
お笑いトリオ・ハナコの岡部大が、映画『死神バーバー』に出演。3037歳という気の遠くなるような年齢でありながら、どこか人間臭い“中間管理職”的な死神・クロダをユーモラスかつ哀愁たっぷりに演じている。今回は、公式コメントの「どこでも板挟みは大変」という言葉に隠された真意や、本作でのユニークな役作りの裏話、巷で囁かれる「コント師は演技が上手い」説に対する自身の見解を直撃。さらには、プライベートでの父親としての顔や、主演の桜井日奈子・日穏らキャスト陣との過酷(!?)な撮影秘話まで、WEBザテレビジョンがたっぷりと話を伺った。
■身近なマネージャーや先輩に見た“中間管理職”の苦悩
ーー公式コメントで「どこでも板挟みは大変だと思った」とおっしゃっていました。お笑いの世界でも“板挟みが大変”ということはあるものでしょうか。
岡部:お笑いの世界も大御所MCの方がいますし、まもなく我々も中間管理職的な年齢になると思うんです。でも、『有吉の壁』とか一緒に連れてる先輩方を見てて、10年上の先輩方がいまだに池に飛び込んだり、熱いのにかかったり、寒いところにいたりとかして。「あ、やっぱり10年間はまだ変わらないのかも」「ずっと体を張り続けるんだな」と考えたりします。アラフォーに突入してる中、アラフィフまではやっぱみんな大変なんだなっていうのを、まじまじと目の当たりにしています。
あとは最近、身近なマネージャーさんたちがだんだん出世していって、中間管理職的なポジションになったときに、みんな急に「管理職は残業代つかなくなって給料減った」とか、リアルな話を聞いたりとかして。部下が働きすぎたら怒られるから、休ませるために自分が働かなきゃいけないとかそういう話もありますね。自分が知らないサラリーマンとしての悩みみたいなのを見てて、「やっぱり真ん中の人って結構大変なんだな」って思いました。
■監督の指示で「ずっと揺れていた」!? 現場で生まれた岡部流の死神の役作りとダンスシーン

ーーその“板挟み感”を役として表現しないといけないのはさらに難しいですね。死神のクロダを演じるにあたって、大変だったことや工夫したこと、印象に残っている役作りのエピソードがあれば教えてください。
岡部:最初に現場に入る前は「死神ってどういうものだろう?」と思いながらも、普通に人間界の中にいる気のいい兄貴的な人かなと思って現場に入ったんです。1回目の段取り打ち合わせで、監督から「いや、ちょっと死神感が足りないよね。もう少し“死神感”出していきたいね」っていう話をされて。その結果、「じゃ、ずっと揺れていよう」ってなったんです。
ーーリアルにはいなさそうな、“ちょっと変わった人”みたいな表現でしょうか(笑)
岡部:そうですね(笑)。「死神だから、ずっと揺れてみよう」って、その日1日撮り切ったんです。後日に先輩の上級死神たちに会うシーンの撮影があったんですね。僕は相変わらずずっと「死神って揺れるもんだ」と思ってたんで、揺れてたんです。そしたら、誰一人として上級死神の方たちは揺れてなくて(笑)。ピタッと座ってて、皆さん。僕はもう前回丸1日ずっと揺れてたから、それを止めることはできずに揺れ続けました。
ーーきっと役者さんそれぞれの死神らしさみたいな表現があったんですね。それが、岡部さん(クロダ)は「揺れ」だったと。
岡部:みなさんも独自の表現があったんですかね…!? それか僕にだけ「揺れろ」っていう指示を監督が出していたのか分かんないんですけど(笑)。新人死神のサクマ(日穏)もちょいちょいダンス的な面白いアクションが入ってて。「あ、やっぱ死神ってそういうもんなんだな」って思ってたんです。それまでの現場では、サクマとしか会ってなかったので、「上級死神ってなると、普通にピタッとなれるんだ?」ってびっくりしましたね。
ーー今回、作品の中でサクマ(日穏)さんとの説教タイムが見どころとのことですが、日穏さんとは現場でどのようなやりとりがあったのでしょうか?」
岡部:監督から「ちょっと踊りながら説教してみようよ」って演出、提案がありまして。ダンスしながらってなったときに、シンクロダンスみたいなパターンとか、いろいろなダンスを監督と日穏くんと一緒にちょっと探っていく中で……。一番「向き合ってる感」のあるようなフォークダンスのような形になったんです。
ーー確かにフォークダンスは「対になる感じ」がありますね。
岡部:そうですね……僕が「チークダンスどうですか?」って提案して、フォークダンスなのかチークダンスなのかという形になりました。やっぱり2人だけの空間のような表現が、説教タイムに合うんじゃないかなと思って。

ーー日穏さんはSTARGLOWのメンバーとして、ダンスのプロじゃないですか。岡部さんはダンスをやられたことは?
岡部:最近、あの『新しいカギ』(フジテレビ系)っていう番組で、高校生とダンスする機会があって、でもまだ2回しかやってないんです。でもやっぱり、変にダンスをしようとしてしまうとスキルの差が見てられなくなるなと思って。僕も全然踊れないですし。トンチみたいな感じでした(笑)。
ーー本当に不思議な現場の流れで出来上がったシーンだったんですね。
岡部:そうですね。全然、一切台本には「フォークダンスを踊る」とも「踊りながら」とかもなかったと思います。
■“コント師”の演技力のヒミツは…「不自然さをいかに自然に見せるか」
ーー岡部さんは俳優のお仕事ですごく評価されていますが、「コント芸人は芝居上手」という話もありますね。コントの芝居と、お仕事としての芝居では気持ちの作り方は違ったりするのでしょうか。
岡部:コントは、4〜5分とか、短いと1〜2分の中で、いろいろな感情が出てくる“ジェットコースター”的な芝居だと思うんです。「そんなこと急に起きないだろう」「そんなに急に嫌な気持ちになんないだろう」みたいな、日常にはない不自然な感情の動きになると思うんですけど、でもその不自然さが笑いになったりするんです。ただその不自然さが本当に不自然に見えてしまうと、見てる方も「いや、そんな展開になんないだろう」とやっぱり引っかかる。コントは「不自然さをいかに自然に見せるか」がすごい重要なので、お芝居の力がついていくのかもしれません。いや、でも、何でコント師の人たちこんなにお芝居上手なんだろうって、不思議に思っていますよ。
ーーお客さんの有り無しも関係しているのかなと思うのですが、そこまで意識はしていない感じですか?
岡部:コントのときはやっぱりお客さんを意識しながらやってるので、目の前で喋って芝居しつつも、意識の先はやっぱお客さんなんです。でもドラマや映画は、目の前の役者さんとのやり取りに集中、みたいな感じでやっていますね。
ーー岡部さんにとってハナコの芸人のお仕事と、個人の俳優のお仕事というのは、どういうものですか?
岡部:前のコンビのときは元々漫才とコントどっちもやっていたんです。でも役に入ってやってるときのほうが楽しい、コントがいいと思って解散して今のハナコを組んだので、何かを演じる、みたいなのがすごい自分の性に合って楽しいんですね。そういう意味でこういう、コント以外でも「演じるお仕事」をいただけるのはすごい嬉しいし、やりがいがあります。純粋に楽しいですね。
■人生の最後に会いたい人は「妻」――第2子誕生で実感する家族への感謝

ーー作品のことに戻りますが、今作は「やり残したこと、やりきれなかった思いを見つめ直す」というテーマがあると思います。岡部さんが「これやらずに死ねるか」みたいなことはなんでしょうか?
岡部:食べることが好きなので、まだまだ食べたいものもいっぱいありますね。秋田出身なので、秋田のおいしいものとかよく聞かれるんですけど、大学で進学して上京したので、高校までの秋田しか自分の中にないんですよね。
ーー少年時代の思い出で止まっている感じですね。
岡部:そうなんです。秋田にいた頃はまだお酒も飲めなかったし、秋田の地元のうまいもんを全然知らなかったんです。2024年に秋田の観光大使させていただくことになったんですけれど、でもやっぱりまだまだ知らない秋田が多すぎて、まずは地元秋田を食べ尽くさないといけないと思っています。
ーー素敵です。「あの国の話題のアレを食べたい」とかではなく、まずは地元なんですね。
岡部:そうですね。まずは地元! でも確かに、海外旅行もまだ全然行けたことなくて。お仕事で1回、プライベートで2回しかなくて。テレビに出られるようになってすぐコロナ禍で、ロケが激減した時期だったんで。世界のうまいもんも食いたいっすね。インドでカレーも食べたいし、イタリアでピザも食べたいし、アメリカでハンバーガーも食いたいです。食べ尽くしたいですね。
ーー作中に出てくる「冥供愛富(メイクアップ)」は、最後の1日をいただく場所です。もしお客さんとして行くとしたら、誰に会ってどんな言葉を伝えたいですか?
岡部:やっぱり妻ですね。「親にさせてもらってありがとう」っていうのは伝えたいですね。親になったことがここ最近の人生で一番の衝撃でした。子どもができて本当に色んな価値観が変わりましたし、やっぱり人が育っていく様子に心動かされて、何よりもエンタメだなと思いました。「お父さんにしてくれてありがとう」っていうのは、…もうずっと伝えるつもりではあるんですけど、改めて最後にもう1回妻に伝えたいですね。
ーー奥さまにこの記事を読んでいただけることを願います(笑)。
岡部:第2子が誕生しまして。
ーーおめでとうございます!一番手がかかるけれど一番可愛いときですね。
岡部:可愛いっすね。上の子は少しずつしゃべれるようになって、「そんな言葉遣いもできるんだ」って驚いたりしています。「あ、これ自分だな」とか「これ妻だな」とか、親の背中を見て育ってんだなっていうのを感じています。
桜井日奈子らキャストとの“過酷で温かい”撮影秘話

ーーラストに改めて映画の見どころと締めのコメントをお願いします。
岡部:人が亡くなっていく物語なので、本当に悲しく切ない場面ではあるんですけど、そんな中にある人間の温かさであったり、儚さを改めて感じられる映画です。実際にこんなバーバーがあればいいなと思うんですけど、ないからこそ改めて自分の生き方を考えるきっかけになる作品だと思います。あと、やっぱりクロダとサクマのチークダンスを楽しんでいただければ嬉しいです(笑)。
桜井(日奈子)さんとのエピソードで言うと、真夏の撮影だったので「冥供愛富(メイクアップ)」がとにかく暑かったんです。思いっきり夏の撮影だったんで、去年の7月でめちゃくちゃ暑かったんです。でも死神 だし、亡くなっている人なので、汗だくで演じるわけにもいかない。みんなでいかに涼しい場所を探して教え合うかという現場で、全員で汗をかかないように、団結しながら撮影していました(笑)。そんな「冥供愛富(メイクアップ)」のシーンにも注目してください。

