調べると、密輸による金の「利ざや稼ぎ」は、消費税の引き上げ、そして金価格の高騰と伴走するようにして増加していた。潮目が変わったのは消費税が5%から8%に引き上げられた14年4月である。利ざやが増えたことで金密輸は爆発的に増えた。17年には摘発件数が1347件、押収量は約6.3トンに達する。
「格安航空会社(LCC)の就航により海外への渡航費用が安くなったことも、『運び屋』と呼ばれる運び手を使った組織的な密輸増加の要因となりました」(全国紙社会部記者)
事態を重く見た財務省関税局は同年11月、「ストップ金密輸」緊急対策を打ち出し、取締りの強化と厳罰化に乗り出した。
「急増する金の密輸を食い止めるべく、18年4月に改正関税法が施行されました。従来の罰金上限は500万円でしたが、法改正により『1000万円』へと大幅に引き上げられました。さらに、貨物の価格の5倍が1000万円を超える場合は、その5倍相当額が罰金として科されるようになり、密輸した金の量が多ければ多いほど罰金も跳ね上がる仕組みになりました」(社会部記者)
効果はてきめんだった。翌年から摘発件数は急減したのだ。万が一摘発された際に利益を吹き飛ばすどころか、それ以上の莫大なペナルティを背負うことになる。
その後はコロナ禍による入国者数の激減も重なり、金密輸はほぼ鳴りを潜めた。
しかし─。
インバウンドが急回復し、金価格が高騰する中で、密輸は再び動き始める。
かつて1グラム5500円ほどだった金の価格は、この数年で約4〜5倍に跳ね上がった。戦争と紛争のリスク、インフレへの警戒、新興国の国家ぐるみの買いだめ─世界が安全資産へと雪崩を打つ中、金は今1グラム2万3000円前後をつけている。
19年に消費税が引き上げられたことも大きい。これまで8%だった実入りが10%になったからだ。
24年上半期の摘発件数は228件(前年同期比81%増)と大幅に増加する。押収量は約937キロで、前年同期の約8.1倍に跳ね上がった。
金をアクセサリー等に加工したり、下着や靴に隠して身体に装着したり、航空貨物や海上コンテナに正規の機械部品として紛れ込ませたり─規制強化と税関が摘発できているのは、あくまで氷山の一角にすぎない。その手口は年々巧妙化し、すべてを摘発することは不可能に近かった。だが当局も手をこまねいているわけではなかった。
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。

