クレジットカード決済代行会社「全東信」の破産により、多くの加盟店が大きな影響を受けた。カードで支払われた売り上げが予定通り入金されず、資金繰りに苦しむ店舗が出るほか、決済システムが停止し、一時的にカード決済を受け付けられなくなるケースも。
飲食店や小売店のように日々の売り上げで経営を支える事業者にとっては、単なる一企業の倒産ではなく、営業の継続にかかわる深刻な問題である。
なぜ、このような事態が起きたのか。日本のクレジットカード決済では、利用者が支払った代金がいったん決済代行会社などを経由し、その後、加盟店へ振り込まれる。この仕組みでは資金を管理する事業者が経営破綻した場合、加盟店への入金が遅れたり、滞ったりするリスクが生じるのは必然だ。
ここで焦点を当てたいのが、東南アジアの旅行先として人気の高い、タイのシステムである。「プロンプトペイ(PromptPay)」という銀行間送金・決済システムが生活に深く浸透しているのだが、これが日本とは対照的なのだ。
銀行口座と携帯電話番号や国民IDを紐付けし、店頭のQRコードをスマートフォンで読み取るだけで、自分の銀行口座から店舗の銀行口座へ送金できる。
もちろん、タイでもクレジットカードは広く利用されている。デパートや大型商業施設、ホテルなどでは一般的だ。一方で屋台や市場、個人商店、タクシーなどでは、少額の支払いを中心に、プロンプトペイが重宝する。手数料が安く、加盟店側が速やかに売り上げを受け取れることから、クレジットカードより使いやすいと考える事業者や利用者は少なくない。
決済代行会社の経営状況は加盟店の売り上げを直撃しない
当たり前だが、プロンプトペイでも銀行や決済システムの障害が発生すれば、利用できなくなることはある。ただし銀行間の決済ネットワークを利用して資金が移動するため、日本のクレジットカード決済で見られるような、決済代行会社の経営破綻によって加盟店への入金が滞るリスクは小さいとされ、決済代行会社の経営状況が加盟店の売り上げを直撃する構造とは異なるのだ。
今回の全東信の破産は一企業の問題にとどまらず、日本のキャッシュレス決済が抱える課題を浮き彫りにする出来事となった。便利さの裏で「誰が資金を管理し、どのようなリスクがあるのか」という点にも目を向ける必要があることを示している。
キャッシュレス化を進めるのであれば、決済手段を増やすだけでは十分とはいえない。加盟店が安心して売り上げを受け取れる仕組みを整備することが重要である。その点では、少額の日常決済を支える仕組みとして、タイの取り組みから学べることは少なくないのではなかろうか。
(カワノアユミ)

