アメリカのAI企業アンソロピックが、最新モデル「Claude Fable 5」の扱いをめぐって迷走している。Fable 5は6月9日に公開されたものの、アメリカ政府による輸出規制を受けて6月12日に全面停止したモデルだ。
規制解除後の7月1日に復活し、当初は日本時間7月8日まで定額プランに含まれた後、使用量に応じて料金を払う「利用クレジット」方式へ移行するはずだった。ところがその期限は7月13日へと延び、さらに7月20日までの再延長が発表されたのである。
こうしたなか、7月10日にライバル企業のOpenAIが「GPT-5.6」を一般公開。最上位のSolをはじめ、Terra、Lunaの各モデルを一斉投入した。
公表された性能評価では、Fable 5が一部のソフトウェア開発能力で優位を保っている一方、GPT-5.6 Solが推論やエージェント作業など、複数分野で上回っているという。両社のせめぎ合いを、ITジャーナリストが解説する。
「Fable 5の延長は、熾烈なAI開発競争で勝ち続けるための措置です。月額制の枠内で使わせ続ければ、高性能ゆえの膨大な計算費用が膨らみ、アンソロピックに大赤字をもたらしてしまう。だから当初は早々に、従量課金へ切り替える予定だったのです」
最新AIに聞いても解決できない難題
それでも延長せざるをえない理由が、GPT-5.6の脅威だ。
「完全に赤字覚悟の防衛策ですね。プログラマーら複雑な作業を長時間にわたり実行する利用者からすれば、GPT-5.6と比較した場合、Fable 5以外のClaudeのモデルは性能が大幅に見劣りしてしまうのが実情。GPT-5.6が定額プランで使えるようになったタイミングでFableをサブスクから除外すれば、利用者にChatGPTへ移る理由を与えてしまうというわけです」(前出・ITジャーナリスト)
こうして厳しい消耗戦が繰り広げられているのだが、
「最上位のAIを定額で大量使用させる負担は極めて重い。先に追加料金を取れば顧客が逃げ、このまま提供していれば赤字が広がる。ライバルに勝ち続けるか、資金が尽きるかのチキンレースだと言えるでしょう」(前出・ITジャーナリスト)
最新AIに聞いても解決できない難題に直面しているのだ。
(川瀬大輔)
1977年生まれ。国内外のビジネス、スポーツ、政治、社会問題を取材するフリー記者。

