
【三浦泰年の情熱地泰】“円満”だったが“ガチ”ではなかった3位決定戦。サッカーのいろんな顔が見えた今回のW杯
決勝でも見てみたかった3位決定戦だった。
今日のイングランドとフランスであれば日本代表でも勝てたかもしれない。
しかし決勝トーナメントに入った各国の負けられない中での一戦となればまた違う。3位決定戦は、やはり優勝を目指した両国の“負けた後の試合”であった。
立ち上がりから、両チームとも人に厳しく行く訳でもなく、自由にボールを保持させるスペースと時間を簡単に与えてしまう展開だった。
そうした流れの中でイングランドが前半だけで4点を取れたのは、両チームのワールドカップ(W杯)におけるここまでの歩み、歴史も関係していたか…。フランスは近年、W杯では必ずベスト4には入って来るチーム。逆にイングランドは優勝といえば60年以上も離れている。
タイトルを懸けた争いではないが、W杯で勝つことへの渇望、栄光への執着心、そんな心理的な物が前半の差になったのでは…。
一方、前半だけで4失点するような屈辱的な45分間に、フランスは後半立ち上がりからスイッチを入れ替えた。フランス代表チームで長く指揮を執ってきたデシャン監督の意地もあっただろう。
フランス代表は4人の選手交代。片や前半は納得の出来だったイングランドの交代は1人。結果、完全に形勢が逆転し、フランスが一気に逆転してもおかしくない展開になった。
まるで誰かの引退試合か、イベントのエキシビションマッチのようなサッカー。結果は6-4でイングランドが3位。4位にフランスとなった。
感想は本気の“ガチな”イングランドとフランスの試合が見たかった。
サッカーの世界の「面白い」が、攻撃だけの事を指すのであれば面白い試合であったが、やはり勝負の世界。このイングランド対フランス戦ではどこか違う…という違和感は残った。
しかし、そのまま朝を迎える僕にとっては、なぜか頬は緩み、にこやかな気分でもあった。3位決定戦が終わった直後のイングランド、フランス代表両チームの選手が笑顔で抱擁し、また両チームの監督も満足気な表情で抱擁。ピッチ上には円満な空気が漂っていたからであろう。
あとは決勝戦を残すだけになったが、今回のワールドカップではサッカーという顔がたくさん見ることができたという意味で、良い大会だったと思う。
試合後にも色々な顔があった。怒り、憎しみ、悔しさが全面に感じ取れた試合後もあれば、パフォーマンスや歓喜がスタジアムと一体となり、感動や純粋な平和を感じ取れた試合もあった。
そして僕の知るサッカーとは、勝負の世界において感動と歓喜のみを求めるものではなく、勝ち負けに対して涙し、激怒し、喧嘩が始まりそうになる、そんな全ての感情を含めて真剣にプライドを懸けて戦うという事なのである。
ただし、感情はしっかりプロとしてコントロールしなければ、ネガティブな行為には大きな罰が科せられる時がある。それがルールなのである。
そして、そのルールをギリギリの線まで上手く駆け引きしながら使うことで、弱者が強者に勝つ可能性も生まれる。
決勝はハーフタイムを約30分にして、エンタメというスポーツとは異なる興行性を出して、W杯のクライマックスにより興味を持ってもらう人たちを増やそうという方針のようだ。
これは今のサッカー界をコントロールする人たちの「今がチャンス」という欲だと思うが、これがサッカー界の未来の為になる! サッカーが永遠に愛される為になる!と言い切れるのか。もしそう言い切るなら、サッカーの本質的な事を知っておかなければいけない。
サッカーは、人が判断して、走って、ボールを操り、戦い、人が人の目で試合を裁き、ジャッジしてきた。
それがテクノロジーの導入によって、微妙な判定の精度は格段に上がった。日本は前回大会で「三笘の1mm」という判定により歴史的勝利を収め、マラドーナがハンド(手)でゴールするような余地も生まれない時代になった。
今まではレフェリーの判定は絶対に変わらなかった。試合が終了して変わることは起きてはいけなかった。
それが試合中のリプレー検証で判定が覆るようになった。それがVAR導入だ。
これで今までの幾多の歴史的な試合の判定が変わる訳ではない。しかし導入によって、救われる選手もたくさん出ている。この先も救われる選手はたくさん出てくるであろう。
そして近い将来にはテクノロジー、VARを活用してもミスは起こり得るだろう。であれば、最後はFIFA(国際サッカー連盟)が決める。そんなサッカーの姿を生み出すきっかけになってしまったのかもしれない。
もし、そうなったとしても、あくまでミスをなくし、公平な判定のもとで勝負を決める――サッカーに対して、そこまで純粋な人たちであれば、それで良い。
それは政治ではなく、大統領や王様が言ったからではなく、サッカーファミリーの元で決められていくのであれば、我々はその中で勝利をただ目指すだけなのだ。
たくさんの顔が見られた北中米W杯。残り1試合、「サッカーって最高~」と、そこまでサッカーを深く考えない人と同じテンションで楽しめたら「最高」だ!
2026年7月19日
三浦泰年
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