしなかった。その一方で、球団が空調技術者の求人広告を出していたことが発覚。菊池の発言を裏付ける形となり、ミナシアンGMは赤っ恥をかいた。
ちなみにエンジェルスでは、21年に傘下のマイナーリーガーが劣悪な住居環境などを告発。今年に入ってからも、ネズミ駆除のためエンジェル・スタジアム内の一部売店が地元当局からの求めで閉鎖を余儀なくされるなど、設備面での問題がたびたび指摘されている。「エアコン問題」も、そうした文脈に当てはめてみればより正確に実態を把握できるはずだ。▼安物買いの銭失い――失敗続きのFA補強
エンジェルスでは、アート・モレノ・オーナーの意向がチーム作りに強く反映されていると言われ、その意味ではすべての問題をミナシアンGMの責任とするのは無理がある。至宝マイク・トラウト(12年4億2650万ドル)に加え、前述のレンドーン(7年2億4500万ドル)の超大型契約を抱える中、補強に縛りがあったのも事実だ。
ただ、それを差し引いても、ミナシアンGMの補強センスは水準以下だったと言わざるを得ない。
彼の場合、そこそこ実績はあるが故障持ちか、すでに全盛期を過ぎた選手と「それなりの額」の契約を交わして失敗するケースがあまりにも多い。
過去3年のFA補強リストを振り返ると、3年以上の契約を与えたのは菊池雄星(3年6300万ドル)、ロバート・スティーブンソン(3年3300万ドル)だけで、それ以外はすべて1~2年の短期契約。3年間で総額1億1335.5万ドルを投じ、見返りに得たWAR(Baseball Reference版)はわずか0.9。まさに「安物買いの銭失い」だ。一方、他球団で埋もれていた才能を発掘して成功させた例はほぼ皆無。大物FA選手を果敢に獲得しようとした形跡もない。トレードでも誤算があった。22年のデッドライン・トレードで外野手のブランドン・マーシュをフィリーズに放出し、当時トップ・プロスペクトだった捕手のローガン・オホッピーを獲得。オホッピ―が目論み通り正捕手にはなったものの、守備難や故障でここ2年低迷が続くのに対し、マーシュは安定して成績を残し、今季はファン投票でオールスターに選出されるまでになった。移籍後のWAR(Fangraphs版)を比べると、マーシュの11.3に対してオホッピ―は1.3と大差がついている。
このようにして考えると、ミナシアンGMの解任はむしろ「遅きに失した」と思わないでもない。楽しみな若手も数人出てきたとはいえ、ファーム組織はまだ貧弱な状況。メジャーのロースターを見ても、数年後に期待が持てるようなメンバーとは言い難い。熱狂と興奮に包まれるドジャー・スタジアムを傍目に、アナハイムのファンは今後もしばらく我慢の日々を強いられそうだ。
文●久保田市郎
1976年、東京都出身。2002年にSLUGGER編集部に加入、編集長を務めた後、26年にフリー・エージェントとなる。日本の雑誌メディアで最初にOPSやDRSを紹介した一人。

