世には銘品と呼ばれる優れたプロダクトが、数多く存在している。そんなマスターピースを鉄馬乗りの目線でピックアップしていく。ハーレーライフをより充実させてくれる相棒になってくれることだろう。
チンストラップ付き名作コーチJKT
ハーレー乗りの定番アイテムといえば、デニム、エンジニアブーツ、ライダースといったとろこだが、その3種の神器に迫るのがコーチジャケットだ。西海岸バイカーから発生したコーチジャケット、ジーンズ、そしてバンズといったニュースクールなスタイルは、日本でも根付いており、チョッパーを筆頭としたカスタムしたハーレーであれば、ライダースよりもなじみがあるだろう。
そんなコーチジャケットの中でも異彩を放っているのが、アメリカを代表するアウトドアメーカーである「L.L.ビーン」が80年代ごろまで展開していたチンストラップ付きのウォームアップジャケットだ。ただコーチジャケットの出自はアウトドアではなく、学生スポーツ。アメリカで盛んなアメリカンフットボールでは20年代にはベンチで待機する際に着用する「サイドラインパーカ」なる、今でいうベンチウォーマーが存在した。名作として名高いボクシンググローブポケットの付いたダブルフェイスのスエットパーカは、当時のカタログで「サイドラインパーカ」と明記されており、ウォームアップや戦況を見守る際に使われていたことがわかる。その文化はアメリカに根付いており、コットンやウールなどのヘビーアウターが40年代ごろまで散見される。
その転機となったのが、50年代のナイロンの台頭だ。この化学繊維で今も第一線で活躍している生地は、アメリカのデュポン社が第2次世界大戦時にテントなどの生地として開発したもの。その耐久性と生産性が評価され、米軍でも朝鮮戦争のころからフライトジャケットとして採用。それを皮切りに民生品でもナイロンを用いたスポーツジャケットが50年代より生産され、防風や防寒を必要とするサイドラインジャケットにはうってつけの生地となった。アメリカの学生にTシャツやスウェットを多く供給していた「チャンピオン」からもコーチジャケットが販売され、チームマスコットや学校名がプリントされたものがヴィンテージ市場で多く見られる。
ただ表地はナイロン、裏地は安価なポリエステルという簡素な作りが多かった中で、そこに一石を投じたのが、L.L.ビーンだったというわけだ。当社がライニングに使ったのは、30年代より代名詞となっていたシャモアクロス。シャツ地として生まれたコットンフランネルで当社を代表する超ロングセラーアイテムだ。
今回、撮影したコーチジャケットはタグから70年代と判断でき、その前の筆記体タグのコーチジャケットも存在するので、60年代後半から70年代にかけて販売されたと推測。通常のコーチジャケットにはないチンストラップが付き、ソデのゴム、スソのドローコードなど防風対策もばっちり。多くのカラーバリエーションが存在し、いろいろな選択肢があるのも面白い。プライス的にはタンカラーが高いが、それ以外はそこまで差がないので、探してみるのも一興だ。
1970-80s Lined Coach Jacket

筆記体タグの後に短期間のみ使われていたTM表記の入ったタグのデザインから年代を判別。人気の高いグリーンカラーのナイロンシェルに、ベージュのシャモアクロスの組み合わせ。レディース合わせの個体が多いため、メンズサイズで大きめのものを探すとなる意外と見つからない。こちらはメンズサイズのLで状態もかなりいい。1万5400円
【ポイント①】チンストラップ

L.L.ビーンのコーチジャケットの最大の特徴がチンストラップの存在である。80年代まで販売されており、その後はチンストラップがないデザインに変更された。使わない時はスナップボタンで折り畳むことができる仕様も気が利いている。これだけでグッと見栄えが変わるのだ。
【ポイント②】シャモアクロスライニング

シャモアクロスとは、L.L.ビーンが1933年に開発したコットンフランネルの生地。そのころより防寒向けのシャツとして発売されており、90年代でもその存在を確認できる。基本的にベージュが使われる。
【ポイント③】ゴムの入ったソデ

ソデには防寒性を上げるためにゴムが入っているのも特徴。80年代になるとここにマジックテープ式のストラップが追加されるので、初期のディテールとなる。伸びがなく、抜群のコンディションをキープする。
【ポイント④】初期は無地の同色ボタン

初期のコーチジャケットは、ボディカラーに合わせた塗装のスナップボタンが装備される。80年代になるとブランドロゴの入ったシルバーのスナップボタンに変更されるので、年代判別の材料となる。よりクラシックな雰囲気を求めるなら、この無地ボタンを狙うのもおもしろい。
(出典/「CLUB HARLEY 2026年6月号」)