
W杯で出場1試合に終わった塩貝健人を待ち受けるドイツ2部での新シーズン。オーストリアクラブの2軍から飛躍した中村敬斗のように成長できるか【コラム】
ヴォルフスブルクの2部降格は、21歳のFW塩貝健人にとって決して望んだ結末ではなかった。
オランダからブンデスリーガへ活躍の場を移したのも、より高いレベルで結果を残し、日本代表入り、そしてワールドカップ出場を実現するためだった。移籍を決断した当時、塩貝はその思いを率直に語っていた。
「僕の中では、いまワールドカップのことしか頭になくて。どうやったら入れるかって考えた時に、やっぱり高いレベルのリーグで結果を出すことが必要だと。6か月後のことを考えた時に、『行くしかない』と思いました」
結果だけを見れば、クラブでは苦しい半年だった。序盤こそ出場機会を得たものの、チームが残留争いへ巻き込まれるにつれ、若手ストライカーに与えられる時間は徐々に減少。チームは降格し、自身もシーズン終盤はベンチから試合を見守る時間が長くなった。
しかし、この挑戦を失敗だったと結論づけるのは違うだろう。
自ら掲げていた最大の目標であるワールドカップ出場を実現した。日本代表メンバーに選出され、グループリーグのオランダ戦では世界最高峰の舞台にも立った。もちろん、その後は出場機会を得られず、ブラジル戦の敗戦をベンチから見守る悔しさも味わった。
世界の舞台に立ったからこそ、自分に何が足りないのかを実感できたはずだ。
その経験を踏まえて迎えるブンデス2部での一年には、大きな意味があるはず。ドイツをはじめ欧州では、若い選手が2部で数多くの試合を経験し、自らの課題と向き合いながら再び1部へ駆け上がるキャリアは決して珍しくない。
特にストライカーにとって重要なのは、毎週先発でプレーし、ゴールという結果を求められ続ける環境だ。センターバックとのデュエル、ゴール前での駆け引き、一瞬の判断、そして決定力。そうした要素は、試合を重ねる中でしか磨くことはできない。
日本人選手にも、その時間を飛躍につなげた例がある。中村敬斗は、オランダ、ベルギーを経て加入したオーストリアのLASKで、すぐにトップチームの主力となったわけではない。セカンドチームで実戦経験を積みながら自らの課題と向き合い、その積み重ねがトップチームでのブレイク、さらにはフランス、そして日本代表での飛躍へとつながった。
もちろん、塩貝と中村では歩んでいる道も置かれた状況も異なる。ただ、一つ共通しているのは、キャリアには結果が出ない時間や、思うようにプレーできない時間があるということだ。その時間をどう過ごすかが、その後の成長を大きく左右する。
塩貝にとってブンデス2部で迎える新シーズンは、ワールドカップで味わった悔しさを日々のトレーニングと試合にぶつけ、自らの課題を一つずつ埋めていく一年になる。
4年後のワールドカップではメンバーに入る選手ではなく、勝敗を左右するストライカーとなるために。塩貝健人の勝負は、まだ始まったばかりだ。
文●中野吉之伴
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