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心理学者が『トイ・ストーリー5』を観てみたら?子どものために奮闘するジェシーの心情、シリーズを通して描かれるテーマを分析

心理学者が『トイ・ストーリー5』を観てみたら?子どものために奮闘するジェシーの心情、シリーズを通して描かれるテーマを分析

公開初週末3日間で驚異の興行収入24億円越えとなり、実写も含めた洋画作品のオープニング史上歴代No.1という歴史的大ヒットスタートを切ったディズニー&ピクサー映画『トイ・ストーリー5』(公開中)。本作でメインキャラクターとなるのがカウガール人形のジェシーだ。「また、捨てられるかもしれない」という不安で揺れ動く彼女の心情を、「トイ・ストーリー」シリーズの共通点も交えながら、東京学芸大学教育学部教育心理学講座の松尾直博教授が詳しく解説してくれた。

※本記事は、「トイ・ストーリー」シリーズのネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)に該当する要素を含みます。未見の方はご注意ください。

ブルズアイやジェシーがタブレットのリリーパッドを敵視!(『トイ・ストーリー5』)
ブルズアイやジェシーがタブレットのリリーパッドを敵視!(『トイ・ストーリー5』) / [c]2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

『トイ・ストーリー5』では、本当はまだまだおもちゃで遊びたいのに、タブレットに夢中な周囲の子どもたちと話が合わず、友達作りに悩むボニーのもとに、最先端タブレット(リリーパッド)がやってくる。そして、ボニーもいつしか、画面の中の世界へ夢中になっていくという波乱の展開に。

持ち主であるボニーの幸せのために日々奮闘しているジェシー。彼女がかつての持ち主エミリーに捨てられてしまったことは、『トイ・ストーリー2』(99)でも描かれていたが、本作ではリリーパッドの登場により、ジェシーは「また捨てられてしまうのではないか」と不安を感じていく。本作で描かれる彼女の心情について松尾教授は、不安と向き合うなか、“自分は誰かの役に立っている”と思えたことで「自己有用感」が上がったこと。本作のテーマである“時が流れても、変わらないもの”に気づくことで、ありのままの自分を受け入れられ、不安も乗り越えられたことについて解説。
 『トイ・ストーリー2』で初登場したカウガール人形のジェシー
『トイ・ストーリー2』で初登場したカウガール人形のジェシー / 『トイ・ストーリー2』ディズニープラスにて見放題独占配信中 [c]2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.


おもちゃのリーダーだったウッディに“保安官バッチ”を託されたジェシーだが、リリーパッドは、お腹のスクリーンでなんでもすぐに検索でき、フレンド申請すれば一瞬で“友達”も作ってしまう。ジェシーはリリーパッドに対抗し、ボニーに本当に合う友達を作るべく意気込むも、なかなかうまくいかない。そして、最初の持ち主だったエミリーに捨てられた不安な気持ちを思い出し、自分は子どもの役に立たないと思ってしまうようだ。

そんなジェシーの心理状況について、松尾教授は「自己有用感というものは、自分が役に立つかどうかを考えることなのですが、自己肯定感と密接に関わってきています。役に立たないということは、自分の存在自体も否定することになってしまうんです」と解説。「トイ・ストーリー」シリーズを心理学的に捉えると、ジェシーをはじめ、おもちゃたちの“見捨てられ不安”を描き続けている作品だという。

【写真を見る】子どもたちのためにひたむきなジェシーの姿に、感涙が止まらない…(『トイ・ストーリー5』)
【写真を見る】子どもたちのためにひたむきなジェシーの姿に、感涙が止まらない…(『トイ・ストーリー5』) / [c]2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

例えば、ジェシーは最初の持ち主エミリーが大人になっていくなかで遊ばれなくなり、最後には寄付用のダンボールの中に置き去りにされた悲しい過去をもつ。松尾は、「見捨てられ不安とは、見捨てられてしまったらどうしようと思う心理のことで、子どもたちにとっては自己の存続に関わるものです。虐待などで本当に見捨てられた経験があると、次の人間関係でも過度に媚びたり神経質になってしまったりします。ずっとエミリーのことを心に持ち続けていたので、自己有用感と見捨てられ不安がジェシーのなかにある心情だと思います」と分析する。

今回も心強い存在となるウッディ!(『トイ・ストーリー5』)
今回も心強い存在となるウッディ!(『トイ・ストーリー5』) / [c]2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

ジェシー以外にも、ウッディがアンディの一番のお気に入りじゃなくなってしまうことを恐れていたように、おもちゃたちはみな、持ち主の子どもに「いつか捨てられてしまうのではないか」という不安な気持ちを抱えている。松尾は「でも、ウッディは『トイ・ストーリー4』でその不安を乗り越えましたよね。ウッディはいろんなものを乗り越えて自立した大人になったからこそ、いま、ほかの誰かを助けたりすることができる。でも『ウッディみたいに生きられないよ』『だからといって、見捨てられ不安にずっと怯えて生きていくの?』と思うんですけど、ジェシーはウッディとは違う答えをもってきましたよね。それがとても観ていてスッキリしました」と、専門家の目線から語る。

本作でジェシーは“ある出来事”を通して自分が心から愛されていたことを知り、悲しい過去も受け入れられるようになるエモーショナルな展開が描かれる。松尾は、そんなジェシーの姿に重ねて「自分は有用なところもあるけど、なにか足りてないところもある。だけど、おもちゃがいっぱいいるこの“遊び”のなかで、この役割ができるのは自分だけだと思うことや、ほかの人とアイデアを組み合わせる時、テック・トリオのように誰かと協力し補い合う時、自分にしかできないことがあったりもする。みんながスペシャルな存在で、みんながどこか欠けていて、かたよっていて、それでいいんです」と、自分だけにしかできない役割に気づくことで不安を乗り越え、自分自身の価値を認めることの大切さを語った。
トイレトレーニング用のスマーティー・パンツ、デジカメおもちゃのスナッピー、デジタルマップおもちゃのアトラスら、テック・トリオが活躍する『トイ・ストーリー5』
トイレトレーニング用のスマーティー・パンツ、デジカメおもちゃのスナッピー、デジタルマップおもちゃのアトラスら、テック・トリオが活躍する『トイ・ストーリー5』 / [c]2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.


心理学の観点から『トイ・ストーリー5』をみると、“自分の役割”に気づく大切さを教えてくれる映画だが、本作で描かれるリリーパッドが自分なりにボニーのためを想って行動する姿や、ボニーが友達作りに悩む気持ちなどからは、子どもも大人も、それぞれの環境や立場によって伝わる優しいメッセージを受け取れるはず。ディズニー&ピクサーが原点に立ち返り製作する、“シリーズ最高の物語”と称賛される本作をぜひ劇場の大スクリーンで見届けてほしい。

文/山崎伸子
配信元: MOVIE WALKER PRESS

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