
ガソリン代を少しでも抑えるため、安いスタンドを探したり、燃費の良い車を選んだりしている人は多いでしょう。
しかし実は、普段の運転で速度を出しすぎないことも、無視できない節約につながるかもしれません。
米国の小型エンジン車全体に当てはめた試算では、制限速度を守ると1日約2500万Lの燃料と約2200万ドル、日本円で約35億円の燃料代を節約できる一方、平均的な1日の走行時間は約54秒しか増えませんでした。
この研究は、米国ミネソタ大学ツインシティー校(UMTC)によって行われ、2026年7月16日付で『Communications Sustainability』に掲載されました。
目次
- 制限速度に従うことで、ガソリン代を節約できる可能性
- 全米で速度超過をやめると1日35~44億円の節約になる
制限速度に従うことで、ガソリン代を節約できる可能性
車は速度を上げるほど早く目的地へ近づきますが、高速になるほど空気を押しのけるために多くのエネルギーを使います。
車にかかる空気抵抗は速度に応じて増えるため、特に高速域では、少し速度を上げただけでも燃費が悪化しやすくなります。
しかし、実際の速度超過が米国全体でどれほどの燃料や費用の無駄、そして二酸化炭素排出量の増加につながっているのかは、十分に調べられていませんでした。
そこで研究チームは、2021年の冬、春、夏、秋を代表する水曜日4日間に記録された、1億2000万件以上の実走行データを分析しました。
対象は、制限速度が時速45マイル(約72km/h)以上の高速道路と幹線道路です。
ガソリン車などの小型エンジン車については米国本土とハワイ、電気自動車についてはデータが十分に得られたカリフォルニア州を調べました。
研究チームは、道路の制限速度や標高、車種、年式などを走行データと組み合わせ、車両シミュレーションソフト「FASTSim」で各走行のエネルギー消費を推定しました。
そのうえで、速度超過した区間を制限速度以下に抑える「シナリオ1」と、早めにアクセルを戻して滑らかに減速する「シナリオ2」を作成。
どちらも元の経路と走行距離を保ったシミュレーションであり、実際の道路で全車両を減速させた実験ではありません。
分析の結果、小型エンジン車の走行の43.2%で少なくとも1回の速度超過が確認されました。
速度超過があった走行では、最大超過速度は平均で時速11.2マイル(約18km/h)でした。
さらにシナリオ1を全米に当てはめて推計すると、1日平均で約670万ガロン、約2500万Lの燃料、約2200万ドル(約35億円)の燃料代、約5万7000トンの二酸化炭素を削減できると推定されました。
より詳細な結果を次項で見ていきます。
全米で速度超過をやめると1日35~44億円の節約になる
シナリオ1による燃料削減率は、全米の小型エンジン車全体で平均約2.4%でした。
割合だけを見ると小さく感じますが、年間では約24億ガロンに達し、一般的な乗用車約550万台分の年間燃料消費と二酸化炭素排出量に相当します。
さらに、早めの惰性走行を取り入れたシナリオ2では、1日平均約820万ガロンの燃料、2700万ドル(約44億円)の費用、約6万9000トンの二酸化炭素を削減できると推定されました。
ただし、節約効果が大きくなる代わりに、走行時間の増加も100マイル当たり約190秒から約260秒へ延びています。
燃料を節約できた主な理由の1つは、高速走行を抑えることで空気抵抗が小さくなったことです。
加えてシナリオ2では、早めにアクセルを戻して滑らかに減速したため、無駄なエネルギー消費も抑えられました。
一方、シナリオ1の時間増加を米国の平均的な1日の走行距離に換算すると約54秒です。
つまり、速度超過をしないことで失うと推定された時間は、全走行の平均では1日1分にも満たなかったのです。
電気自動車でも速度を抑えると同様の効果が見られ、カリフォルニア州全体への推計では、電力消費をシナリオ1で約7~8.5%、シナリオ2で約8~9.5%削減できると推定されました。
ただし、この研究にも限界があります。
2021年の水曜日4日間だけを扱い、対象も比較的速度の高い道路に限られています。
すべての車が同時に速度を落とした場合の渋滞や交通流の変化はモデル化されておらず、電気自動車の分析も2種類の車両系列だけです。
そのため、結果を日本の道路環境やすべての車種へそのまま当てはめることはできません。
それでも、速度超過を控えるだけで社会全体の燃料代と排出量を減らせる可能性があります。
アクセルを踏み込んで得られる数十秒が、余分なガソリン代に本当に見合うのか、考え直す価値はありそうです。
参考文献
Driving the speed limit cuts millions in fuel costs, study finds
https://techxplore.com/news/2026-07-limit-millions-fuel.html
元論文
Speeding incurs substantial environmental and economic costs nationwide for negligible travel time savings
https://doi.org/10.1038/s44458-026-00100-3
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

