
【三浦泰年の情熱】「メッシ」からゴールを守れなかったイングランド。アルゼンチンのしたたかさには脱帽
福西崇史さんと林隆平さんの分かりやすい解説により、サッカーの魅力をいつも以上に感じ取りながら、アルゼンチン対イングランド戦を観戦(視聴)できた。
1点リードしたイングランドは守り切れば良いという心理と守備的な構造変化で逃げ切りたかったが、一方で1点ビハインドになったアルゼンチンの心理と攻撃的な構造への変化。最終的には得点を奪いに行くという後者の勢いが上回り、2-1で90分間プラスアディッショナルタイムでの決着に繋がった。
印象的だったのはアルゼンチンの勝つための執念、執着心だ。それはサッカー人として「演じる」ことができるプロフェッショナルの「選手」という役を通じて、試合のあらゆる局面において相手を追い込んでいた。
イングランドの選手に対する接触は、身体と身体の接触、言葉での威圧感のある接触など様々な場面で見られ、時に悪役を演じられるアルゼンチンのサッカー文化が苦しい状況を跳ね返す形にできた。見事、決勝の切符を掴んだ。
実は決勝の場所に最初に待つスペインに、僕はイングランドが来れば…、と楽しみにしていた。
60年前の1960年W杯以来、優勝のないイングランド。現在は世界最高峰のリーグ、プレミアリーグが長年、世界のサッカーを引っ張っているだけに、「サッカーの神様」が居ればイングランドを選んであげて…と思っていた。
しかし、やはりサッカーの神は守り切ろうとする者より、攻撃的にリスクを冒し、得点を取りに行こうとする者に微笑んだ。
守り切るための交代と得点を取りにいく交代は、データ上の問題ではない。例えば、「メッシ」がアルゼンチンの戦術であり、心であり、誇りでもある。そのメッシからゴールを守らなければならない。メッシにやらせない事よりもボールとスペースを守ろうとしたイングランド。同じ守り切るにしても、メッシにプレーさせない守備を引けなかった事が致命傷になったと思う。
変な表現なのだが、メッシにボールが渡る前にメッシにやらせないように守備を引く。
相手に嫌われる(メッシに嫌われる)という、南米がよく使うプレーができなかったイングランドは、見事にアルゼンチンにしてやられた。
もちろんサッカーはそれだけでは勝てない。
絶対的なメッシのいるアルゼンチンだが、何が何でも、何をしてでもという場面は至る所で見られた。例えば、プレーと関係のない所で7番のロドリゴ・デパウルが、ずっと相手選手とレフェリーに何かを言っていた…。何を話したのか、何があったのかは分からないが、とにかく心理的なプレッシャーをかけ続けていたのは確かだろう。
現代サッカーでは失われつつある文化を上手く発揮したアルゼンチンの勝利とはなったが、やはりイングランドとスペインの決勝を見たかった…。
決勝は、スペインに対しても、おそらく挑発気味にやってくるであろうアルゼンチン。イヤ、そういう展開になる決勝戦なのであろうか?
この決勝戦、ブラジル国民はおそらくスペインを応援するであろう。
現代サッカーにおいて、2大会連続優勝という至難の業を成し遂げられる“屈辱”は、同じ南米のサッカー大国として許されない…であろう。
ラウンド・オブ16のエジプト戦では、0-2とリードされながら、ひっくり返した試合後の光景を見て、アルゼンチンは優勝したような喜びようで、燃え尽きた感じすら窺えた。メッシが涙し、胴上げまでされていた。
僕の知る所では、そのようなチームが何度もそれを繰り返す事は不可能だと思っていた。
燃え尽きたように見えたにもかかわらず、その後の準決勝でも同じような勝負強さを発揮したアルゼンチン。このチームは本当に強い。
冒頭にも書いたが、そのアルゼンチン戦を福西さんと林さんが冷静に分析し、解説していた。素晴らしい分析眼だった。
前回のスペイン対フランスのコラムで、決勝はスペイン対イングランドと予想して外れたので、今回は優勝予想はしない。
ただ、スペインのエレガントなサッカーと、アルゼンチンの粘り強くしたたかなサッカーと、そしてメッシの神話性が増す試合になることを期待しながら…。さらに、負けてからもう一度戦う3位決定戦。フランス対イングランドも含め、ワールドカップ残り2試合を存分に楽しめたらと思う。
2026年7月16日
三浦泰年
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