
決勝T1回戦で散ったオランダの凋落。プレースタイルで世界を魅了してきた伝統も喪失した【W杯コラム】
フットボール界において、かつて機械仕掛けのオレンジと称されたオランダは、勝利への執着のなかで独自のスタイルを喪失した。2026年ワールドカップ(W杯)で、オランダの挑戦は、ロナルド・クーマン監督の辞任とともに幕を下ろした。その姿からは、1974年西ドイツ大会を皮切りに、1978年アルゼンチン大会、2010年南アフリカ大会と3度準優勝に輝き、2014年ブラジル大会では3位となり、1988年EUROを制した頃のチームの面影はまるで見られない。
クーマンは、決勝トーナメント1回戦のモロッコ戦の敗北の後に退任を表明した。PK戦の呪いはこの国にのしかかり、またしてもW杯のタイトルには手が届かなかった。
昨シーズン、国内リーグを5位で終えたアヤックスの凋落が示すように、近年、オランダのフットボールは個と集団いずれも影響力を低下させている。アヤックスのスポーツディレクターはヨハン・クライフの息子であるジョルディ・クライフが務め、新監督にはジローナをチャンピオンズリーグへ導いた経験のあるミチェルが就任する。アヤックスはジローナやバルセロナにインスパイアしているが、そもそもバルサの基盤はクライフとアヤックスの融合によって構築された。
現代の戦術トレンドは、リヌス・ミケルスがアヤックスとオランダ代表で披露したトータルフットボールに代わり、バルサのハンジ・フリック監督が体現するドイツ式のゲーゲンプレッシングが主流となっている。クライフの愛弟子であったクーマンでさえスタイルを進化させられず、2019年のUEFAネーションズリーグ準優勝が頂点だった。モロッコ戦で見せたようにその采配は相手やスコアに依存する受動的なものに終始した。
絶対的なストライカーを欠くチームにおいて、攻撃面でも、守備の大黒柱でもあるフィルジル・ファン・ダイクにビルドアップを委ねられた。コディ・ガクポやフレンキー・デ・ヨングが奮闘し、GKバルト・フェルブルッヘンが好守を連発しても、結果には繋がらない。中盤の人数を削って両ボックスの枚数を増やす5-2-3のシステムに対し、選手たちから指揮官の決断に疑問を呈する様子も見られた。
オランダほどフットボールに対して自己批判的で、クラブ間の対立や人種を巡る確執を抱えてきた代表チームはない。しかし、かつては何にもまして攻撃を貫く美学を優先して、勝利至上主義のドイツに対抗する不磨の大原則が存在していた。
近年、ドイツは勝てなくなり、オランダもまたW杯で敗北を繰り返している。今後の焦点はクーマンやルイス・ファン・ハールらが導き出せなかった答えを持つ次期監督の招聘に留まらない。
ピーター・ボスやアルネ・スロットのような名前が並ぶなか、本質的な問題はアンダー世代の育成を見直し、今大会の招集メンバーのうち国内組が2人という状況を是正することでアイデンティティを取り戻すことである。今こそ、オランダのユニホームを着ることの意味を再定義する局面を迎えているのかもしれない。
結果ではなくそのプレースタイルで世界を魅了してきたオランダ代表において、勝つことではなくフットボールを提示することこそが本来の使命である。
文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸
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