
お酒を飲んだ後、「運転しなければ大丈夫」と考えて、歩いて帰る人は少なくありません。
しかし、米ニューヨーク州保健局とコロンビア大学(Columbia University)の研究チームが同州の歩行者死亡事故を調べたところ、死亡した歩行者の43.8%から薬物またはアルコールが検出されました。
特に「薬物のみ」のケースは、「アルコールのみ」のケースより多かったといいます。
この結果は、飲酒運転だけでなく、酒や薬物の影響を受けた可能性がある状態で歩く危険にも目を向ける必要性を示しています。
この研究成果は、2026年7月13日付で医学誌『Injury Prevention』にオンライン掲載されました。
目次
- 死亡した歩行者の43.8%から薬物かアルコールを検出
- 「深夜」と「横断歩道外」道路での死亡例が目立つ
死亡した歩行者の43.8%から薬物かアルコールを検出
ニューヨーク州では、歩行者の負傷が年間約1万5000件発生し、そのうち約3000件で入院が必要になります。
ところが従来の交通安全対策は「飲酒して運転しないこと」に重点を置き、アルコールや薬物が検出される歩行者死亡の実態は、十分に調べられてきませんでした。
そこで研究チームは、死亡した歩行者のうち薬物やアルコールが検出された人の割合と、年齢、性別、時間帯、事故時の場所などの特徴を調べました。
分析に使ったのは、米国の公道で起きた自動車関連の死亡事故を記録する「死亡事故分析報告システム(FARS)」です。
対象は、2018~2020年にニューヨーク州で車両との衝突後30日以内に死亡した歩行者771人でした。
研究チームは死後検査の結果をもとに、「検出なし」「アルコールのみ」「薬物のみ」「両方」の4群に分類。
アルコールは血中濃度0.01g/dL以上、薬物は1種類以上の検出を基準としましたが、薬物の種類や濃度までは分析していません。
その結果、338人、全体の43.8%から薬物またはアルコールが検出されました。
内訳は薬物のみ18.3%、アルコールのみ13.7%、両方11.8%でした。
では、物質が検出された死亡例には、どのような特徴があったのでしょうか。
より詳しい結果を次項で見ていきます。
「深夜」と「横断歩道外」道路での死亡例が目立つ
薬物またはアルコールが検出された割合は、男性で50.3%、女性で32.9%でした。
また死亡者数そのものは65歳以上が最多でした。
時間帯では、物質が検出された死亡例は午後6時から翌朝6時までに多く、午前0時~5時59分に発生した死亡では58.5%から薬物またはアルコールが検出されました。
また死亡例の中では、検出群は非検出群よりも、横断歩道ではない道路上にいた割合が高くなっていました。
研究者らは、酒や薬物による判断力の低下が危険な横断につながり、夜間の見えにくさと重なることで、運転者が歩行者を避ける時間が足りなくなった可能性を指摘しています。
ただし、この研究は死亡例を後から調べた観察研究です。
物質が検出されたことは、それが事故を直接引き起こしたことや、事故時に明確な機能低下があったことを証明するわけではありません。
それでも今回の研究は、「飲んだら運転しない」に加え、影響が疑われるときには無理に歩かず、安全な帰宅手段をあらかじめ確保することの大切さを示しています。
参考文献
New York data reveal substance use in 44% of pedestrian deaths
https://medicalxpress.com/news/2026-07-york-reveal-substance-pedestrian-deaths.html
元論文
Substance use among fatally-injured pedestrians in New York State, USA: a retrospective analysis
https://doi.org/10.1136/ip-2025-045980
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

