北中米ワールドカップは佳境を迎え、すでに準決勝に突入しているが、FIFAランキング上位4か国で、いずれも優勝経験国という4か国が出揃ったために、世界中から多くの注目を集めている。
そして印象的なのは、アルゼンチンを除く3か国がフランス、スペイン、イングランドという西欧勢だった点だ。かつては「欧州勢は欧州開催以外の大会では苦戦する」とも言われたW杯だが、その構図はすでに過去のものとなりつつあり、2006年ドイツ大会以降は、開催地が南アフリカ、ブラジル、ロシア、カタール、そして北中米へと移っても、西欧勢は安定して上位へ進出。クロアチアとリオネル・メッシ擁するアルゼンチンを除けば、6つの大会全てでベスト3を占めている。
この圧倒的な西欧勢の存在感について、スペイン・バルセロナのスポーツ紙『MUNDO DEPORTIVO』は、「これは、メッシを招待したEURO(欧州選手権)のような大会だ」と表現。今大会には10か国ものアフリカ勢が出場し、大会序盤には躍進を期待させる戦いも見られたが、同メディアは「欧州という“機械”が動き始めると、全てはいつもの姿へ戻った」と振り返り、「ベスト8には6つの欧州勢が勝ち残り、世界最高の4チームのうち3チームも欧州だった」と、その層の厚さを強調した。
一方で同メディアは、「欧州一強」という見方だけでは終わらせない。準決勝のフランス対スペイン戦、イングランド対アルゼンチン戦について、「どちらも決勝戦と言ってもおかしくない組み合わせ」と絶賛。さらに、ノルウェーやスイスの健闘を称えながら、「世界最高峰の大会は、やはり最高のチーム同士が争ってこそ価値がある」と評価している。
さらに、これらの国のスター選手の存在にも言及し、「優勝トロフィーを掲げるのは、ハリー・ケインか、ラミネ・ヤマルか、キリアン・エムバペか、それともメッシか? 誰が優勝しても、FIFAにとっては最高のシナリオになる」と指摘。「もし準決勝がノルウェー対スイス戦だったなら、サッカー界にとっては意義深かったかもしれないが、イングランド対アルゼンチン戦ほど世界中の注目を集めることはなかっただろう」と、大会の商品価値という側面も強調した。
その上で、同メディアは改めて「欧州全体のレベルが世界をリードしている」と指摘。「たとえ、最終的にアルゼンチンが優勝したとしても、それはメッシという例外的な存在がいるからだ。欧州のサッカーは、依然として世界の進化をリードしている。世界の実力差は以前より縮まっているが、最後に勝敗を分けるのは、経験や完成度、試合運びの巧みさであり、その部分では“古き良き”欧州が依然として一歩先を進んでいる」と結論付けている。 このように、西欧が長期間にわたって世界の頂点を走り続けていることについては、英国の経済専門紙『FINANCIAL TIMES』も注目し、「人口では世界のわずか5%に過ぎない地域の国々が、なぜこれほど長く世界のサッカーを支配し続けているのか」と問いを投げかけ、その答えは「代表チームの強化策ではなく、地域社会に根付いた育成文化そのものにある」と分析した。
同メディアがまず強調したのは、「西欧諸国は最初から、W杯制覇を目標にサッカーを発展させてきたわけではない」という点だ。「彼らが目指したのは、アマチュアサッカーを安価で、誰もが楽しめるものにすることだった。そこから得ようとしたのは、幸福や地域社会との繋がり、公衆衛生といった価値であり、W杯優勝は、その副産物に過ぎなかった」。
その象徴として紹介されたのが、ノルウェー・サッカー協会のリセ・クラベネス会長の「我々の最優先事項は、トップレベルのサッカーではなく、ノルウェー中のクラブを存続させることだ。子どもたちが身体を動かし、友人と競い合い、ライバルとも友情を育む。それが我々の役割なのだ」との言葉である。同メディアは、「地域クラブを守り、子どもたちが日常的にサッカーへ親しめる環境を整える土台づくりが、結果として世界屈指の代表チームを育ててきた」と主張した。
優れた人材を生み出す土壌についても、「才能を見つけるのではなく、全ての子どもを育てるという発想こそが、西欧最大の強みだ」と指摘。「サッカーは、幼い頃の体格だけで将来性を判断できる競技ではない。現在世界屈指のストライカーであるアーリング・ハーランドでさえ、17歳当時は特別な存在ではなかった」「どの子どもが世界的な選手になるかを予測することは極めて難しい。だからこそ、成功する国は才能を選別するのではなく、全ての6歳児に成長の機会を与えている」と説明している。
また、育成環境だけでなく、「互いに学び合い、進化し続ける文化も、西欧には根付いている」という。「イングランドは、欧州各国の成功例を参考に育成年代のルールを見直し、スイスも近隣諸国の育成システムを積極的に導入。ノルウェーも若手有望株を定期的に集中的に育成する独自プログラムを整備した。また、チャンピオンズリーグやEURO、ネーションズリーグなどを通じて世界最高レベルの対戦が繰り返されることで、各国が互いを刺激しながら競技レベルを引き上げている」との見解を示した。
構成●THE DIGEST編集部
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