タイ国際航空の客室乗務員による麻薬密輸事件を受け、航空会社の保安体制が改めてクローズアップされることになった。この客室乗務員は6月30日に「運び屋」の依頼を受けて、複数のトートバッグに1キログラム超のヘロインを隠し入れ、オーストラリアに持ち込んだとして拘束、起訴された。
現時点で一般旅客の機内持ち込みルールが大きく変わるという話はないものの、「空港でやってはいけない行動」への関心は確実に高まっている。
その象徴的な出来事がある。先日、SNSに投稿された「荷物が重量オーバーだったため、空港で知り合った人に自分の荷物をスーツケースへ入れてもらい助かった」というものだ。これは「親切でいい話」と受け止められた一方で、「絶対にやってはいけない」と厳しい批判も集まった。
実は航空保安の世界では「善意」だから許される、という考え方は通用しない。
まず避けたいのが、知らない人の荷物を預かることだ。「少しだけ持っていて」「機内まで運んで」と頼まれても、中身を確認できない以上、トラブルに巻き込まれるリスクは否定できない。
次に、自分の預け荷物に他人の荷物を入れること。重量オーバーを解消するために、見知らぬ人同士で荷物を分け合う行為は、一見すると助け合いだが、海外の空港では「荷物は自分で詰めましたか」「他人から預かった物はありませんか」と確認されるのが一般的。そこで「あります」と答えれば、詳しい検査の対象になることがある。
そして三つ目は「お土産だから」「書類だから」と頼まれた荷物を運ぶこと。相手に悪意があるとは限らなくても、中身が分からない物を預かること自体が大きなリスクとなるからだ。仮にそれが違法行為、犯罪に結びつくようなブツだったとしたら…。
海外旅行では当たり前の鉄則「自分の荷物は自分だけが管理する」
旅行者自身ができる自衛策は何か。預けるスーツケースは、空港で利用できるラップサービス(保護フィルム包装)を利用すれば、第三者が勝手に荷物を入れたり開けたりした形跡が分かりやすくなる。機内持ち込み用のバッグやリュックも、ファスナーに小型の鍵をかけておくだけで、不意に中へ物を入れられるリスクを減らせる。
手荷物をベンチやロビーに置いたまま、席を離れることは避けたい。ほんの数分でも目を離せば、その間に何かを入れられたり、荷物をすり替えられたりする可能性はゼロではないからだ。
「荷物は常に自分の管理下に置く」
海外旅行ではこの当たり前の意識が、思わぬトラブルから身を守ることにつながる。
今回の密輸事件をきっかけに、航空会社や空港では従業員への監視や検査が強化されるかもしれない。他方、旅行者に求められる基本姿勢は、昔から変わらない。
「自分の荷物は自分だけが管理する」
旅先での親切心が思わぬトラブルにつながらぬよう、この原則だけは忘れないでおきたい。
(旅羽翼)

