オメガ星団は、ケンタウルス座の方向、地球から約1万8000光年の距離にある球状星団です。天の川銀河で最大かつ最も質量の大きな球状星団で、重力によって結びついた約1000万個の星で構成されています。
オメガ星団の中心には中間質量ブラックホールが存在すると考えられていますが、理論モデルによると、恒星質量ブラックホールも約1万個ほど存在すると予想されています。しかし、ドップラー法(視線速度法)による観測や、物質がブラックホールに落下する際に放たれるX線や電波を探索する観測では、これまでブラックホールが発見されたことはありませんでした。そんなオメガ星団で今回、初めて恒星質量ブラックホールが発見されました。
星の動きを精密に追いかけた

今回の発見は「アストロメトリ」という手法によってなされたものです。アストロメトリでは、時間経過に伴う恒星のわずかな動きを測定します。伴星や惑星が存在すると、恒星の位置が、近くに見える別の星々に対してゆらぎます。そのゆらぎを検出することで、伴星などの存在を推定します。
研究チームは2002年から2023年までの20年以上にわたるハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブデータに、最新のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による近赤外線観測のデータを組み合わせました。それにより、1万8000光年彼方の星の動きを正確に描きだしました。
ブラックホールの質量は太陽の4.46倍
解析の結果、オメガ星団で初の恒星質量ブラックホールが発見され、「oMEGACat BH-2」と名付けられました。その質量は太陽の約4.46倍と推定されています。
オメガ星団は、金属(水素やヘリウムより重い元素)量が非常に少ない環境にあります。oMEGACat BH-2の質量は、そのような環境で予想されるブラックホールに比べてはるかに小さいとのことです。
また、このブラックホールの周囲を回る伴星は、太陽の0.78倍の質量をもっており、ブラックホールの周りを94年かけて1周しています。これは、これまでに発見されたブラックホール連星系の中で最も長い軌道周期です。
この連星系は最初からペアとして形成されたものではなく、星が密集する星団内で偶然出会って連星になったと考えられています。oMEGACat BH-2のような連星系は、近くにある恒星との相互作用により離れ離れになるまで10億年ももたないとみられています。これは約120億年という星団の年齢と比べてはるかに短い期間です。
ハッブル宇宙望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のデータを使ったアストロメトリによる調査は、ほかの星団での同様の連星系の探索に応用できます。また2026年夏に打ち上げが予定されているナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡を使った銀河バルジの観測により、今回のような長周期のブラックホール連星が発見されることを研究チームは期待しているとのことです。
(参考記事)球状星団「オメガ星団」の中心部に、太陽の8200倍の質量の中間質量ブラックホール
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Häberle (MPIA)
(参照)ESA/Webb、NASA

