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「今年のベストテン入り」の声も…ブレンダン・フレイザー“フィリップ”の目を通して描かれる日本<レンタル・ファミリー>

「今年のベストテン入り」の声も…ブレンダン・フレイザー“フィリップ”の目を通して描かれる日本<レンタル・ファミリー>

「レンタル・ファミリー」はディズニープラス スターで見放題独占配信中
「レンタル・ファミリー」はディズニープラス スターで見放題独占配信中 / (C) 2026 Searchlight Pictures

ハリウッド俳優のブレンダン・フレイザーがオール日本ロケで挑んだ映画「レンタル・ファミリー」が、7月8日に配信された。劇場公開時も大いに話題を集めた作品だが、配信で初めて見たらしい視聴者からも「泣けた」「心温まる」「早くも今年のベストテン入り」との声が上がっている。(以下、ネタバレを含みます)

■名門スタジオ「サーチライト・ピクチャーズ」が選んだ作品

本作の配給を手掛けたサーチライト・ピクチャーズは、インディーズ系、アート系の映画を軸に、作家性を大事にした作品を製作・配給する名門スタジオだ。

サーチライトは、年間の製作数、配給数を絞ることで、クオリティーを保つことで知られる。そのスタジオに選ばれたというだけで、映画ファンの間では期待値が上がる目安でもある。

監督・脚本を務めたHIKARIは、アメリカで活躍中だが、大阪出身の日本人女性監督。脳性麻痺の女性を主人公にした「37セカンズ」(2020年)で注目された才能を、今回はサーチライトの配給作で発揮した。

そのHIKARI監督がタッグを組んだのは、ハリウッドスターのブレンダン。恋人を失ってから肥満症となった男性が娘との絆を取り戻そうとする姿を描いた「ザ・ホエール」(2022年)で第95回アカデミー賞主演男優賞に輝いた実力を、本作でも披露している。

■日本で暮らすアメリカ人俳優が主人公

タイトルにもなっている“レンタルファミリー”とは、依頼人の要望に応じて配偶者、子ども、恋人、友人など広義で“家族”の役を演じる代行サービスのこと。実際にある仕事だ。

ブレンダン演じるフィリップは、7年前に歯磨き粉のCMキャラクターに抜てきされたことをきっかけに来日し、以来、日本で俳優活動をしているアメリカ人。ただ、今は決して仕事が順調というわけではなく、オーディションをこなしながら、彼である必然性がなさそうな仕事も受けている。

オスカー俳優のブレンダンが木の着ぐるみを着て、日本のスタジオ脇で休憩している姿を見られる日が来ようとは…と思いつつ、着ぐるみから出ている浮かない表情からすぐさま演じるフィリップの置かれた状況が伝わってくる。

酔っぱらったサラリーマンが座席に倒れ込む電車に乗り、たどり着いた自宅で缶ビールを飲み、コンビニ弁当を食べる。窓の外に見える向かいのマンションのベランダで乾杯する若者たちに向け、自分も小さくビールを上げて乾杯し、独居らしき老人や、子どもが生まれたばかりの夫婦の暮らしを眺める日々。

そんなふうに日本の暮らしにもすっかり溶け込んでいる彼に、「悲しむアメリカ人」のオファーが舞い込む。向かった先は葬儀場。受付で名前を伝えるフィリップだが、撮影ではなく、本物の葬式。それも生前葬だった。目をぱちくりとさせて驚くフィリップ。終了後、葬儀の司会をしていた多田(平岳大)が自分のところで仕事をしないか、と声を掛けてきた。多田が営んでいたのが、レンタルファミリーの会社だった。

「レンタル・ファミリー」場面写真
「レンタル・ファミリー」場面写真 / (C) 2026 Searchlight Pictures

■レンタルファミリーが必要とされる日本

多田の会社を初めて訪れたフィリップは多田から「どんな仕事だと思う?」と問い掛けられ、「あえて言うなら、人の売り買い」と答えた。それが正直なところだろう。しかし、多田は「人に心を売る」「客が求める感情を与える」のだと語った。

フィリップから不意に出た「セラピストに相談は?」という疑問は、カウンセリングが浸透しているアメリカ人ならではのものだ。日本に溶け込んでいても、考えは少し違う。多田は「この国では心の病は触れにくい。だから人は違うものに頼る。我々だ」と告げた。

初めは無理だと断ろうとしたフィリップだが、「やる価値はある」という言葉で、俳優と並行して仕事をすることに決めた。

このやりとりから、レンタルファミリーという商売が成立する日本社会の一端が浮かび上がってくる。そして、その後のフィリップがこなす依頼で日本人の特性も。

■ブレンダンがオスカー俳優の演技力を発揮

初めの仕事は、佳恵(森田望智)のニセの新郎役として結婚式を挙げること。家族から離れる目的があるのだが、フィリップはどうして家を出られないのか理解ができず、挙式当日にトイレにこもってしまう事件を起こす。レンタルファミリーのスタッフ・愛子(山本真理)に叱責されて遂行すると、挙式後に佳恵の秘密を知ることに。そこにあったのはフィリップが恐れた佳恵の両親たちの人生を壊すようなうそではなく、両親を思うからこそ考えられた優しいうそだった。

うそが必要なこともある。佳恵の依頼で感じた「ドキドキ、ワクワク」と、うそでも「リアル」に思えたこと。フィリップはレンタルファミリーの仕事を続けるが、その都度、アメリカ人としては不思議に思うことに直面していく。

ハーフである娘・美亜(ゴーマン シャノン 眞陽)を、私立の小学校に転入させるために面接で必要な父親になってほしいという母親からの依頼。ただ、美亜には面接でうそをつかせたくないから、本当の父親だと思わせたいとのこと。またしても依頼の意図が分からないフィリップ。ただ、佳恵の結婚式のことでまだ怒っている愛子から「やっぱりガイジンね。この国は理解できない」と言われるも、「日本はもう故郷だ。だから理解したい」と前向きだ。

父親に成り切りながら、美亜の気持ちを理解していくフィリップ。同時進行で、老いた俳優・長谷川喜久雄(柄本明)の娘から、認知症の症状が出てきた彼に過去を称える取材をして、自信を取り戻させてほしいという依頼も。ここではジャーナリストに扮(ふん)した。

日本の今、そして日本人の心の中を理解していくフィリップ。演技をしつつも、それを通り越したような真摯(しんし)に相手と寄り添う姿勢で、美亜や喜久雄との絆を深めていく。しかし、それによって“契約違反”が生じてしまう。

戸惑い、楽しさ、愛しさなどフィリップの感情を細やかに表現するブレンダンの演技が心に染みる。代表作の一つ「ハムナプトラ」シリーズでのタフさは潜ませ、キャリア最高とも称された「ザ・ホエール」のような静かなるドラマティックさ。フィリップの目を通して浮かび上がる日本らしさを、日本人の観客の心にも届けて感動を呼び起こした。

SNSには「心温まる作品」「泣けた」「ブレンダン・フレイザーの優しい演技が東京の温かい空気感に馴染んでおり、良い映画だった」「今年のベストテン入り確定」といった声が寄せられている。

ブレンダンと、“新星”ゴーマン シャノン 眞陽や日本が誇る名優・柄本、「SHOGUN 将軍」(2024年)でも存在感を示した平との演技のケミストリーも抜群だった。初め、どこか陰鬱にも感じたフィリップの表情がラストでは変わる。その変化が、レンタルファミリーという優しいうそを扱う物語そのものと、ブレンダンの真骨頂として生きている。

「レンタル・ファミリー」は、ディズニープラス スターで見放題独占配信中。

◆文=ザテレビジョンシネマ部


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