最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
橋口亮輔監督インタビュー「2作品とも人間賛歌 人と人の間にしか希望はない」 『ハッシュ! 4Kリマスター版』『ぐるりのこと。 4Kリマスター版』公開

橋口亮輔監督インタビュー「2作品とも人間賛歌 人と人の間にしか希望はない」 『ハッシュ! 4Kリマスター版』『ぐるりのこと。 4Kリマスター版』公開

橋口亮輔監督作品の『ぐるりのこと。』は公開から18年ぶり、『ハッシュ!』は製作から25年、実に四半世紀の時を経て4Kでスクリーンに!

ゲイカップルと一人の女性、他者と関わることをあきらめかけていた彼ら三人がつくる「新しい家族のかたち」を描いた『ハッシュ!』(01)と、何があっても二人でいることをあきらめない一組の夫婦の10年を、90年代を時代背景に描く『ぐるりのこと。』(08)、いずれも「オールタイム・ベスト映画」としてそのタイトルが挙がることも少なくない傑作が、この夏、4Kリマスターで蘇ります。

人と関わるからこそ生まれる厄介さ、めんどうくささ。それでも人と人とのあいだに希望は生まれる――。この四半世紀、時代は変わりましたが、両作品に流れるテーマは現代だからこそ改めて問うものも。橋口監督にお話を聞きました。

●この夏、映画『ハッシュ!』、そして『ぐるりのこと。』が4Kリマスター版でリバイバル上映されますが、率直にいかがでしょうか?

リバイバルされるような歳になってしまったのかと(笑)。ポスターも新たに作っていただいたり、素直にうれしいです。『ハッシュ!』は25年前、四半世紀前の作品で、今でこそLGBTQやBLという言葉がありますが、僕が30年前に『二十才の微熱』を撮った頃は、言い表す言葉は皆無でした。『渚のシンドバッド』を経て10年目に『ハッシュ!』を撮りましたが、当時の日本で理解されるかずいぶん気を使ったことを覚えています。

『ハッシュ!』のあとにいろいろ重なって僕はうつになり、一年間仕事を休むのですが、その時に社会を見て、個人と社会の関係の鮮烈なコントラストを痛烈に感じたんです。人を絶望させるのも人なら、人に希望を持たせるのも人だと。それがうつを経験した後の僕の答えで、これを映画にしようと思った。それが『ぐるりのこと。』。

およそ僕から遠いと思われる夫婦を映画にしてね。しかも当時はテレビや映画でも、新しい夫婦のカタチ、新しい恋愛のカタチみたいなことが言われ出して。内館牧子さんの「週末婚」みたいな。そうじゃなくて、何があってもずっと一緒にいる夫婦。一見すると時代遅れかもしれないが、そこが絶対揺るがない夫婦を主人公にしながら、激動する社会を定点観測のようにして描こうと。法廷画家という主人公像を思い付ついて、なんとか物語になったというわけなんです。

●改めて今ご覧になっていかがですか?

実は『ハッシュ!』は25年間、観ていなかったんです。『ぐるりのこと。』はリリー・フランキーさん、木村多江さんとご一緒する機会が何度かあったり、ワークショップで教材として使ったりしていましたが、『ハッシュ!』はまったく観ていませんでした。なのでびっくりしました。自分で言うのもおかしいけれど作り手のエネルギーが圧倒的で、あまりの完成度に「誰作ったの?」って(笑)。僕も若かったなあと。

ただ、改めて観ると、4Kってすごいんですよね。特に引きの映像が。映像の奥の隅にいる俳優さんの表情まで、全部クリアになって見える。要は、受け取る情報量が多いということですよね。俳優さんたちが本当にみなさん、プロの仕事をしていらっしゃることがよくわかりました。

●公開当時のファンのみなさんだけでなく、初めて両作品を観るという方たちのリアクションも楽しみですね。

そうですね。去年アテネ・フランセで『ハッシュ!』の上映イベントがあり、田辺誠一君と登壇したのですが、チケットは即完売だったそうなんです。ほとんどが20代くらいの女性でした。

●公式サイトのコメントで「時を経て伝わる力が圧倒的に増した」と言われていましたが、25年という期間の時代の変遷について思うことはありますか?

みなんさんがどう受け取るかは僕にはわかりませんが、『ハッシュ!』の25年前からは、ずいぶん時代が変わったと思います。映画界も変わりましたし、僕自身も心持ちはずいぶん変わったように思います。

●今、2作品が世に出て行くことについては、いかがでしょうか。

『ハッシュ!』は孤独だった3人が、ある意味人生をあきらめている3人が出会うことによって、人生はいかようにでもなっていくことに気づく物語なんです。生きる活力をもう一度取り戻していく過程で、まわりが振り回されることでコメディーになっていく。すごく分かりやすい構成で。

一方『ぐるりのこと。』はふたりがじっと見つめていくなかで、わかりやすい答えはないけれど、変わらないものを見つめていくというお話で、2作品とも人間賛歌なんです。いろいろなことがあるけれど生きていこう、人と人の間にしか希望はないんだということです。両方とも普遍的な作品を作ろうと思っていたので、時代を描いているけれども、改めて見直してみてポップさもまったく古くなっていないなと。僕は年月に耐える映画を作りたいといつも思っているけれど、これらはそうなっています。

ただ、『ハッシュ!』の当時は、なんとかみんなに知ってほしいと。普通に生きているゲイの人がいて、普通にいろいろなことを感じながらなんとか人生をやっていこうと思っている人がいることを知ってもらいたいという思いで作り、やがて理解は進んだと思ったら、今は反対に政治的に利用され、タブーみたいにされてしまうところもある。時代の流れで言うと、その期間は感じますね。今だったら『ハッシュ!』のような作品は、非常に作りづらい時代だと思う。その意味でも上映する意味を感じます。

●余談ですが、10月25日(日)に閉館が決まっているシネスイッチ銀座でも今回の上映がありますよね。当時のメイン館でリバイバル上映されるなど、感慨深いものもありますね。

そうですね。単館の映画館がなくなるのは寂しいです。『ぐるりのこと。』は、シネスイッチ銀座で上映していただきました。シネスイッチ銀座とシネマライズ(2016年閉館)の2館で始まりました。舞台挨拶もシネスイッチ銀座でやって、突然、秋元康さんがサプライズで現れるという。「なんでこんな大物が!?」って、ザワザワしたことを覚えています(笑)。

●今日はありがとうございました!

なお、『ハッシュ! 4K』『ぐるりのこと。 4K』の公開を記念し、7月20日(月・祝)にシネマート新宿にてプレミア先行上映&トークイベントの開催が決定。当日は、『ハッシュ!』主演の田辺誠一、片岡礼子、『ぐるりのこと。』出演の木村多江、リリー・フランキー、橋口亮輔監督が登壇し、撮影当時のエピソードや、時を経ても色あせない作品の魅力を語る予定です。ぜひご注目ください。

■公式サイト:https://www.bitters.co.jp/hashiguchifilm_4k/

■『ハッシュ!』

土木研究所で働く勝裕(田辺誠一)はゲイであることを他人に気づかれないよう注意しながら生きている。ペットショップで働く直也(高橋和也)は明るくゲイライフを満喫しているが、どこか虚しさを抱えている。歯科技工士の朝子(片岡礼子)は自己肯定感の低さから愛のないセックスを繰り返し、孤独感を募らせている。カップルとなった勝裕と直也のもとに、朝子が現れ、「付き合ってくれとか、結婚とかじゃなく、あなたの子どもがほしい」と勝裕に持ちかける――。ゲイカップルと、独りの女性。他者と深く関わっていくことを半ばあきらめかけていた三人がつくる「新しい家族のかたち」をユーモラスに描き、2001年カンヌ国際映画祭監督週間に出品されたのをはじめ国内外で絶賛された。
©2001 SIGLO

■『ぐるりのこと。』

生まれたばかりの子の死をきっかけにうつになる妻・翔子と、彼女にただ寄り添いつづける法廷画家の夫・カナオ。何があっても決して離れない一組の夫婦の、バブル崩壊後の90年代初頭から9.11テロに至るまでの10年を、90 年代に世間を震撼させたさまざまな社会的事件を背景に描く物語。『ハッシュ!』後、自らうつになった経験を振り返り、「人はどうしたら希望を持てるのだろう?」と自問した橋口監督がたどりついた、「人と人とのつながりのなかにしか希望は生まれない」という答えがここにある。日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ数多くの映画賞を受賞したほか、光石研、加瀬亮、江口のりこ、佐藤二朗ら豪華なカメオキャストにも注目。
©2008 『ぐるりのこと。』

7月24日(金)より、シネマート新宿、シネスイッチ銀座、渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次ロードショー!

(執筆者: ときたたかし)

配信元: ガジェット通信

あなたにおすすめ