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映画『ひとりたび』岡本玲インタビュー「白と黒じゃなく、グレーのグラデーションの中を生きる」

映画『ひとりたび』岡本玲インタビュー「白と黒じゃなく、グレーのグラデーションの中を生きる」

岡本玲主演、上村奈帆脚本、石橋夕帆監督の映画『ひとりたび』が、新宿K’s cinemaほか全国公開中です。

仕事に恋愛、人生に行き詰まった30代の女性が学生時代に経験した「初恋」 の記憶を頼りに、自分の人生を見つめ直す姿を描いた本作。主演は、2003年にモデルとしてキャリアをスタートさせ、 主演作『茶飲友達』(23/外山文治監督)ほか、 ドラマ・映画・CM・舞台 など多方面で活躍を広げる岡本玲さんが、主人公と同年齢の役柄を等身大で演じています。撮影の思い出や魅力についてお話を伺いました。

──本作とても楽しく拝見いたしました。みんなが抱えているような日常の悩みを描くこと、それを自然に演じることって一番難しいのでは無いかなと思います。

難しかったです。私は石橋監督の、人々の些細な揺れ動きを大切にしている所、作品の空気感が大好きだったので、自分がその雰囲気の中で演じることが出来るのかという緊張がありました。引き算のお芝居だなと思っていて、“表現する”のではなく、“滲み出る”様にする、自分との戦いでした。白と黒じゃなく、グレーのグラデーションの中を生きるということを意識して演じました。
クランクインの瞬間から監督が「私は本当にオッケーじゃないと、絶対にオッケーって言わないので」と言ってくれて、監督がオッケーと言ってくれるまで自分の中で試してみればいいんだと思いました。

──「グレーのグラデーションの中を生きる」、素敵な表現ですね。現実の人生もその様なものですよね。

言語化するのが難しい感覚ですよね。その部分を現場にいる全員で、どう共通認識をもっていくのか。撮影が始まってから数日で、「今は空気が動いてなかったね」みたいな阿吽のコミュニケーションを取れるようになりました。

──本作では、岡本さんはご自身との年齢も近い、等身大のキャラクター・美咲を演じていますね。

初めに企画書をいただいたのが5年ぐらい前なんです。なので、撮影前には、ストーリーも変わっていて、自分の年齢に近い形になっています。「ご一緒させてください」と監督にお返事した後に、上村奈帆さんが脚本で参加されることになって、監督と上村さんの間でどんどんストーリーが広がっていって、完成した台本が本当に素晴らしかったんです。上村さんの紡ぐ言葉たちがすごく可愛らしくて、行間にこめられている感情が読んでいるだけで伝わってきました。この素晴らしさを映像で表現出来るかは、演じ手次第だなと思いましたし、この台本を信じてやれば素敵なシーンになるだろうなとも思い、プレッシャーと楽しみが半々でした。

──言葉が出る“間”が本当に素敵でした。

監督が「美咲として喋りたくなるまでは、喋らなくていいですからね」と言ってくれて。本当に自分が言いたいタイミングでセリフを言うことが出来ました。見守っていてくれることがとてもありがたかったです。それでいて、キャストもスタッフも、変にノスタルジックに酔うこともなく、良いドライさで作品作りが出来たなと思います。

──完成した作品もまさに、良いドライさがあって、優しい作品だけどウェットじゃないですよね。

そうなんです!そこがすごく好きなんです。私は物語の中の過剰なウェットさが苦手で、人って感情的な部分を出来るだけ人に出したくないと思って社会で生きていると思うのですが、なぜ物語になると突然あんなに気持ち良く泣いているんだろう?って。それは、自分の昔の芝居に対しての反省点でもあるのですが、泣きたくないのに漏れる涙が一番胸に来るのではないかと思うんです。『ひとりたび』は、そういう表現がたくさん詰まった作品だなと思います。

──本当にそうですね。岡本さんがその様なことを思うきっかけって何かあったのですか?

演出家の小川絵梨子さんとの出会いが大きかったと思います。小川さんはとにかく「泣くな」って言うんです。「人は泣きたくて泣いているのではないので、感情に飲まれないで」ということを私が25.26歳の時に言っていただいて。「感情は結果でしかないから、目的でお芝居をしなさい」という言葉が自分の中で指針になっています。

──素晴らしい出会いだったのですね。本当に様々な作品に挑戦されていて素敵だなと思います。

ありがとうございます。器用貧乏になりがちな所がコンプレックスだったのですが、作品にお声がけいただくことは嬉しいですし、その幅を自分で狭めるのは嫌なので。10代、20代前半の頃は、『置かれた場所で咲きなさい』という本のタイトルが理解出来なくて。「私は自分の咲きたい場所で咲く!」と思っていました。頑なで子供だったのだと思います。でも今は、「あなたは1人で生きていないんだよ」という意味だと思えて、前向きにとらえられるようになりました。なので、出会いに身を任せてたくさんのことに挑戦することも楽しいなと思っています。

──本作では美咲が自分自身と向き合う姿が描かれていますが、映画を観ているこちら側も一緒に自分と向き合える時間をもらえますよね。

人と向き合うとか、自分に向き合うのって、パワーがいるんですよね。「自分のこと愛そう」って、今色々な所で言われていますし、それが大事だなと思いますけれど、それさえ出来ないこともあるじゃないですか。日々の生活に疲れていて。
人とも自分とも向き合わずにうまく生きることが得意になっていってる瞬間があるなって、自分自身でも思ったりします。
美咲も、相手に伝えることを面倒だと諦めている部分があって、そういう部分は私にもあるし、共感してくださる方も多いのではないかなと思います。
本作で、立ち止まって、時間をかけて自分と向き合うということを美咲を通して体験出来て、救われた気がします。この作品を観てくださった方も、映画館の帰り道、ちょっとだけいつもより高いご飯を食べて帰るとか、甘いデザートを買って帰るとか、自分を甘やかすきっかけとなってくれたら嬉しいです。

──この作品を見に行くこと自体も、自分へのご褒美の時間かもしれませんね。

映画って皆さんが時間とお金を使って観てくださるものなので、私が言うことは烏滸がましいかもしれませんが、癒しとリラックスの時間になってくれたらありがたいです。

──素敵な作品とお話をどうもありがとうございました!

撮影:オサダコウジ

映画『ひとりたび』公開中
©️Ippo

配信元: ガジェット通信

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