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7月15日、ついに完結へ―― 幼女と死闘と純情と。傑作将棋ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』の面白さを早口で語ってみた。

7月15日、ついに完結へ―― 幼女と死闘と純情と。傑作将棋ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』の面白さを早口で語ってみた。

 将棋。

 少なくとも現代日本においては、チェスや囲碁、あるいはモノポリーなどと比べても、この一見してシンプルな競技が最も人々に身近なボードゲームといって良いでしょう。あるいは麻雀は手ごわいライバルにあたるかもしれませんが、不世出の天才棋士の登場もあって、いまや将棋の人気はかつてない程に思えます。

 わかりやすいルールに加え、駒と盤面さえあれば遊べるほど手軽にもかかわらず、想像を絶する奥深さを秘めたこの「知のスポーツ」は、数百年前から数知れぬ人々を魅了してきました。

 とはいえ、ゲームの性格上、サッカーやバスケットボールのように派手な絵面を有しているわけではないため、マンガやアニメで取り上げることにはひと工夫が必要になることも確か。まして、小説でその迫力を再現することは容易ではありません。

 そのどうにも無謀とも思える行為にチャレンジし、そして希少な成功を果たしたのが、長編ライトノベルシリーズ『りゅうおうのおしごと!』。現代ラノベが産み落とした異色の傑作です。

ライター:海燕

ジャンル横断エンタメライター。主にマンガ・アニメ・ゲーム・映画を題材に、読者が感じる違和感や評価の分かれ目を言葉にする記事を執筆。最近の仕事は『このマンガがすごい!2025』CLAMP特集、マルハン東日本「ヲトナ基地」連載など。

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※本記事は『りゅうおうのおしごと!』の内容にふれています。

 はやりの異世界ファンタジー小説を思わせるタイトルですが、この場合の「りゅうおう」とは「竜王」、即ちすべてのプロ棋士が憧れてやまない将棋タイトルのひとつを指しています。

 主人公の少年棋士・九頭竜八一は、10代の若さにしてこの竜王位を制覇した、まさに天才中の天才としかいいようがない少年。したがって、プロになってからの活躍も、これはもう約束されたようなもの――というわけにはいかず、どういうわけかプロになってからは調子が上がらず、勝率3割という苦境に置かれることになります。

 物語は、彼がそんなスランプのなか、ひとりのあどけない少女――というか幼女と出逢い、棋士として再生してゆくところから始まります。

<九頭竜八一(くずりゅう・やいち)>

現竜王の16歳。タイトル奪取後調子を落とし連敗中。

<雛鶴あい(ひなつる・あい)>

八一に憧れ、弟子になるため押しかけて来た小学三年生。

(GA文庫公式Webサイトより引用)

 えっ、幼女? ぼく、幼女って書いた? ――そう、八一が出会った少女は、まだ9歳の幼い女の子。雛鶴あいという名前のその子は、本人自身がまだ未熟な八一のもとにむりやり押しかけて弟子になり、将棋を教わろうとするのです!

 当然、自分のことで忙しい八一はすぐに断ります。いや、そのつもりだったのですが、あいのあまりの才能のひらめき(と、たぶん、とんでもない可憐さ)に押し切られてしまい、彼女といっしょに暮らすことになります。ロリコン竜王という汚名(?)、えん罪(?)も甘んじて受け入れて。

 いや、さすがに本当にロリコンというわけではないのだろうけれど、かわいい女の子に弱いのは間違いないので、あまり汚名、えん罪とはいえそうにないところが何とも……。

 小学生がヒロインのライトノベルはたまにありますが(あるんかい)、9歳という年齢はかなりのもの。さらには、このあと彼女の他にもいろいろな女子小学生棋士たちが出て来るので、ロリラノベといっても差し支えはないかもしれないところなのですが、そんなJSヒロインズを圧倒するのが八一の幼なじみである空銀子。

 彼女がまた強烈なキャラクターで、自身も女性初のプロをめざす優れた棋士であるために、史上最年少竜王である八一との関係は複雑なものがあります。

<空銀子(そら・ぎんこ)>

八一の姉弟子にあたる女子中学生。女流二冠。

(GA文庫公式Webサイトより引用)

 さらには「ひとり暮らしするときのための練習」と称して八一の家にやってきては「料理(のようなもの)」を作っていくというツンデレ美少女っぷりも示し、もうかわいいったらない。ですが、ほんとにどうしようもない鈍感系主人公である八一との関係はなかなか進みません(いや、べつにおまえの家に来なくても料理は作れるって気付けよ!)。

 さらに、あいたちがあらわれてからはライバル出現ということで、恋愛関係はもつれます。ここら辺のロリコン疑惑ネタギャグはまさに出色の出来、爆笑に次ぐ爆笑、ほんと死ぬほど面白い。

 ただし、幼くも苛烈な意志を秘めた熱血美少女たちが繰り広げるロリギャグがどんなに魅力的でも、この物語の焦点はあくまで将棋。9×9マスの将棋盤という宇宙にいのちをかける棋士たちの生きざま、そして生々しい人間模様こそが『りゅうおうのおしごと!』の最大の魅力に他なりません。

 繰り返しますが、八一は10代半ばにして歴史あるタイトルを制覇してしまうという、長い将棋の歴史のなかでも屈指の天才少年です。それだけに実力も人気もあって、まあモテる……かと思いきや、なぜか(なぜだ?)その人気は最低、みずからエゴサしては落ち込む日々を続けています(見なければいいのでは……)。

 そのうえ、あいと出会った数カ月後には竜王位の防衛戦が待っているため、そうそう落ち込んでいるわけにもいかない。かわいい幼女といちゃいちゃデートしながら将棋を指しているところを見ているとそうは見えないものの、まさに窮地に立たされているといっていいでしょう。

 はたして竜王戦の勝利はフロックだったのか? それとも、いまはただ雌伏の時期を過ごしているだけで本物の天才なのか? 真価を問われる八一の目の前に最強のライバルが立ちふさがります。その名も「白銀の聖騎士」「ゴッドコルドレン」――! いや、ダサいっていうな。男の子にはその手の門を通り過ぎなくちゃならない時期があるんだから。

 そういうわけで、第1巻の中盤では、そのふたつ名のセンスはともかく、将棋の才能にかけては八一に匹敵し、「こいつが主役でも良かったのでは?」と思わせるくらいキャラが立っている異才・神鍋(ゴッドコルドレン)歩夢との対決が待っています。

 不治の中二病にいささかつっこみたいところはあるものの、プロになってからは勝ちまくっている歩夢の戦績は八一より上。このままでは八一の勝利は危ぶまれるというところで、壮絶な勝負が始まります。

 本人たちがどう思っているかは置いておくとしても、このあと何度となく熱戦を展開することになるであろう宿命のライバルどうしの決闘、盛り上がらないわけはないのですが、しかし、なぜか(なぜだろう)、八一の調子はもうひとつ上がらないままのようで――と、話は進みます。

 その後はあいの身柄をめぐってドラマティックな展開が待っていたりするのですが、物語がさらに熱さを増していくのは、その後のこと。

 竜王の八一や白銀の聖騎士の歩夢、「浪速の白雪姫」銀子といった個性的な(人によっては、ちょっと個性的すぎるかもしれない)異名を持つ面々に加え、さらなる異才・鬼才・天才たちが次々と登場し、将棋界の覇権を巡って熱いバトルを繰り広げます。まさに、その命をもかけて。

 将棋だけに人生のリソースすべてをつぎ込み、もはや戻ることなどありえもしない道を一心に進む八一たちの選択は、見方によってはあまりに愚直なものと見えるかもしれません。それでもなお、彼らにとっては、それがたったひとつのありえるべき人生。

 八一も銀子も、その凄まじい才能と超人的な努力を駆使し、現代将棋の頂点をめざして修羅の棋界を駆け抜けていきます。その姿はあまりにも生々しく、泥くさく、しかし――途方もなくかっこいい。決してスタイリッシュとはいえないにしても、栄光の勝利を求め、盤上に魂を燃やして戦う棋士たちの生き方は、どこまでもかっこいいのです。

 かっこよさと熱さ、そしておかしさ、その不可思議なマリアージュ。それが『りゅうおうのおしごと!』という作品の魅力です。そして史上最年少竜王として数知れぬ難敵たちの挑戦を受ける八一の戦いは、いつ果てるとも知れず続いてゆくのです。

 ぜひ一度、読んでみてください。己の知力の限りを尽くして互いに挑み合う才能たちの熱すぎる戦いを目撃することができるでしょう。

配信元: ねとらぼ

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