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「1000枚集めても終わらない」野球音源収集家・FPM中嶋が語る“終わりなき探求”【死ぬ前にやっておくべきこと】

「1000枚集めても終わらない」野球音源収集家・FPM中嶋が語る“終わりなき探求”【死ぬ前にやっておくべきこと】

野球音源収集家・FPM中嶋(C)週刊実話Web

村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前にやっておくべきこと」。野球音源収集家のFPM中嶋をインタビュー(前編)。野球音源に対する熱い思いをたっぷり語っていただいた。

伝説の野球音源イベントがついに復活

「プロ野球音の球宴」をご存じだろうか。1997年に始まった、野球ファンの野球ファンによる、野球音源のみをひたすら流し続けるDJイベントである。

ファンタスティック・ピッチング・マシーン中嶋(FPM中嶋)と野球忍者ヨシノビズムの2人で行われていたこのイベントは、濃厚で情報精度の高い野球愛好者の間で評判となり、いつしか『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)やNHK-FMで特集が組まれるなど“知る人ぞ知る”カルト的な注目を集めていた。

しかし、’20年頃のイベントを最後に活動を休止。その後、長きにわたる開店休業状態が続いていたが、去る6月13日、還暦を超えたFPM中嶋が、ジョーブ博士的パートナーにプロ空頭氏を迎え「音球」を村田兆治ばりに復活させた。

「6年、いや8年……いつ以来になるのでしょうか……というぐらい久々の復活でした。野球音源のDJ自体は別のイベントでやってはいたのですが今回、会場にもなった神保町RRRの中村社長から『そろそろ音の球宴の看板を復活させてもいいのではないですか?』とオファーをいただきまして、新たなスタートを切らせていただくことになりました。とはいえ、内容のほうは相変わらずの川崎球場、ロッテ×南海戦のような感じでして、ブランクも感じずいつもの音球を満喫することができました」

このイベントが復活を遂げたのも、2年前に東京キララ社から出版された野球音源の広辞苑こと『プロ野球音の球宴 ディスクガイド』の初版を売り切るという崇高な使命があったおかげでもある。同イベントでは、書籍に所蔵された756曲の野球音源を紹介するポッドキャスト番組『「プロ野球音の球宴」ディスクガイドポッドキャスト』の第1回も公開収録されたほか、プロ空頭氏による新機軸“配信系野球音源”のコーナーが加わった。

「今回はこれまでの音球に来てくれていた方だけでなく、この本を読んで初めて来てくれた新規のお客さんもいらっしゃいました。野球音源自体は選手自身によるレコードや公式の球団歌、自主制作による球団や選手の応援歌に野球関連の映画・ドラマ・アニメの主題歌。ついには家族や親戚にまで領域を伸ばして探してきました。最近、私が手に入れたレコードは家族モノで白川奈美の『離婚』ぐらい。これは法政三羽ガラスの富田勝と結婚する前年に出した予告ホームランのような縁起の悪いタイトルの通り離婚となったいわく付きの作品ですね。それ以外だと、もはや時代は配信がメインになっていまして、元阪神・横浜の大和が『YAMATY』として本格的歌手デビューをしたり、乃木坂46が『パシフィックリーグに連れて行って』というどこかで聞いたことがあるような中身スッカスカの曲だったりと、なかなかのラインナップが揃っておりましたので、それらをプロ空頭さんにまとめていただきました」

死ぬ前にやっておくべきこと】アーカイブ

白河奈美『離婚』(C)週刊実話Web

CD&レコード1000枚を超えても終わらない偏愛

最初のイベントから約30年。収集した野球レコード・CDは約1000枚を数え、日本ハムファンである中嶋が’80年に新人記録を総ナメした木田勇がそのオフに出したレコード『青春・I TRY MY BEST』を背番号にちなんで16枚を集めようと誓いを立てたが、いつしか目標を超えて17枚になってしまった。

野球音源収集の世界では、大谷翔平クラスの怪物となってしまった中嶋は、もはやこの世界でやれることはやり尽くしたのではないか。

「いやいや。まだまだ盤の存在は知ってはいても未入手の作品もあります。ただ、収集の初期において発掘の中心だった中古レコード店で手に入れられるものはもう手に入れ尽くしてしまったので、最近はネットオークションを徘徊しています。これはもうレコード店巡りに比べて遥かに難易度の高い作業になっていると実感します。家族モノで『あの選手の親戚らしい』とか、白川奈美のように『元奥さんだ』などの人間関係の情報を入手するとか、曲のタイトルに野球と分かるようなタイトルをつけてなくても、実は歌詞を見ると、野球モノだったという曲もあったりするので、その捜索は非常にテクニカルなものになってきてはいます」

中嶋はいまだにヒマさえあれば野球音源を探してネットの深海を潜り続けている。コレクターに「これを集めてどうするのか?」と聞くのは、「ホームランバッターにそんなに飛ばしてどうするの?」と聞くに似た愚問である。大量の野球レコードの山を前に「突然死したら妻に迷惑を掛けるのでは」と心配をするようになった中嶋がこの先「死ぬ前にやっておくべきこと」として見据えているものは何なのであろうか。

「2年前に書籍という形で野球音源をまとめることはできましたが、これから私が死ぬ前にやらなければならないことは、日本における野球音源の成り立ちからの歴史をアーカイブに残すことだと思っています。そもそもの野球と音楽の馴れ初めは、1931年早慶戦で早稲田の応援団が古関裕而に依頼した『紺碧の空』からはじまり、慶応の『我ぞ覇者』『大阪タイガースの歌』『闘魂込めて』などへと続いていきます。全部古関裕而なんですが、まぁ、こういったことを後世に残す作業をしていけたらなと思っています」

中嶋が「残すべき最後の仕事」だという野球音源の歴史。次回からは、その知らなければ一生知らない、知れば必ず虜になる深淵なる世界に触れてみたい。
 (中編に続く)

「週刊実話」7月23日号より

配信元: 週刊実話WEB

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