2024年秋ごろから2025年7月上旬にかけて和歌山市の自宅で、当時2歳の長女を虐待死させたとして保護責任者遺棄致死罪に問われていた夫婦に、和歌山地裁は15日、それぞれ拘禁刑8年(いずれも求刑拘禁刑9年)の判決を言い渡した。
長女は亡くなった時、2歳児の平均体重の約半分のわずか6キロしかなかった。小学校時代からの幼なじみだった20代の夫婦は、なぜ実の娘への虐待に至ったのか。
親族の発言がきっかけで「可愛いと思えなくなった」母が虐待を…
平晴流被告(26)と妻の菜々美被告(26)は、2024年秋ごろから長女の流菜ちゃん(当時2歳)に暴力を振るい、必要な治療を受けさせず、2025年7月10日に外傷性ショックで死亡させたとして起訴されていた。事件の詳細について捜査関係者が語る。
「夫婦は日常的に長女に暴力を振るっており、2025年7月上旬にあごを骨折させるけがを負わせた。長女はあごを骨折して十分に食事をとるのが難しくなったこともあり、低栄養状態に陥った。
夫婦はそのことを認識していたにもかかわらず、必要な医療措置を取らなかった。夫婦には2人の子どもがいたが、虐待されていたのは長女だけで、外出時に長女だけを家に置き去りにすることもあった」
虐待が始まったのは、流菜ちゃんが1歳半ごろのことだった。夫の実家に流菜ちゃんを連れて行った際に親族が流菜ちゃんの顔をじっくりと見て『長男が一番可愛い』と言ったことで、流菜ちゃんのことを可愛く思えなくなった菜々美被告による虐待が始まった。
流菜ちゃんの背中を足で踏みつけたり、リモコンで頭を殴ったりしたという。同じ頃から父親である晴流被告も虐待を始め、2025年6月まで続けていたと被告人質問で述べた。晴流被告は、外出先で流菜ちゃんが泣き止まなかったり、周囲の人に迷惑をかけたりしたことが理由だったと説明した。
また、夫婦は自身の過去の体験が虐待につながったかのような内容も被告人質問で語っていた。菜々美被告は虐待の理由について「私の顔に似ていることが一番の理由だと思う。幼少期に母親に『ブス』『死ね』と暴言を浴びていた。(長女は)自分に似ている。かわいいと思えなくなった」と述べた。
一方、晴流被告は「自分自身ネグレクトや暴力を受けてきた。これくらい大丈夫だろうという気持ちだった」「(振るった暴力について)パーで叩いたり、げんこつなど。手加減はしていた。蚊とか虫を殺すような勢い」と語っていた。
最終意見陳述では、菜々美被告は「流菜に心から謝罪をします。本当にごめんなさいと伝えたいです。母親でありながら流菜の体だけでなく心も深く傷つけてしまいました」、晴流被告は「娘には本当に謝っても謝りきれません。成仏できるよう罪を償い、娘の無念や思いを背負い続けます」と、それぞれ自身の心境を述べた。
親戚も友人も「虐待、知らなかった」
夫婦はどこかで踏みとどまることはできなかったのだろうか。事件後、逮捕直前まで夫婦と同居していた親戚は、家族の様子について当時の取材にこう語っていた。
「ウチに来た時に子どもが怖がってる様子や不審な点は何にもなかった。かばうわけやないけど、育児ノイローゼやらで精神的にまいってたのもあるんやろうし、そういうのが重なったり、お金の面もあったかもしれんしな。だからそういうのを相談してほしかったわ」
また、晴流被告と菜々美被告の中学時代の同級生は、変わり者ではあったが暴力とは無縁だった2人が起こした事件に驚きを隠せないでいた。
「誰かに暴力を振るったり、いじめたりというタイプではありませんでしたから。警察沙汰になったこともないと思いますよ。ハル(晴流)は自分の子どものこともYouTubeやSNSにけっこう投稿していて、そこでも子どもをすごく可愛がっていますし、虐待している雰囲気は一切ありません。普段のハルと菜々美なら子どもに虐待なんかしないとは思います」
この事件を受けて和歌山市は2026年1月、乳幼児健診を受けていない家庭への対応マニュアルを新たに作成し、さらに3月に見直しをおこなった。新たなマニュアルでは、市が乳幼児健診を受けていない家庭を把握してから状況を確認するまでの期限をおおむね2か月以内から1か月以内に短縮することなどが盛り込まれている。家庭の中で起こる虐待は外からは見えにくい。そんな虐待をいち早く発見し、今回のような事件を未然に防ぐことが狙いだ。
虐待を受け、幼い命が失われた。そんな悲劇を繰り返してはならない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

