
大会は佳境を迎え、一抹の寂しさも。モロッコのサポーターがにぎわうボストンで、すでに敗れた国のサポーターが残した貴重な足跡【W杯戦記】
ワールドカップはベスト8が出揃った。裏を返せば、すでに40か国が大会を去ったことにもなる。
いよいよ大会は佳境を迎えるが、この時期になると、一抹の寂しさを覚えるのは、ワールドカップ取材あるある、だ。
街を歩いていても、各国サポーターの数がめっきり減ったように感じる。どこへ行っても、いろんな国のサポーターがワールドカップを楽しみ、盛り上がっていたのだが、残念ながら、そんな光景を見かける機会も少なくなった。
グループステージの段階では、1試合に勝とうが負けようが次があるとあって、サポーターが急に減ることはないが、決勝トーナメントに入ると、一戦必勝。負けた国のサポーターは日常に戻っていくのだから、仕方がないことではあるのだろう。
現地時間7月7日、ニューヨークでは、昼にはタイムズスクエアで凱歌を上げるアルゼンチンサポーターの群衆に遭遇したが、夜になると、肩を落として地下鉄に乗るコロンビアサポーターを数多く見かけた。
アルゼンチンサポーターは、次なる決戦の地でまた出会えるのかもしれないが、コロンビアサポーターとは、また4年後、ということになるのだろう。
翌7月8日、準々決勝の取材に備え、バスでボストンへと移動してくると、アメリカを代表する歴史都市は、モロッコサポーターであふれていた。
そもそもニューヨークからのバスの中は、乗客のほとんどがモロッコサポーターとおぼしき人たちだったのだから、予想できたことではある。
街のいたるところで、赤のユニホームと赤の国旗を見かけたが、なかでもハラールレストランがにぎわっていたのは、モロッコサポーターならではの風景だろう。
モロッコは、前回のカタール大会でアフリカ勢初となるベスト4進出(4位)を果たしており、今大会ではさらに上への期待が高いのだろう。しかも、準々決勝の相手が優勝候補筆頭の呼び声高いフランスとなれば、盛り上がらないはずはない。
だが、そんなモロッコサポーターがにぎわうボストンで、すでに敗れた国のサポーターが残した、貴重な足跡も見つけることができた。
アメリカを代表するビール、「サムエル・アダムス」はボストンのビール会社が製造しているのだが、そのタップルーム(注ぎたてのビールが飲める店)の入り口に、こんなメッセージが掲げられていたのだ。
「5DAYS, 100KEGS, 5,000PINTS. THANKS, SCOTLAND!」
日本語に訳すなら、「5日間で、100樽、5,000パイントのビールを飲んでくれたスコットランドのみなさん、ありがとう!」といったところだろうか。
アイルランド系移民が多い街として知られるボストンは、アイリッシュパブが多く、サッカーの試合前後にビールを飲んで気勢を上げるという、イギリス的文化とは相性が良かったのだろう。
ボストンで2試合を戦ったスコットランドは、結果的に1勝2敗でグループCの3位に終わり、グループステージを突破することはできなかった。1998年フランス大会以来となる、28年ぶりの嬉しい出場ではあったが、サポーターにとっては残念な結果だったに違いない。
だがしかし、スコットランドの“活躍”は、どうやらボストンの人たちの記憶に、しっかりと刻み込まれているようだ。
店に掲げられたメッセージは、彼らがどれだけワールドカップを楽しみ、ボストンを楽しんだかを物語っている。
取材・文●浅田真樹(スポーツライター)
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