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英国識者の予想を集計すれば「イングランド優勢」。それでも議論が行きつく先はメッシ。決勝進出を占う3つのポイント【W杯】

英国識者の予想を集計すれば「イングランド優勢」。それでも議論が行きつく先はメッシ。決勝進出を占う3つのポイント【W杯】


「試合の1週間前から、話題はいつもリオネル・メッシだった」

 元ナイジェリア代表のジョン・オビ・ミケルは、チェルシー在籍時代をそう振り返った。チャンピオンズリーグでのバルセロナ戦が近づけば、当時チェルシーを率いたジョゼ・モウリーニョ監督は必ず策を練ったという。

「あの小さな魔術師をどう止めるか」。1人ではなく、2人、時には3人で囲む。それでも答えは出なかった。

「みんなで止めようとした。でも、1対1で防ぐのは不可能だった。まるでボールが足に磁石で吸いついているようだった」

 北中米W杯の準決勝、イングランド対アルゼンチンを前に、元イングランド代表のガリー・リネカーが司会を務めるテレビ番組では、ミケルと元イングランド代表のジョー・コール、アラン・シアラーらが「メッシ対策」を語った。

 もっとも、ミケルが対峙したのは、爆発的なドリブルで何人も抜き去っていた若き日のメッシである。39歳となった現在は運動量を抑え、前線で試合を読みながら、決定的な局面に力を集中させる。その違いをコールも意識していた。
 
「若い頃のメッシは、小柄だったけれど、とにかく抜いてきた。対戦相手として、抜かれること自体は受け入れるしかない。その後ろ、そのまた後ろの選手がカバーする。1対1になったら終わりだった」

 メッシは、昔と今ではプレースタイルが違う。それでも、相手が抱える難しさは変わらないだろう。シアラーが今大会のアルゼンチンを見て強調したのは、ボールを奪った瞬間の反応だった。

「みんながまず『メッシはどこだ?』と探す。危険な位置にいるメッシへ、ボールをどう届けるか。それがアルゼンチンのサッカーなんだ」

 つまり、イングランドが考えるべきは、39歳のメッシを90分間、追い回すことではない。前線で彼にボールが入る回数を減らし、受けた瞬間に複数人で自由を奪えるかどうかだ。

 リネカーが示した数字も、その必要性を裏付ける。メッシは、プレミアリーグの強豪6クラブ、つまりマンチェスター・シティ、アーセナル、リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、トッテナムとの36試合で33ゴールに関与してきたという。

 それでも彼らの勝敗予想は、イングランド寄りだった。コールは「中盤のパワーで上回れる」と見て、試合がオープンになれば、イングランドのスピードが活きると予想した。シアラーも、「退場者が出ても不思議ではない」と激戦を想定しながら、イングランドの決勝進出を選んだ。

 反対に、ミケルはアルゼンチンだった。

「イングランドが今大会、本当に良かったのは45分間くらい。それ以外は、そこまで良くなかった」

 メッシが相手の中盤と守備の間へ入り込めば危険になる。ただし、それ以上にミケルが重視したのは、「アルゼンチンがこうした試合の勝ち方を知っている」ことだった。

「メッシの周りにはボディガードのような仲間がいる。彼のために戦い、彼のために勝ちたいと思っている。最後はアルゼンチンが少しだけ上回ると思う」
 
 一方、英紙『タイムズ』のポッドキャストでは、議論はチーム全体の比較へ広がった。登場したのは、スコットランド出身の記者グレガー・ロバートソン、英国人記者トム・オールナット、元アイルランド代表トニー・カスカリーノ。

 司会は、イングランドとアルゼンチンを「似た者同士」と表現した。どちらもW杯の決勝トーナメントで相手を圧倒したわけではなく、苦しい試合を精神力と個人の一撃で勝ち抜いてきたからだ。

 そのなかで最も強気にイングランドを推したのが、スコットランド人のロバートソン記者だった。アルゼンチンは、準々決勝のスイス戦で11人が揃いながら自陣に下がり続けた。

「FAカップで下部リーグのチームが格上相手に耐えているようだった」

 世界王者への評価としては辛辣である。イングランドの守備陣に疲労は見えるが、それでも、ここまで出ていない「最高の試合が準決勝で突然出る」可能性に賭けた。

 対照的に、英国人のオールナット記者はアルゼンチンを選んだ。イングランド評は明快だった。

「平均的なチームに、突出した選手が2人いるだけ」

 その2人とは、ジュード・ベリンガムとハリー・ケインだ。イングランドが両者に大きく依存する一方、アルゼンチンにはメッシだけでなく、フリアン・アルバレス、ラウタロ・マルティネス、エンソ・フェルナンデスら、一瞬で試合を変えられる選手がいる。さらに、ファウルで流れを切り、時間を使い、相手をいら立たせる術にも長けている。
 
 カスカリーノは、イングランドの成長を買った。アンソニー・ゴードンやエリオット・アンダーソンらが試合ごとに良くなり、逆にアルゼンチンの中盤にはスピード不足があるという。

「ゴードンやアンダーソンのような選手が、トーナメントで尻上がりに良くなることは、とても大きい」

 英国識者の予想を集計すれば「イングランド優勢」である。だが勝負を分けるのは、もちろん単純な多数決ではない。

 第一のポイントは、メッシに決定的な形でボールを届けさせないこと。第二は、試合がオープンになった短い時間を、イングランドのパワーとスピード、あるいはアルゼンチンの攻撃陣の厚みのどちらがモノにするか。第三は、ファウル、抗議、時間の使い方が入り交じる激戦で、最後まで11人と冷静さを保てるかだ。

 それでも、イングランドにとって注意すべき選手はメッシだ。モウリーニョが何度も挑み、それでも完全な答えを見つけられなかった問いに、今度はイングランド代表を率いるトーマス・トゥヘル監督が向き合う。

 識者の多くは、勝者予想でイングランドを選んだ。それでも議論が最後までメッシへ戻っていったこと自体が、この準決勝の難しさを何より物語っているだろう。

文●田嶋コウスケ

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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