「大阪の台所」として知られる黒門市場。コロナ禍前のインバウンド需要拡大期にはホタテやカニ、和牛串などの食べ歩きグルメを高額販売。その価格設定がSNSやテレビ番組で取り上げられたことで、「ぼったくり市場」のイメージが定着した。
事実、大阪の住民からは「観光客向けの場所になった」「昔の黒門市場ではなくなった」といった嘆きが聞かれ、近隣住民が買い物の場として利用する機会は減少していった。
その黒門市場は今、どうなっているのか。実は店舗ごとの価格差が生じているというのだ。
2026年夏の黒門市場を歩くと、少し前とは異なる光景が広がっていた。市場内にはウニやイクラ、カニを豪快に盛り付けた5000円近い海鮮丼を販売する店舗や、和牛串が2000円近い価格で並ぶ店があり、その場で飲食できるスペースは外国人観光客で賑わっている。
市場内スーパーでは周辺の海鮮店の3分の1の価格で販売
その一方で、700円前後で食べられるうどん店や、昔ながらの価格帯を維持する総菜店、青果店も軒を連ねており、同じアーケード内とは思えないほど、商品の値段や客層には大きな違いが見られる。
鮮魚店では地元客が夕食用の魚を選び、総菜店には近隣住民の姿が。市場内のスーパーでは寿司や刺身の盛り合わせが、周辺の海鮮店の3分の1程度の価格で販売されており、日常の買い物の場としての機能は健在だ。
かつては「インバウンド化によって地元客が追い出された」と言われ、悪評にまみれた黒門市場。しかし現在は、訪日外国人観光客が求める「日本ならではの食体験」と、地域住民の日常的な買い物需要が、同じアーケードの中でそれぞれの居場所を見つけているようだ。
現在の黒門市場は観光客だけの市場でも、地元客だけのものでもない。「二つの市場」が同居する場所へと姿を変えているのだった。

