中国南部でパニック映画さながらの騒動が起きた。
現地メディアによれば、広西チワン族自治区・南寧市横州市の雲表鎮鄧圩村で7月6日午前、豪雨による洪水が発生。低地にあった養蛇場が押し流され、飼育されていたヘビが一斉に逃げ出した。
村の自治組織の説明では、逃げたヘビは800匹から900匹ほど。種類はコブラ、シュウダ、ミズヘビなどで、村民1人がヘビに咬まれて死亡したという。
翌7日、中国のSNSに「養蛇場が洪水で壊され、ヘビが下流へ流れた」とする情報が出回ったことで一気に拡散。泥水の中を泳ぐヘビや、棒で追い払おうとする住民の映像も投稿され、中国国内で大騒動となっている。
ここで気になるのは、なぜ猛毒を持つコブラを含む大量のヘビが村で飼われていたのか、という点だ。中国事情に詳しいジャーナリストが解説する。
「広西は中国でも有数のヘビ養殖地です。以前は食用需要が大きかったのですが、2020年の野生動物取引や食用規制以降、養殖業者は薬用向けへと軸足を移してきました。中でもコブラは漢方系の素材として重宝されている。つまり村の片隅で猛毒ヘビを趣味で飼っていたわけではなく、立派な産業なのです」
1グラム数万円から数十万円で製薬会社が買い取り
とはいえ、かねてから管理の甘さが問題視されていたといい、
「台風による豪雨が頻繁に発生している地域であるにもかかわらず、山あいの高台だけでなく、浸水しやすい低地にも複数の養殖場が作られている。以前から水害による脱走の可能性が、現地でも指摘されていました。今回の大騒動により、リスク管理を怠って養殖ビジネスを続けていた業者への批判が高まっています」(前出・ジャーナリスト)
ただし、その裏にはビジネスとしての旨味があった。この村では小規模のヘビ農家でも年商は数千万円。
「コブラの場合、1グラム数万円から数十万円で製薬会社が買い取ってくれる上、ヘビは狭いスペースで大量に飼育できるため、維持費がかからず、極めて効率がいいんです。リスクを無視して養殖ビジネスに手を出す業者がいるのは、仕方のないことかもしれません」(現地報道関係者)
豪雨がヘビ養殖産業の危険な実態を浮き彫りにしたのだった。
(川瀬大輔)
1977年生まれ。国内外のビジネス、スポーツ、政治、社会問題を取材するフリー記者。

