今夏バレンシアに加入した佐藤龍之介は、スペインでは将来性豊かな日本から来た若手という視点で受け止められている。バレンシアの地元スポーツ紙『Superdeporte』は、若手の先物買いが現在のクラブの補強戦略の柱の1つに位置付けられており、佐藤はそのプロフィールに合致すると太鼓判を押した。
スペインメディア『El Desmarque』は、バレンシアが初めてこの日本人MFに着目したのは、昨年10月にチリで行なわれたU-20ワールドカップだったと伝えている。さらに大手スポーツ紙『MARCA』は、佐藤の動向を追っている他の欧州のクラブの存在を察知したバレンシアが、逸材獲得のチャンスを逃すまいと迅速に動いたと報じた。
佐藤のプレースタイルについて『Superdeporte』は、171㎝の小兵アタッカーらしく技術や機動力、スピード、スペースを攻略するセンスに長けていると分析し、そのプレーする姿に、スペインでもプレーした経験のある香川真司を重ね合わせている。奇しくも佐藤は入団会見で、子供の頃からの憧れであり追いかけていた目標だったとその名前を挙げていた。
スペインでは、地元メディアが新加入選手紹介のためにかつて指導したプロの声を聞くのが定番だが、『Superdeporte』が佐藤のケースでコメントを求めたのは、FC東京の監督時代に彼をトップチームにデビューさせたアルベル・プッチ氏だった。バルセロナの下部組織「ラ・マシア」で長く指導した同氏が、現時点での実力差を前提としつつ、その古巣のトップチームに所属する2人のアタッカーを挙げているのは興味深い。彼は佐藤を“ペドリとフェルミン・ロペスのハイブリッド”と表現しており、優れたボールコントロールやパス能力を備えつつ日本的な文化の影響からペドリよりも縦への推進力があり、さらにフェルミンのようなゴール前への飛び出しと鋭いシュートを持っていると評している。
その佐藤のバルサ的な資質について、プッチ氏は一目見て察知したと振り返っている。彼は「ボールの扱い方やキープの仕方、そして繊細なタッチを併せ持ったラ・マシア産の典型的な選手だ。日本には通常、このタイプの選手はいない」と答えた。
肝心のポジションに関して佐藤は、デビュー時のインサイドハーフからトップ下へとシフトし、左ウイングの経験も積みつつ、昨シーズンはトップ下として手応えを掴んだと語っている。一方でプッチ氏は、自身の指揮下ではアンカーと2枚のインサイドハーフを置くバルサスタイルの4-3-3におけるインサイドハーフとして起用したと明かした。同氏は、直近の2年間はウイングにコンバートされたと聞きつつも、それはスピードで1対1を仕掛けるタイプではなく、彼の自然なポジションは今でもインサイドハーフとトップ下の間、あるいは内側に入り込むウイングだとバルサ流の視点から分析している。
一方、今後の課題にはラ・リーガ特有のコンペティティブさへの適応を挙げている。プッチ氏は、スペインのフットボールは意思決定の速さや戦術理解が重視されると指摘。そこがJリーグとの違いであり、毎分が勝負でミスは許されず、その競争レベルにアジャストしていくのが彼の大きなテーマになると語っている。早速練習に参加している佐藤は、非常に展開が速くワンタッチを上手く使わなければならないトレーニングを心から楽しんでいると印象を述べている。
新たな日本人選手のラ・リーガ挑戦が始まった。
文●下村正幸
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