デスマッチは不思議な試合形式だ。ネーミングに“死”がついているのに、実際に“死闘”といっていいファイトなのに、見ていて感じるのはレスラーたちの生命力なのだ。
蛍光灯、有刺鉄線、カミソリなど物騒にもほどがある凶器で攻撃し、それを受けまくり、血だるまになる姿は残酷というだけではないのだ。むしろ清々しさを感じることさえある。「いい血を流す」という表現をよく使うのは、デスマッチのトップ選手の1人である竹田誠志。“デスマッチのカリスマ”葛西純には「生きて帰るまでがデスマッチ」という名言がある。
7月9日、FREEDOMS後楽園ホール大会のメインイベントは「KING of FREEDOM WORLD王座戦」。チャンピオンのビオレント・ジャックに葛西が挑戦した。
メキシコ出身、現在は日本に住んで家族を持ち、デスマッチのトップに君臨するジャック。対する葛西は51歳、昨年は息子の葛西陽向がDDTからデビューしたベテランだが、老け込むようなところがまったくない。
それどころか今年は新日本プロレス恒例のリーグ戦「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」にエントリー、大きなインパクトを残している。
「キャリア28年でいろんな経験を積んできたけど、メジャーの空間に入って、葛西純もまだまだヒヨッコ、伸びしろがあるなといい意味で思えたんで。今まで経験したことのない雰囲気の中で闘えた」
スーパージュニア参戦を経て、自分が「100倍強くなった」と語る葛西。それがあってこそ、所属するFREEDOMSのベルト奪還にも強気になった。
葛西のスーパージュニアでの試合、“デスマッチ戦法”は波紋、議論を呼び起こすことにもなった。得意技パールハーバースプラッシュをラダーから放った際、ラダーを若手が支えていたことを問題視するファンがいたのだ。確かにこれだと厳密な“1対1”ではなくなっている。しかしその曖昧さを許容するのがプロレスの魅力でもある。
この状況を踏まえて、タイトルマッチの会見で葛西は言った。
「スーパージュニアではいろいろやりすぎて波紋を呼んだけど、ウチのデスマッチだったらワーワー言われることもないんで。ジャック、お互いにやりすぎましょう」
「FREEDOMSの、葛西純のデスマッチを見に来い。あんなもんじゃねえぞ」 実力を認め合うジャックと葛西のデスマッチは、まさに“あんなもん”ではなかった。試合形式は蛍光灯300本+αデスマッチ。ロープ4面どころかマットにも蛍光灯が敷き詰められ、それをバスバスと音を立てて踏み抜くところから闘いは始まった。
蛍光灯で殴る。額に突き刺す、破片だらけのマットに投げつける。もちろんラダーを使った攻撃も。葛西は注射器を並べたボードも持ち出した。何十本という針の上へのパワーボム。デスマッチを見慣れているFREEDOMSの観客ですら悲鳴をあげる“名場面”だった。
それでも最後はジャックが王座防衛。「100倍強くなった」葛西を上回るほど、今のジャックはタフで容赦がない。穴が見当たらないと言ってもいいだろう。
ジャックをそこまでの選手にしたのも、FREEDOMSのデスマッチという環境だ。葛西や竹田と鎬を削り合うことで、ジャックは世界最高峰のデスマッチファイターに成長していった。今回の防衛ロード、ジャックはその軌跡を確認するように佐々木貴、マンモス佐々木と古参メンバーと対戦している。
「オレが選手じゃなかったら、葛西純の試合のレフェリーやりたい。レフェリーじゃなかったら葛西純のファンになっている。でも本当は、葛西純のライバルになりたい」
試合後のリング上、流暢な日本語でそう語ったジャック。葛西は言った。
「ライバルどころじゃねえよ。オレがお前の背中、追いかけさせてもらう」
試合前、クレイジーなだけではないデスマッチを見せるとジャックはコメントしていた。しかし試合後には「やっぱり葛西純に勝つにはクレイジーにならないと」。それが“新日本帰り”の葛西に勝つ意味だったのかもしれない。
デスマッチファイターは体を張る。しかし、ファンはそこだけを見ているのではない。どんな凶器を使うか、どこまでやり、何をやらないか。相手に対して、観客に対してどんな気持ちを伝えるのか。さらに大きく言うなら、全人格が透けて見えるからプロレスは面白い。そしてそれは、デスマッチも同じなのだ。
取材・文●橋本宗洋
【スターダムPHOTO】強くて可愛いギャップに胸キュン!破壊力抜群な“美しき戦士”たちを一挙にチェック!
【記事】「安納サオリだから安心して飛べた」フワちゃんの大技を受け切った姿にファン涙…敗戦後の本音に反響「やっばい泣いちゃう」【スターダム】

