25年12月の法改正では、密輸が発覚した際、税関長の権限で金そのものを没収できる仕組みが初めて導入された。
「これまでは関税法違反で摘発して『密輸品である金』を押収しても、原則として罰金を払えば手元に戻ってくるケースがほとんどでした。没収の対象は『不正薬物』や『偽ブランド品』などに限られており、適正な資産である金を没収する法的根拠がなかったためです」(税関関係者)
見つかっても「どうせ金塊は戻ってくるから」という、悪質な密輸者の排除を目的とした抜本的な見直しだった。罰金の算定基準も見直され、かつては「密輸時点の価格」をもとに計算されていたものが、現在の時価相当へと引き上げられている。
さらに26年6月には保税地域に関する関税法改正が施行され、輸入許可前の貨物の違法な搬出を防ぐため、保税業者への業務改善命令の新設や搬出時の確認義務化が始まった。
空港や港湾での水際対策も25年末ごろから様変わりした。門(ゲート)型・携帯型の金属探知機に加え、3D透視が可能な最新のⅩ線CT装置が順次配備された。身体に巻きつけたり荷物に紛れ込ませたりした金を見逃さない体制が整いつつある。AIと渡航履歴データを組み合わせた電子申告ゲート(Eゲート)によるスクリーニングで、要注意人物を事前に絞り込む「スマート税関」構想も動き出した。
密輸された金が国内で現金化されるのを防ぐ「出口対策」も強化されている。輸出申告時の現物検査が厳格化されたのだ。税関・警察・国税庁が連携し、金買取業者の流通実態や犯罪組織によるマネーロンダリングの監視も続けられている。
言うまでもないが、規制強化は後手にすぎない。常に密輸を企てる者たちの存在が先にある。
その過程で何が起きていたのか。暗闘の歴史をたどる─。
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。

