
午後にたった1つ予定があるだけなのに、朝から何も手につかなくなった経験はないでしょうか。
まだ何時間も余裕があるはずなのに、時計ばかり気になり、結局、他の事はとんど何もできないまま一日が終わってしまいます。
このような状態は、神経多様性の当事者の間で「待機モード(waiting mode ※正式な医学用語ではない)」と呼ばれています。
では、どうすればこの傾向を軽減できるのでしょうか。
英国スウォンジー大学(Swansea University)に所属するレベッカ・エリス(Rebecca Ellis)氏は、待機モードの特徴と時間を取り戻すための工夫を解説しています。
目次
- 数時間後の予定に注意を奪われる「待機モード」
- 待機モードを軽減する方法:事前に準備し、外部の仕組みに任せる
数時間後の予定に注意を奪われる「待機モード」
たとえば、午後3時に病院の予約があるとします。
今が午前10時ならあと5時間もありますが、何かを始めようとすると、「夢中になって予約を忘れたらどうしよう」「途中で切り上げられず、遅刻するかもしれない」と不安になります。
その結果、何度も時計を確認し、普段ならできる仕事や家事にも手をつけられなくなります。
これが”待機モード”と呼ばれている現象です。
予定は通院や面接のような緊張するものに限らず、友人の訪問など楽しみな出来事でも該当します。
さらに、「午後のどこか」「今日中」といった曖昧な予定の場合は、いつ行動を切り替えるべきか分からないため、待機状態が一日全体に広がりやすくなります。
現れ方にも個人差があり、頭に霧がかかったように集中できない人もいれば、体が重く、動き始められないと感じる人もいます。
本人は何も考えていないのではなく、予定を忘れないように時刻を監視し、準備や失敗の可能性を繰り返し考えていることがあります。
エリス氏は、この体験がADHDで研究されてきた時間知覚の違いや、作業の開始・切り替えに関わる実行機能の難しさと重なる可能性を指摘しています。
時間を見積もることに自信がなければ、別の作業を始めず、予定だけを待つ方が安全に感じられるというわけです。
ただし、待機モードは正式な医学用語や診断項目ではなく、ADHDの人だけに起こる現象とも限りません。
「予定があるせいで1日が潰れる」ほどではないとしても、似たような感覚になった人はいることでしょう。
では、こうした「待機モード」を軽減するにはどうすれば良いでしょうか。
待機モードを軽減する方法:事前に準備し、外部の仕組みに任せる
エリス氏は、日常で試せる実践的な工夫を紹介しています。
まず、予約時刻を選べるなら、重要な予定をできるだけ午前中に入れることもできます。
予定前の時間そのものを短くすれば、その後を「もう待たなくてよい時間」として使いやすくなります。
もし午後にしか予定を入れられない場合は、一日を30分や1時間の区間に分け、予定前には途中でやめても困らない軽い作業を置くこともできるでしょう。
「必ず終える仕事」ではなく、「できたら進める仕事」にすることがポイントです。
次に、予定を覚えておく仕事をアラームやタイマーへ任せます。
「準備を始める」「持ち物を確認する」「家を出る」など、行動の節目ごとに複数の通知を設定すれば、何度も時計を確認する負担を減らせます。
服や荷物、移動経路、出発時刻も前日に決めておくと、当日に考えることが少なくなります。
さらに、食事や支度、移動に実際どれほど時間がかかるかを記録しておけば、予定までに何ができるかを現実的に判断しやすくなります。
時間帯が曖昧な予定は待機モードを広げやすいため、可能なら時刻が明確な予約を選びます。
また、待機モードは見た目以上に消耗することがあるため、予定後の休息もあらかじめ確保しておくことも大切です。
このように、待機モードを軽くする鍵は、気合で予定を忘れることではありません。
タイマーに頼ったり、当日の判断を前日の準備へ移したりすることで、脳が未来の予定を抱え続けないようにすることなのです。
参考文献
Do you lose your whole day to one appointment? ‘Waiting mode’ may be why
https://theconversation.com/do-you-lose-your-whole-day-to-one-appointment-waiting-mode-may-be-why-280608
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

